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RELIS  作者: 孤独
伊達・ネセリア・ヒルマン編
180/634

伊達・ネセリア・ヒルマンへの葛藤②


桂の案は特別なものではなかった。考えてみればそれしかない。当たり前の事。

けど、それを春藍の"死に掛けている心を取り戻す"までという条件の下、やるのは今からである。いろんな不安を感じていながらも、決意したこと。仲間だって言える奴を救うためにやってやる……。


「むっ……………」


ちょっと変な気分であるが、荷物を持って扉を開ける。



ガチャッ



「………………………」


相変わらず、ライラが入って来ても無言な春藍。そんな彼に沢山の荷物を抱えてやってきたライラは彼に言った


「あたしも、……ここにずっといるから」

「………………」

「春藍と一緒に、一緒にね。出るその時まであたしはここにいるから」


ドサドサと置かれるライラの荷物…………洋服や読みたかった本。調理器具やらタンスやらなんやらかんやら……。とにかく、ライラの私物が8割、春藍の私物が2割。それらがこの部屋に流れ込んだ。


「生活しよ」


並の男子なら、え?マジですか?って言ってしまう。ちょっと怖いが可愛い女性にそんなことを言われたらドッキリなのかと疑ってしまう。そして、よろしくお願いしますっと頼み込むだろう。だが、作者的には今は亡きネセリアの方が……。おっと、台詞が続くのか。



「あたしがここで料理も洗濯も、何でもするから。あとでアレク達がまた改装に来るからね」

「…………………」

「ちょっと狭い気がするけど、あたし達の家と思って。お互い立ち直るまで過ごしましょ」

「…………………」


別にライラの気持ちを代弁するわけではない(ライラにはそんな気はないだろう)が、言わせてくれ。私情たっぷり過ぎるかもしれない。

なんでテメェ無言なんだよ!!このクソガキ!!!お前、24の娘で、おっぱいそれなり、容姿も中の上、髪型は結構不思議だが顔でカバーしている子が同棲をOKするなんて普通ありえねぇだろ!!喜べよ!!僕の世話を全てお願いします!!って、料理から洗濯から○○まで幅広くオナシャス。しかも、ニートとか最高やんけぇ、畜生が。



「だ、黙ってないでよ」

「………………………」

「いるからね」

「……出てっていいよ。ライラ…………」

「いや。力ずくでやりなさい。あんたじゃ無理でしょうけど…………ただ、私はね。あんたを力で出さしたりしないから…………ね?」

「……………出てってよ…………」

「いーや」



それはとてもウザいと、思うし思われるだろうけど。ライラは春藍と一緒に過ごすことを決めた。

彼と一緒にいて、彼と一緒に困難に立ち向かう。

そーゆう決意。気持ち…………今の自分が選ぶべきことはこっちだって、ライラは決めた。やるべきことは多いけど、優先順位を作っている。ロイにはもうアレクのところでお手伝いするように伝えた。扉の後ろにはいないから、春藍が自殺しようとしたらライラが止める。


奇妙過ぎる生活だ。彼女が彼を守り、救うための同棲。新婚さんおめでとうなんて雰囲気なんてない。むしろ、ライラにとっては緊迫感がある生活だ。


「……………………」

「本を持ってきたの。読んでみる?」

「……………………」

「じゃあ、あたし。読んでいるからね。何かあったら、声を掛けて」



ライラの戦い。(春藍との生活がスタート)

初日。

春藍は相変わらず、無言のまま蹲っていた。視線を一切、ライラに向けていなかった。

ライラは春藍に眼を向けることを強要することなく、ただただ。春藍の背の方で本を読んでいた。たまーに春藍に視線をやって、…………変わりないことにちょっと残念がる。ライラはかなり本の方に視線を集中させた。桂が持ってきてくれた歴史書である。彼女にとっては娯楽本のように感じており、記されている記録は真実だと思うが、きな臭いところもあってちょっとした推理本としても扱える。

異世界ごとの歴史本であり、その数や歴史の深さは世界ごとに変わっている。

春藍にも少し読んでもらいたいジャンルである、が、中身がかなり難しいため、ライラ以外は楽しめないと思われる。

だいたい一冊に一日をかけて読むライラ。まぁ……ただ読書をする一日ではない。先ほども述べたが、ライラは春藍の生活を支える奥様的な存在。

料理や洗濯、掃除……もちろん、まだ設置が完了していないがお風呂も入りたい、……女性として、したいこともある。しなきゃマズイ。人間だもの…………。ちなみにこの部屋にはトイレがついているため、そーゆうのはちゃんと大丈夫である。春藍もそうである。

ただ、春藍がトイレに行っている時。ライラはかなり警戒してトイレの方を見ている。逆にライラが入っている時は春藍が暴走するかもしれないと、ハラハラしながらさっさとライラは済ませている……。しかし、春藍はいつも蹲っているだけである。

ライラが一緒にいる空間になったとはいえ、大人しくしていれば春藍にとっては空気のように思えただろう。彼は今、ライラのことなど頭になく、ネセリアとリアの死について賢明に、そして無駄過ぎる考えを凝らしていた。

とりあえず、初日は特別な日とも言えるのだが、特別な出来事は起こらずに。2人はいつの間にか眠っていた。



二日目。

ライラの方が早く目覚めた。べ、べ、別に春藍の妻じゃないんだからね(byライラ)。

昨日の反省を生かすことと、とにかく一日中見張っていて食事もとっていない。読書もしていればお腹も減る。

アレクから借りたコンロ。換気を良くするため、扉も開ける。冷蔵庫と呼ばれる食材の品質を保持する科学も借りており、そこからテキトーに食材を選んで調理を始める。

トントンと叩く包丁の音が春藍に届くだろうか……。コンロの火を感じることができるだろうか……。この部屋にこんな身近な物が増えたわけだが、これらを使えば自分の命を断つことなんて簡単だ。道具の管理は徹底しなければ危ないと理解しつつ、やはり生きるために必要だから使う。ちょっとした奇妙なことにライラは不思議な顔をした。

ライラが用意した朝食は量こそ少ないがご飯、お味噌汁、卵焼き、魚の切り身、オクラのサラダ。旅もしているため、一通りの家事はこなせている。だが、味は保障しない。

春藍はおそらく起きているが、こちらに向いてくれない。



「あなたの分もあるから。自分で箸使って食べなさい」

「…………………」

「冷えたら美味しくないわよ。うん、今日も美味しい……」



この生活を始める前の食事に関してだが……ライラかロイが無理矢理食べさせる形であった。

やせ細っている春藍には2人の力にいつも抗っても無理であり、心はどうでもいいと思っているのだが、春藍にある消化器官は強烈に欲しており、体は勝手に消化してくれた。



「…………………」

「…………………」



今日はそれをするつもりがないライラ。


「……ホントに冷めちゃうわよ、春藍」

「…………………」



今までちょっと優しすぎたのではないか?っと反省。と同時に、力を使って食わせているのは生きて欲しいからってことで。春藍の意志とは関係なく、ライラ側の意志を通した結果。


「………………………」



「………………………」

「………………………」

「………………………」



朝食を摂るか、摂らないかの我慢比べ。冷えていくご飯、お味噌汁。冷えてもいい卵焼きとか…………。復興が順調とはいえ、食べ物を粗末に扱うのは良くない。


「あなたの分。あたしが食べちゃうからね」


量も少なめであるため、春藍の分も頂くライラ。元々半人前程度の量なのだ。別に太る量は盛っていない。ライラは用意した春藍の分も口に運んだ。今日の朝食はこれで終わる。ライラはご馳走様をして、とっと皿を洗ってしまう。


「お昼も作るから食べてよね?」

「……………いらないよ」

「作るから」


片付けが終わればまた昨日と同じように春藍の後ろで本を読み始めるライラ。無言でただずんでいる春藍…………。

お昼ごろ、ライラと春藍は特別に気にしなかったが隣の部屋で1時間ほど工事音が響いていた。工事音が止んだ後、ライラはようやく春藍に話しかけた。


「…………春藍さ」

「…………………」

「音楽、かけないのね」

「…………………」

「さっきの工事音は迷惑だけど。自分の好きな曲を掛けていた方が落ち着かないかしら?リラックスできると思うわよ」

「!………………」



春藍は無言でいたが、表情がドキッと動いた…………。

それでも春藍は"Rio"をとりにいかない。なんていうか、



「1人で迷ってるなら、1人じゃない方が良いわよ」



結局、それをしたからなんというか…………。春藍は結局、答えが出ぬままに…………。



「………………………」

「………………………」


けど、まだそれでもいいとライラは考えている。読書に打ち込んでいる…………。どんなに……



きゅ~~~


「!………………」

「あ………お腹が減ったの?春藍」

「…………………」


黙っているだけの春藍であったが、ライラはその腹の音を聞いてすぐに昼食にとりかかった。自分の方に量は少なく作るオニギリを用意。梅干、こんぶ、さけの三種類のオニギリを春藍の横に置いて、彼を見ないようにライラは読書に励んだ。皿に手が掛かった音、口にオニギリを入れている音、春藍がとても小さな声で『美味しい』と……言ってくれた気がする。



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