魔物掃討戦
ドガジャアアァァンッ
「はっはっはっは!テメェ等、数しか取り得がないのかぁ!?どこぞの偉そうな連中に似ているもんだな!」
街は今、とんでもない強さを持っている三人が死守している。アレク、ザラマ、梁河の力は魔物達を次々に倒していき、ドンドン街から魔物を遠ざけている。
城壁よりも大きくなる梁河を筆頭に、業火を撒き散らすアレクとザラマ。
黒い煙と焼かれる森は狩人達だけでなく、住民達を最初は希望と信じていたが
「す、凄い」
「異世界の人はこんなにも強いのか………」
もはや、攻撃に参加せずに眺めるようになっていた狩人達。
そんな時。梁河の持ち場の方からやってくる、謎の魔物の群れと思われるのが来た。
巨大になった梁河にとってはとても小さい生物。しかし、こいつは認めたくねぇ仲間の能力。手は出さない。
「!パイスー」
34頭の獅子の群れを作り出したパイスーの"キング"。
彼等からしたら見上げてしまう城壁を、群れで越えようとしていた。パイスー、春藍とライラ、若の獅子はやや速度を落とし、他の獅子は全力で配置につき、身体を張って階段を作り出す。
「跳ぶからしっかり掴まれよ」
「は、はい!パイスーさん」
階段を駆け上り、高く跳ぶ獅子。その獅子の身体能力は動物のレベルではなかった。軽々と城壁を飛び越えてしまう高すぎるジャンプ。
「うああぁぁぁ」
「!!」
乗っている春藍もライラもビックリするほどの飛び越え方。
ズダアァンッ
街の中に着地した瞬間。魔物が侵入したと住民達には思った。恐怖がやってきた。だが、
「着いたな。ここで良いんだろう」
「あ、ありがとうございます!パイスーさん!」
「なんてやばい生き物よ」
「ってゆーか、パイスー。住民の皆様がビビッているよ?」
ポンッッ
「獅子を消せば大丈夫だろ?」
獅子が消えて、春藍とライラ、パイスー、若の四人だけになっても。住民達はかなり驚いたまま。
凄く動揺しているのが顔から分かった。春藍はそれにちょっとショックを受けていた。
「見事に驚かされている」
「そんな事よりネセリアとアレクがどーなっているかよ」
「なんだ、お前等にはまだ仲間がいんのか?」
「それは僕達も同じだろ。さっき通り過ぎたけどさ」
ライラは未だに春藍の肩が必要だったが、ここまで来れれば十分だった。
魔物や炎以外に見える、巨大な姿の梁河。それにまったく驚いていないパイスーと若の反応からして、それは彼等の仲間だと分かった。
「春藍。あんたの足でネセリア達を探すのよ」
「わ、分かったよ。それにしても、あの大きな魔物はなんだろう?」
「あれは魔物じゃねぇよ、梁河っつー俺の仲間だ」
春藍の酷い天然にちゃんとフォローするパイスー。お互いのしたい事は同じようだが、対象者が違う。
「それじゃ、ありがとね。あんた達!」
「おう。まー、同じ事ができるならまた会う事もあるかもしれねぇな」
「その時は宜しくね」
三人は分かっていたが、取り残された顔を出す春藍。
「え?」
「何よ、春藍!あんたの好きなアレクを探しに行くのよ」
「俺達も似たよーなもんだ。ここでお別れだ春藍、今度会ったらまた音楽も聴きたいし、テメェの話も聞いてみてぇな」
春藍はパイスーにお別れと言われて、かなり驚いてしまった。
「ええぇ!?……行くのか!?パイスー!!」
「!…………また会うかもしんねぇさ。とりあえず、今はただの別れだ。俺は最強になるまで死にやしねぇーからよ」
「パイスーさんには、危ないところを助けられたし、好きな音楽も同じだったし」
「あー、分かった。別れじゃねぇのにしてやるよ」
春藍の必死そうな、悲しんでいる顔にパイスーは頭を掻きながら、根負けしたかのように春藍にいった。
「次、友としてまた会おうな」
パイスーは春藍達に背を向け、獅子を作り出して乗り込んでザラマの匂いがする方角に飛ばした。
「あいつがあんな事を言うなんて、気に入られているね春藍くん」
「え」
「僕も君達とまた会いたいな。もしかすると、誘に行くかもしれないから!」
「?誘う……って何によ」
「はははは、それはその時話すからよ。じゃあね!」
若も梁河がいる方へ向かうが
「パイスー!俺の分の獅子も作ってくれよ!徒歩で梁河のところに行くのは、巻き込まれそうで怖いんだからさ!」
愚痴を言いながらも、梁河の方へ向かった若。
「変わった連中ね」
「また、パイスーさんとは会いたいな。会えるかな」
「できれば私は会いたくはないわ。自分の目的が第一だから。だけど、してればまたあーゆうのには嫌でも出会いそうだわ」
ちょっと立ち尽して、春藍もライラも。自分の事だけを考えていた時間だった。不思議な2人組。今別れたけど、すぐまた出会いそうな予感がする。
「ネセリア達を探しましょ。パイスーの仲間がいるなら、殺されている事は低そうね」
「う、うん」
そこから10分後、
「パイスーか。今終わったよ」
「見りゃ分かるぜ、ザラマ。久々に大量の魔物相手に暴れたらスッキリすんだろ?」
「ほどほどに楽しいが。それよりも、良い相手に巡り合えた事の方が収穫があるよ」
「それよりザラマ。熱を止めてやれよ。森が燃え広がるだろ?」
「おっと、いけねぇな」
「残り火は俺の"キング"と梁河が踏み潰して消してやる」
パイスーとザラマ、梁河と若の合流。周囲にはもう万以上の数がいた魔物の群れが全滅していた。
街は守られ、魔物達は一頭残らず全て駆逐されたのであった。
街はこの瞬間。一時の歓声を挙げたのだった。