ハーネット争奪戦、序章
"幻想王国"マーティ・クロヴェル。
そこに住んでいた学者のような奴がいた。兵士のような奴等がいた。チンピラのような奴がいた。魔物との抗争を繰り広げる王国の世界があった。
『雨が最近降る…………』
王国は管理人達が勤めており、兵士はほどよく命を散らすために存在していた。訓練という労働、戦うという役目、散らすという最後。
『なんで軍を率いなきゃいけねぇーんだ!!』
『知るか。また王様がそう命令している』
『俺達は従うしかねぇ。そーゆう兵だからな』
『俺とザラマ、梁河で十分だっつーの!!』
まだその時は沈黙や無知。愚痴を零す程度でしかなかった。
『にぃに、また行っちゃうの?』
『心配する必要はない。ちょっと行って壊滅してくる』
『にぃに。…………無事に帰ってきてよ』
『最近はそれ以外滅多にねぇーよ』
魔物の討伐軍として兵隊を引き入って奥深くある森へと向かっていく。いずれ王国の脅威になる魔物達だ。パイスー達はその巣までやってきたわけだが………。
『ん?どーゆうことだ?』
巣の中は無残に魔物大軍の死体がいくつも転がっており、丸太の上に座っていて文献を書いている奴と出会った。
『おや…………王国軍の方々ですか』
『……何者だテメェ』
『!待て、パイスー。俺はあの男を知っている。確か学者をしている、ハーネットという奴だ。変わり者と呼ばれているな』
『王国の嫌われ者か』
これがハーネットとパイスー達の出会い。
『…………面白そうだな、テメェ。只者じゃねぇのは分かる』
『?』
『一回…………死んでみろ!!』
『おっと、危ない方だな』
即座に2人は戦った。晴れていた天気が雨に変わったり、また晴れになったり、月や星が見えたり、とても長い時間2人は戦っていた。戦っている間、山が3つか4つ崩れ去った。それは魔物達が暴れるよりも酷いものだった。
戦いながら両者は言葉も交えた。同じ世界にいながら今まで出会わなかった分まで、言葉を出しながら戦っていた。
戦いが決着になった時、倒れていたのはパイスーであり、雨が戦場を襲っていた。
『世界最強になるということはとても難しい事だよ』
ハーネットはパイスー達と出会い、後に自分の研究を彼等に伝えた。それが遠因となって未来に被害をもたらした。そして、影響も作った。
最後の生き残り。ハーネット。彼がようやく、この時代に辿り着く。
「ホントにもうすぐなんだな」
「デュフフフフ。そう言われている」
「そいつとそいつの資料の入手だよね」
ブライアント・ワークスは彼が残した資料を狙っている…………
「…………嫌な予感がする」
「桂さん?」
「あの戦争を思い出すような……近々、そんなことが起きそうだ」
管理人側も、黒リリスの一団の残党であるハーネットの存在を忘れていない。ポセイドン、桂、龍、蒲生、朴。それぞれ、主力の管理人達はそれぞれの意志を剥き出しにする。
「そろそろ、俺の出番が来たのか……」
「長く待たせてしまったが、貴殿にしかできぬ任務だ。貴殿の命はどうあるのか、分かっておるだろう?」
「ああ、分かっている。聞かれる必要はない」
黒い龍の仮面を被った博士のような大男も現れ、ハーネットを狙う。
「……ここにあの方がやってくるのですね」
黒い三日月の仮面を被った魔術師と思わせる女性も、マーティ・クロヴェルに降り立った。
知る者、知らぬ者。様々であったが…………。
世界が揺れた震源地はマーティ・クロヴェルから始まるのであった。