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RELIS  作者: 孤独
伊達・ネセリア・ヒルマン編
188/634

~息抜き~⑤


復興は進みに進んだ。それは復興しなければ世界は作られないほど壊滅していたからという光明。



「うーむ…………」

「ふむ」


アレクとヒュールは復興対策本部で悩んでいた。無論、その中には管理人達や広東なども出席していた。



「アレクーー!早く、風○店を設立してくれよ。男は女に飢えてしょうがねぇ!!」

「1人で○○○ーしてろ、馬鹿が!」


なぜか参加(いや、タドマール代表だろ)していたロイをアレクはつまみ出す。それから悩みのタネについて話し合う。



「えー…………今。我々は多くの小さな会社を興しているわけだが……」


知らない間になんだか結構先に行ったなという感じがする。


「住民達がちゃんと家を持っても、職がまだ足りない者達もいる。いちお、復興の仕事はあるが……いつか終わりがくる」

「うん。復興は終わらないとね」

「本当の平穏を取り戻すために必要なのは復興の完了ではなく、あの平穏や平和を本当に実現した時だ。今、この復興という仕事がもし終わってしまったらな…………半分以上は無職になってしまう」


アレクの言葉。ちょっと、え?とも言えるかもしれない発言であるが、出席者達は全員それを理解できている。


「…………やばいですね」

「相当ヤバイぜ。無職を抱えられねぇ。未来無職世界"フォーワールド"になっちまう」

「技術開発局や学校、運送業をまた設立させないの?」


広東は以前にあった、生活を支えた企業の名を出してみる。しかし、アレクは頭を抱えながら伝えた。


「学校は再建中だ。……問題は技術開発局と……山佐がしていた会社だ。……とりあえず、一番重要なのは技術開発局だろう。なにせ、それがフォーワールドの一番の売りだったのだからな。俺が支えていたと言ってもいい」



アレクは自らを鼓舞したように言った。だが、それだからといって復活できない理由があった。それをみんなに説明する。



「およそ半年近く、フォーワールドの技術開発局は生産や新商品を開発していない。その影響でフォーワールドのブランド品は急落。また開発中止になるのではないかと、異世界で噂されている」

「うっ…………………」

「さらに商業市場街"月本"という異世界が潰れていることで、管理人達が多くの異世界に売り込みに行くことができない」

「げっ…………」

「技術開発局を再生させることはできるが、……その後、企業の維持ができるかどうかは開発者ではなく、売り込む者に掛かっているという状況なんだ」



どんなに良い商品を作ってもお客様が買ってくれなければ粗大ゴミになる。開発や創作に夢を見るのは勝手であるが、それで生きるというのは別の力も必要なのである。

"営業"という。あー、聞きたくない聞きたくない聞きたくない。両耳塞いで部長や社長の声をシャットアウトしても、しなきゃ死ぬぞ?お前じゃなくて、会社がな!!という、社内にいる正社員等の首を繋ぐギロチンがいつでも待っている。



「一体誰のせいだ!!」


アレク、珍しく怒った。


「……お主が長期的にフォーワールドから離れたからですぞ、アレク」


ヒュールは今までのアレクの働きを考慮して、怒らずに指摘した。だが、さらに論点をずらそうとするアレク。


「どうして月本がないんだ!!あそこが商業をしていた異世界だったのだろう!!?なぁ、ラッシ!!」

「お、お、俺のせいだけにすんなーーーー!!テ、テ、テ、テメェもぶっ飛ばすぞ!!」


表向きはガイゲルガー・フェルが潰した事になっているが、実行したのはライラとかラッシとか、梁河とか……アレクだったりもする。


「半分以上お前のせいだ!!アレク!!」

「俺のせいだと言うのか!!?ラッシ!!」

「冗談はそこまでにしなさい!!」


おそらく、冗談でやっているのだが……。状況がマズイのでクロネアが一喝してアレクとラッシの言い合いを止める。


「信頼を得るのは大変ですが、消すのは簡単」


この問題の責任者はアレクではなく、クロネアである。

仕事量ではアレクやヒュールの方が多いのであるが、重要性はもしかするとクロネアの方が上回るかもしれない。


「私の案ですが…………"リース"から営業を始めようと思います」

「リース?……人物名ですか?」

「"リース"というのは簡単に言うと、賃貸する取引。商品を貸す事による取引、商売と考えていただければ分かりやすいでしょう」



あまり関係のないことであるが、お金というのはそもそも物々交換から始まったそうだ。今、お金もまったくないフォーワールドにとって、物々交換のような制度が頼みの綱。ちなみに"リース"について作者はまったく詳しくないのでググッてください。(クロネアの発言は大雑把です)



「我々の科学力を実際に低価格で触れてもらい、安心を勝ち取ったところで若干高値で売り込みます。信頼さえ取り戻せばかつてのお客様や新たな異世界に売り込むことすら容易くなるでしょう」

「おおぉっ!さすが、クロネア!」

「説得力のある営業スタンス!!」



開発者ばかりが揃っているこの世界ではクロネアのようなタイプは非常に珍しく、こーゆうときは非常に頼りになる。


「とはいえ、私やゼブラ、今井、麒麟が営業を実際していますが…………正直、思いのほか信頼がなく、まだまだ長期的に目をみないといけません」

「…………かつてほどとは言わないが……。俺達がつく職が安定できるくらいにはいけるのか?約1年ほどで……」

「まず無理でしょう。信頼は1年ではとても作れません。増えてるのは確かですが……この人口を支えるほど発達するのはとても…………」

「くっ………………」



フォーワールドの住民達を救うには技術開発局があれば乗り切れるかもしれないが、タドマールの住民達もいるのだ。正直、生き延びても生かすだけの経済力が足りていない。


「一つ、ご提案をしてよろしいでしょうか?」

「なんだアルルエラ?」


職業難の議題にタドマールの者として参加していたアルルエラ。


「私達のタドマールでは人間売買を行っておりました」

「に、人間売買……?怖いですね」

「インビジブルのクソ野郎しか普通やらねぇーよ。(ガイゲルガー・フェルは仕事でしていたが)」


人間を商品として異世界に売りこむという案。タドマールの戦士達は傭兵やボディガードとして他の異世界で活躍し、お金や女性を貢物としていた。人間がどんな品物よりも至高であるのは当たり前なのだが、人間そのものが人間を売るという行為には同意できない者が多い。春藍もその1人だろう。


「我々、タドマールの戦士は傭兵として雇われることもありました。どうでしょう?フォーワールドも技術者として提供するというのは?これほどの科学力なら商品や営業より、利益を生み出せると思います」

「…………アルルエラ。悪くないアイデアだよ」


この手の話に詳しいクロネアはこの案に難しい顔をした。


「フォーワールドの技術者を異世界に送り、技術を伝えるという行為。一時的に莫大な資金を生み出せるし、職の問題も解決できるかもしれない。ただ、技術というのは君達が思っている以上に高値なんだ」

「そ、そうなのですか……」

「技術を伝えればその技術の価値は減ると同時に、我々の競争相手を増やす結果となる。我々の生命線はずば抜けている科学力のみ…………良い話だけど、それはダメだ。もっと未来を見なければいけない」


間違った事を言ってしまったアルルエラはシュンッと表情を落としたが、広東がさらにクロネアに話をしてみる。


「で、ですが。我々の科学力で救われる異世界もあると思いますよ?この広東、……こーゆう目にあって分かりますが、助けたい気持ちが出ています」

「…………良い人間ほど、災難なモノですよ広東」


クロネアも言葉選びが大変だ。

"無限牢"による異世界の隔離社会は人類の感情よりもしっかりと数値で動いている。資源を採掘する異世界、食料を生み出す異世界、芸術を生み出す世界など様々あり、それぞれに役割があるといっていい。

難儀なことであるが、無知の善意は自分の鼓動を縮めていることもある。世界を回すとはやはり得もあれば損も生まれる。



「そういえば、ラッシ。農地の開拓は進んでいるのでしょうか?しばらく、タドマールの者達は農業という形になっていますが……」


話を逸らすようにクロネアは尋ねてみた。


「ぼ、ぼちぼち……でもよー。焼け石に水程度でしかねぇーぞ」

「実際そうでしょうね」


経済的な復活に頭を回すが博打をすることが多すぎる。命は救った後、社会を救うのはこの世界では人間ではなく、管理人。


「営業を強化するといっても……管理人は5人しかいないし…………」

「内需だけではどうにもならんしな」


頭を捻ってもまともな代案はでない。とにかく営業をするしかない。だが、これだけの人口を支えるには力技や神頼みでは無理がある。


「………とかダメなのか?」

「?何か言ったか?山佐」


そんな中、山佐がテキトーにぼやいた。それを聞いたアレクはどんな考えなのか尋ねた。


「今、テキトーに言ったぞ」

「それでも良い。何でもいいから言うのが、成功の秘訣だ」

「いや……。観光業ってどうだ?どうせ、この世界って色んな人間達が入って来ているんだし、異文化の交流と称して異世界から人々を呼ぶってのは?」


…………………………。ホントに山佐はテキトーに言っていたが……



「それだーーーーーーーー!!!凄い良い案だーーー!!!」

「ク、クロネア!!?」

「観光業……工場見学のような…………。異文化交流!!おぉぉっ!!」

「い、い、いつになくテンション高くなってる!!」


クロネアは興奮しながら立ちながらガッツポーズをし始めた。意外過ぎる一面を見て、全員が驚いている。だが、そんな驚きに構わずにクロネアは頭の中にある営業プランや世界方針を決めていく。


「ゼブラ!!麒麟!!」

「は、はい!」

「すぐさま、当たれる管理人に手当たり次第声をかけるんだ!!どうせ、この世界以外の管理人は仕事が落ち着き始めているはずだ。この世界に呼ぶのだ!!」

「わ、分かりました!!」

「アレク、ヒュール、広東、山佐!!」

「な、なんだ」


人を使う事に関して言えば、クロネアは天才的なのかもしれない。


「お客様をもてなすため、徹底的な清掃と雰囲気を盛り上げるイベントを企画する!!そのための人員を集めろ!!かなり多く集めろ!!イベント内容は私があとで伝える!」

「い、いいのか?」

「今井!!これから私と一緒に多くの異世界の管理人達に融資を頼みに行くぞ!!」

「ええっ!!?た、タダでさえ復興でお金や人材を借りているのに……」

「良いんだ!!まずは金がなければ職も生まれない!!借金を返すのに借金をするんだ!」

「一歩間違えたら破綻する!!それ、破綻するクロネア!!」


ちょっと暴走が過ぎているクロネアであったが、彼には自信に満ちていた。



「馬鹿!!私達は何もしなかったら終わりなんだ!!大きく張るしか、助かる道はない!死ぬ時は一緒だ!!!」

「わ、我々も巻き込む気かーーーー!!?」

「心配するな!私が必ず、この世界の経済を救う。いや、救えなきゃおかしい!!時間はない!」


クロネアの考え。それが本当に成功するのか、全員が不安に思っているが、誰もそれに反対はできなかった。確かなビジョンを持っているのはクロネアだけであったからだ。




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