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RELIS  作者: 孤独
伊達・ネセリア・ヒルマン編
189/634

~息抜き~⑥

あの日から向き合ってみた。


「……………………」

「…………ほ、本を借りていいかな?」

「い、良いわよ。大切にしてよね」


春藍とライラは向き合いながら、音楽もスピーカーで小さく流して読書をするようになった。歴史物を初めて読んでみた春藍。というか、……教科書などの参考文献ばかりした読んだ事はない。漫画や小説よりも先にこっちを読むのはどうなのかとも思えるが……


「……………………」


声は出さないが、とても真剣に読んでいた。書物を通して多くの異世界に触れている気分で春藍の性格にはとても合っていたようだ。

時折、どちらかが向こう側を見ている。目はあまり合わないけど、少しだけページを捲る速度が落ちるときはそうしている。


「……………………」

「……………………」


多少は気にかけるようになっていた。読書をしていなかったら、何をしていたのか想像もできない2人。でも、ちょっとだけこんな時間が続いて欲しいと願っているようだ。



「…………あ、あら。時間ね。ご飯用意するからね」

「!あ、あ、あの!ライラ」

「な、なに?」



春藍の緊張した声が移ったようにライラも声が緊張していた。


「きょ、今日は僕が作るよ」

「え。ええっ?……その、あたしのご飯……美味しくなかったとか?」

「ち、違うよ。い、い、今まで作ってもらっていたから……たまには……僕が作るよ」


春藍は立ち上がってライラを止めるように腕を握った。だが、それ以降の言葉は出ないでライラの反応を待っているようだった。


「!……………」

「!……わ、分かったわよ」


ライラは春藍に譲ってあげる。と同時にちょっとお願いもする。


「だ、だったらその……まだあたしのお願いをちょっと聞いてくれない……。読書だけであんたと過ごすの嫌だから……」

「うん。なんでもするつもりだよ」



ライラは春藍に調理を譲るが、心配ではない意味でずーっと春藍の調理姿を見ていた。本を握っていてもまったく読めない。



「な、何を作るの?」

「うーん……ライラはパスタを食べたことある?」

「?食べたことないわよ」

「じゃあ、パスタにするよ。以前食べていたスパゲティの別バージョンだよ」

「わ、分かったわ。まぁ、美味しければなんでもいいし…………」



春藍はロイがいつも持ってきてくれる食材で調理を始める。

自分がこうして料理しながら気づく事であるが、乗り越えられた気がしている。最近は魘されていることにも慣れてしまった。久々に包丁を握った。体は動きを憶えていた。それだけこの長い引き篭もりで、ライラと一緒にいた生活で失った物はないって思えた。逆に心は強くなれたという心がもてる。


「できたよ」

「あ、ありがと…………美味しそう」


フォークとスプーンを手にとってライラは慣れない手付きでパスタを試食する。


「……うん…………美味しい」

「ありがと」


自分が作る食事より全然美味しい。


「か、片付けはさすがにあたしがやるからね」

「え、いいの?わ、悪いよ」

「あたしの気持ちも考えて!あ、あとでお願いもあるから!」


2人でパスタを食べた後、ライラはそそくさと片付けに入る。今度は春藍が片付けをしているライラをじーっと見ていた。ライラはそれがとてもやりにくかった。

なんとか片付けが終わってから春藍にお願いをさっそくする。


「春藍さ…………できなくてもいいんだけど」

「うん」

「あたしの髪……整えてくれない?もう髪が伸びすぎちゃってて…………」

「ヘアカットでいいの?……僕で上手くできるかな」

「や、やったことある?」

「ネセリアにやったことがあるから、……できると思うよ」

「じゃ、じゃあ……お願い……します」



鋏や櫛、ドライヤーなんてこの部屋になかったが、春藍が"創意工夫"で道具を製造する。ライラは椅子に座って、大きな鏡で自分と後ろに立って髪を綺麗にカットしてくれる春藍を見ていた。


「た、多少変でもいいから」

「大丈夫。似合う髪型にするから」


ホントに器用な春藍はちゃんとライラの髪を切って上げる。


「いつもの髪型でいい?」

「そ、それでいいわよ」

「分かったよ」


慣れていないと言っていたが、ライラがどんな髪型をしていたかはかなりイメージできていた春藍。スピードこそ遅いが、とにかく正確にカットしていく。

春藍はチョクチョク鏡でライラの顔を確認していて……もうすぐ終わりそうな時、



「ら、ライラ」

「な、何?」

「今度、僕がお願いしていい?」

「!……べ、別になんでも良いわよ」


ライラは春藍のお願いに結構緊張していて、春藍も同じで緊張と不安が混じっていて


「ライラの新しい服、作っても良いかな?」

「……え。え?あたしの服……」

「モームストじゃ嫌って言ってたけど……僕が作っちゃ嫌かな?」

「…………春藍しかあたしの服を作れる人はいないでしょ……良いわよ」


ライラは顔を赤くしてOKを出した。その言葉を聞いて


「やった」


春藍は喜びの声を出したわけだが、ライラの言葉はまだ続いていた。


「ちょっと待ってよ」

「え?」

「その…………あの……。テキトーに作られると……嫌だから……………」

「?」

「ちゃんとあたしのサイズを測った方が良いでしょ?口外禁止だけどね」

「い、良いの?嫌って言ってなかった?」

「か、確認なんかさせないでよ……………」


ライラの髪が綺麗になった後。春藍がライラの身体のサイズを測って本格的な洋服作りが始まった。


「と、と、ところで……ど、どーゆう心境?」

「つ、次聞いたら殴るわよ……」

「ご、ごめん」


サイズを測っている間。ライラは春藍の言うとおりに動いてちゃんとした体型を教えた。数値のメモを記しながら、春藍が少し楽しそうな顔をしていたので


「春藍、……2着作ってよ」

「え?良いの?」

「あたしのじゃないわよ!……あんたの!自分で自分の服を作るのよ!」

「か、構わないけど……」

「じゃあ、あたしがあんたのサイズを測ってあげる。やったらやり返す」

「ええぇっ?別に僕は…………」

「いいから!ちょっと、バストを計っている間良い顔をしやがって……」

「それは気のせいだよ!」

「気のせいでもあたしは嫌よ!!」



2人の洋服作り。作るのは春藍1人だが……それでも共同作業みたいなものだった。


「一緒にさ、あの部屋を出てフォーワールドに行くとき。……新しくて綺麗な恰好で出ましょう。あたしも、外がどうなっているか気になる」

「僕も気になるよ」

「その時、あたしの"ピサロ"で空から見ましょう。一番高いところで世界を一緒に見ましょ」



これを経て二人はこの生活から悲しいけど抜け出せそうだった。




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