グルメーダ・ロンツェ登場と住宅タワー
どっかの異世界で起こっている戦争があった。
その卓上には4人が座り、2人は離脱していた。4人の内、1人は子供の姿をしていながら、タバコを咥えている。
「ごほぉごほぉ」
いや、無理をしている。結構無理をしている。管理人の龍の姿がそこにあった。
「…………………」
大人ぶる彼にも大人らしい特技がある。それは麻雀。管理人随一の麻雀の使い手であり、派手な打ち回しでファンも結構いる(自称)。
「リーチ!」
オーラス、トップとの差は2000。三暗刻、ドラ3があるため、ぶっちゃけリーチはいらないだろう。リーチによって卓上の者達は現物で一巡を凌いだ。そして、龍のツモ。
「……くっ」
ツモることができず。ツモ切り。次の瞬間。
「ロン!!」
「ぐぉ!!?」
「ピンフ」
ダマテン。トップの地味目な学生服を纏った男が龍からロン。これによってこのゲームは終了した。
「クソーーー!!テメェ、さっきからダマテンで上りまくって!!俺は南一局で倍満だったんだぞ!!納得いかねぇー!地味な麻雀をしやがって!!」
「小さいことからコツコツと…………ですよ、龍管理人」
卓上にいる者達。1人は人間、3人は管理人という奇妙な構成であった。そして、龍を倒して一位になった学生服の男が人間。
「ま……遊びはここまでにするか。で?どーよ?俺が推薦しているんだけどよー(朴談、遊んでるんじゃないですよ、クソガキ)」
「…………その件ですか………」
「グルメ。お前を管理人として、俺は推したい」
龍以外の管理人は量産型であり、龍の部下である。この話にはさすがに驚いているが、上司がそういうため声には出さない。一方でグルメと呼ばれる男はストレートに伝えた。
「馬鹿なんですね?龍管理人」
「か、軽く気にしていることを……………」
「重く受け止めてください。人間に管理人職を本当に投げるのはあなたが初めてだと思います」
人間で管理人の補佐を行っているのはいる。ライラやロイが代表的である。このグルメーダ・ロンツェもそーゆう業務を勤めていた。ちなみに
「俺の補佐なんだぜ!やっちまいなよ!」
「………いや、その。ポセイドン様や桂様に私、推薦されてましたよね」
「?」
「あなたの管理能力も、インビジブル管理人、粕珠管理人等と並んで危険と判断されたんです。だから、私が補佐でいたんです」
「な、な、な、なんだと!!?そんな事情が俺にあったのか!!?」
「(この管理人ダメだな)」
グルメーダ・ロンツェ
管理人ナンバー:なし
スタイル:魔術
スタイル名:ライブラリー・マインズ
「管理人の量産型ですと、あなたの意見に口は出せない。上下関係、序列が決まっている。とはいえ、他の管理人もあなたの"ラ・ゾーラ"を恐れて言葉は出せませんよ(というか、子供の相手はしたくないが正しいですか?)」
「た、確かにな…………人間の補佐は勉強になるし、立場も聞けるから。お前は俺の傍に置いていた」
龍はビールではなく、缶コーラを選んで飲んだ。グルメーダはこの状態になった龍を知っている。彼には大人状態と子供状態の二つがある。大人状態の彼は基本馬鹿。無理してカッコつけている。でも、全然カッコ良くないオチになる。一方、子供状態は頭が回っており、何かに集中し続けている状態である。こっちの方が少し管理人らしいのだ。ちなみに大人状態と子供状態という枠を作り上げたのはグルメーダであり、グルメーダが作り上げた造語と言える。
「ぷはぁ。まー、その…………。やっぱり、黒リリスの一団に管理人を潰されまくったのが痛いな。単純な駒不足になった」
「……………………」
「能力があるならそれで今は良いんだよ。人間だろうが、他の生命体でも、何でもいい。管理人にはトウモロコシや狸、ロボット、性欲馬鹿もいたんだから。大差ねぇ」
「…………ふー。150以上生きてます。人間では長生きのエロ爺。ですが、管理人ではかなりの若造。それで良いんですか?意見は出せますが、あなたのような方を止めたりするなど……」
龍から依頼された管理人の件。ただの管理人ではなく、これから編成された管理人達の全責任と統率を任されるという任。英廉君やゼオンハートのようなまとめ役。さらに任務としてはガイゲルガー・フェルのように人間の敗者の管理を行う。戦闘力で任命されたわけではなく、その業務能力を買われての推薦。指揮に関しても、十分な力があると龍はみている。
彼の持つ能力は戦闘力ではなく、業務能力に優れている。
「大丈夫。その時は俺の名前を使え。"ラ・ゾーラ"で脅してやる」
「頼もしいのやら、なんとやらです…………」
この方がもう少し頭を使えれば、…………。
ポセイドン様、桂様といった方達と肩を並べると思うのですが……。子供でなければ空位になっている001の、"魔術代表"の席に座れても良いと言うのに……………。
龍管理人の弟子として進言したいものです。
「?何か考えているのか?」
「いえ…………。龍管理人の推薦ならば。力不足でも精一杯、こなしましょう」
ポセイドン不在のため。正式ではないが決まった事。
人間でありながら、異例の管理人抜擢。
グルメーダ・ロンツェが、管理人としてこれからを過ごす。彼が表舞台に出てくるのはもう少し先のことである。
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復興に励むフォーワールド。
気力、体力が漲っているアレクとヒュール。持っている知恵を出し合い、一つの案が出た。
「うーむ…………」
「予算や人材は足らないが……。増え続ける人口を考えれば作るべきだ」
「確かにそうであるぞ。理想であるぞ。だが、それは住民の不満に繫がるやもしれん」
創造性が豊かなアレク。彼が言葉にしている情報を正確にチェックしているヒュール。
「"住宅タワー"と、…………。およそ、あれだけの戦争が起きなければ倒れることはない強固で、千を越す世帯数を入れられる建造物を作るか…………」
今を生きる人々は未来を予測して生きていけない。
金という、軽そうな質量に反して重い価値を軽々と手放せない。時間もしかり。アレクの考えは今しかできないが、今やる必要性はない。まったくない。だが、ほぼ何もなくなったからこそ、創造というのは広くなれる。
「今の住民達は早く安静したいはずですぞ」
「分かっている」
「…………ですが、きっと。この異世界達の交流が人口を増させるのは、広東のデータからも、私の教育からも言えることですぞ。前に申しておったな?、空に浮かぶ住宅地を作ると……………。それよりもずーっと、土地の選びや予算もなく、時間も必要としない」
単純な復興、再現でこの世界は元通り。めでたしめでたしで完結なのであるが、世界に完結はない。滅亡はあっても完結しない。
「未来を考えるのが、我々の仕事であるからこそ、実現させるべきですぞ」
ヒュールはアレクの案に賛成する。たとえ、この場で沢山の反対が出たとしても。未来ではきっとアレクの考えが正しいと分かる。
まだ住民達に多くの苦労をかける。もう少しだけ窮屈なところで過ごすこととなる。
でも、今生きている人々には必ず。幸せが訪れるよう。彼等は金と労力を使った。空中の住宅地以上のものの創造。その土台を今この時を利用して造りあげる。
騙しちゃいない。嘘なんてついていない。ただ、自分達がよくなるため。今、ここで苦労や大変な思いをして欲しい。犠牲には救いを求めるため、アレクやヒュールもちゃんとこの計画が成功するよう調整し続けた…………。
1週間以上、住民達は外で過ごした。耐え忍んで耐え忍んで…………。アレク達の作業をただ見続けている。建造される巨大すぎる存在に期待を増させていた。それが、今の辛い状況が吹っ飛びそうな希望であった。
希望が現実になる日はとても近かった。確信できる。完成予定日のカウントをちゃんと記してくれたから……。