表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
伊達・ネセリア・ヒルマン編
185/634

~息抜き~②



「えーーん」



子供は泣いていた。その子は虐められっ子であった。


「泣かないの」


春藍謡歌はヨシヨシと頭を撫でて子供が泣き止ませる。


「コラ!ダメでしょ!!虐めはダメなんだから!!」

「えー、だってぇぇ~」

「あいつが遅いから負けたんだもん」



まだまだ異文化交流は上手くいかない。特に子供には手を妬いている。純粋な感情のままの彼等は、好き嫌いの感情によく突き動かされ、できるできないの感情も強く出してしまう。

フォーワールドの子供達とタドマールの子供達では能力がまるで真逆であるから、グループは簡単に作られたが、完全にフォーワールドとタドマールで別れることが多い。

頭が良くない子に勉強の楽しさを教えるのは難しく、運動ができない子に運動の楽しさを教えるのは難しい。



「う~~ん……………」



教育者として今の状況に頭を抱える。授業は止まりやすい。会話はしやすくなっているのだが、どうしてこんなことが頻繁に起こるのか?理由は分かるよ。けど、その理由を止める手段がまったくないのが問題となっている。



「ヒュール様、あたしの質問に答えてくれませんか?」

「うむ」


子供達の教育に疲れ、自信が無くなっている謡歌。彼女は悩んだ末、ヒュールに相談。


「子供達にはどんなことを教えれば良いのでしょうか?」


それがあんたの仕事だよ。ってツッコミが90%以上も正解を含めよう。

謡歌自身もそれを結構自覚しているとは思う。すぐに訂正した。


「いえ…………その。フォーワールドの子とタドマールの子がよく喧嘩していて、泣く子もいるのでちょっと…………どーしたらいいのか」

「争っちゃいかんですな」

「は、はい…………でも、教育には競争というお互いの能力を高め合うことがどうしても必要になります。その、……あたしの中で矛盾が起こっているみたいで」

「うむ、ですな…………」


部下の悩みにヒュールも少しだけ考える。そんな中で子供達はご自由に暴力と暴論を叫んでいる。相手は同じ子供だったり、謡歌みたいな教師、大人だったりする。



「殴った。今、殴ったよ」

「いけないんだーー!先生に言ってやるー!暴力反対ーー!」

「な、なんだと!?」

「馬鹿にした上に、俺の拳を避けなかったお前が悪いだろー!!力勝負なら戦士は負けないぞ!」



どっかのフォーワールドの子供グループとタドマールの子供グループは衝突する。



「先生、それは体罰です!」

「親に訴えるよー!」

「た、タドマールじゃこれが普通なんじゃ」



子供という分かりやすい弱者が大人という強者という看板をぶら下げている者に言葉を駆使する。弱者の気持ちは凡人以上には理解できない。フォーワールドとタドマールの大人達はタジタジであった。


「なら謡歌。このようにしてみるといいですぞ」

「な、なんでしょう」



ヒュールの工夫を聞き入れる謡歌。教育者は確かに大人であるが、生徒達から学ぶことができる人間である。こーゆう問題は確かに人間を成長させてくれる。後日、……生徒達を集めて謡歌が話をした。



「最近、あなた達の争いごとが目に余ります」

「だってあいつがー」

「むこうがー」


子供達は言い訳を言う。でも、大人達だって言い訳ばかりを吐く。だって人間だもの。それを掃うように謡歌は賢明に一喝した。


「いいですか!!くだらない事で言い合いや、殴り合いは許しません!!」

「えぇっ……」

「あなた達はまだ子供だから分からないと思います。でも、あたし達のように大人になります!これは死なない限りは大人になるしかないんです!!」


一喝&伝えている。机を叩いて恐怖感を煽っているが、顔が可愛いので仕草にしか思えない。


「自分がどんな大人になるか、自分しか分かりませんが。時同じの大人達がこうでは迷惑でしょう?少し先を見える人になって欲しいです。社会のタメになれる大人になるのは、仲間作りから始まります」

「……………むぅー」


子供達には未来を見る目は作れない。でも、後半の仲間作りに関して言えば首を縦に振る子もいてくれた。ただ…………


「謡歌先生」

「なんですか?」

「けど、……その、だってだけど。全員と友達になれません。僕が嫌い奴を好きな奴になれるわけない。僕はそう思ってます」


子供の下があるとしたら、赤ちゃんや幼児ちゃんだ。赤ちゃん世代はきっと友達100人できるかな?って謳うようなことを言われてきただろう。だが、少し知能が発達した子供は気付く。仲良くできるわけがない個性や性格、病気を持った人間が存在することに……。



「……………とても、残念な質問です」



謡歌は溜め息をもらす。そして、答えてあげる。


「別にあなたと友達にならなくても良いのです」



なんかひでぇ回答来たーーーーー。



「とても嫌な相手が心の中にいたら構わないでください。余計なちゃちを入れるから、喧嘩に発展するんです!こーなったら、両方を裁かなきゃいけません!」

「でも向こうから……」

「なら、スルースキルを身につけてください!!」


かなり強引に意見を通したと思える謡歌。怒って言うことで相手に言葉だけでも伝える手段であった。意見を言い終わった後で、シュンっと萎れる声で謡歌は言った。


「ヒュール様は言ってました。我々はきっと全てと繫がれる存在ではないって……誰とでも友達と思える関係になればきっと平和や幸せという……価値もあたしの勝手かもしれませんけど……。その…………」


謡歌は言っていることが恥ずかしくなっているのか、顔が赤くなっていく。


「と、友達くらいは作れる子になって欲しいです!そーゆう子達にあたしはしたいから、……できるだけ、知らない子とも接してあげてください」

「…………………さっき言っていることとちょっと違うような?」

「別に矛盾してません!さ、授業を始めますからね!!」



ヒュールの回答と、謡歌の願望はやっぱり違う。ヒュールもきっと謡歌のような希望しか満ちていないところに子供達が向かえば理想だと思っているだろうが……。理想を追求して叶わないことは無駄だと判断している。

けど、謡歌はそんな理想を精一杯叶えてあげたいと、言葉を使った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ