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RELIS  作者: 孤独
伊達・ネセリア・ヒルマン編
171/634

戦争が終わった光景。管理人が色々動く。

戦争の時間は一日にも満たなかった。しかし、悲劇や惨劇はいつまでも続かない。

むしろ、数分で終わってしまう出来事。


これが数分の出来事…………。みたいな感じ………


「っ……………」

「あたし達……どうすればいいの?」

「全ての国が…………施設が……崩壊しておりますぞ…………」


人間としてこの世界を支えるヒュール達の失望は大きい。セーフティーがかけられた脳内のイメージと、限りがない戦争の爪跡はまるで違った。

狭く押し詰められたシェルターから出れた人間達は、それが幸福であったかわからなくなった。重く圧し掛かる惨状。家はなく、職場もなく、仕事もない、残っているのは家族という曖昧なもの、友達という曖昧なもの。

人間が残った始末。生き物だけがいる…………。

生き物だけが残っていたら、生きていけないだろう…………。



「…………………ふぅ………」

「どうしたクロネア?」

「いえ……こー惨い光景が見えますが、命あってなんとやらですねー…………と、抱いただけです。これは奇跡ですよ」

「…………これだけ生きていれば確かにそう思うな」



本来、並の生物が立っていられる状況ではなかった。

ポセイドンも桂も、……無論、パイスー達も暴れすぎというわけだが…………。散らした人間の命は予想通りになった。シェルター内にいた人間達が無事ならば管理人の目論見通り。


「ベィスボゥラーさん達も命は助かったようです」

「それは良かったが…………」

「桂さんとポセイドン様もそうですが、……しばらくは復帰も難しいそうです」

「案外、くたばらないんだな」

「あなたも生命力には自信があるそうじゃないですか?ラッシ」



クロネアとラッシは桂、ポセイドンの代行となって指揮をとっている朴の下へ向かっていた。



破壊するのはとてもシンプルであるが、修復と復興には大きく時間が掛かる。

費用も、代案も、……早急に用意はできない。というより、どんな物や提案をしても人間達は動けないだろう。

今、人間達はまったく生きていない。立っている、息をしている、涙を流している、絶望している……それだけで脳みそが一杯な生物と化した。管理人からすればそれだけしかできない奴は生きていないと見なしている。心が死んでいる奴等に何ができる?



「朴さん。住民の解放はもうすぐ終わります」

「そうか、ご苦労だねクロネア、ラッシ」

「…………っつーか、何やってんだ?あの2人は…………」

「ああ……あれはね」



朴達のところに辿り着いた2人であったが、なぜだか戦いを始めている龍と蒲生。仲の良い二人が一体何をしているのか、ラッシとクロネアには分からなかった。どうやら喧嘩を売ったのは龍のようだが、……。


「蒲生のおっさん!俺にこの世界を処理させろ!!」

「いやいや待て待て!」

「ポセイドンも桂も、力爆発させてよー!俺と蒲生のおっさんは結局出番なし!俺も本気出せずに終わったこの戦争!!なーーにが!人間との戦争だ!!俺にも出番と獲物をよこせ!!人間共!」

「落ち着け龍。大人のお前が取り乱してどうする」

「!!…………おっといけない」

「タバコでも吸って落ち着け。確かにお前の扱いは酷かったような気がする。本来は前衛で戦うべき戦闘力を持っているのは俺も感じている」


蒲生の進言で龍はタバコを吸って一服…………


「げふぉげふぉ…………」

「ま、まだ身体に馴染んでおらぬのか」

「う、うるさい!!蒲生のおっさん!……ふんっす!」


龍が落ち着きを取り戻したところに朴とラッシ、クロネアが近づいた。


「龍くん。フォーワールドの"無空間"の計画はなしです」

「おうそうか…………なにーーーーーー!!!?俺の出番なし!?」

「というか、それなら早くて効果的な蒲生さんに頼みますよ。大人なら当然です。あなたの"ラ・ゾーラ"は生き物を相手にして初めて有効じゃないですか。頭を少し鍛えてください」


朴の酷い言葉でしゃがみこんで、落ち込んだ表情でタバコを吸う龍…………さらにはポケットから缶ビールも取り出し、空けて飲む始末。味もあまり感じられない表情を出している。


「じゃあ、朴。とりあえずなんか話せよ。聞いてるからさ」

「はい」


朴はここにいる四名を目を見てから口にする。



「まず、住民達のケアを優先しましょう。彼等には"黒リリスの一団"の事もよく話していない。この任務は当然、クロネア。君に任命します」

「……承知してます」

「少し前に建築業に携わっているダグリオンの住民達が移民扱いになっていましたね。彼等を中心に、復興の人材、資材を投入しましょう」

「フォーワールドの土地情報は麒麟か広東が大切に保管していたはずだな……俺がやるぞ」

「じゃあ、ラッシがお願いします。龍くん」

「なんだよ?」

「あなたは多くの量産型の管理人に連絡し、食料支援、物資の調達、医療関係者の要請をお願いします。連絡するだけの簡単な仕事ですからやってください」

「…………分かったよ」


子供っぽく頬を膨らませて了承する龍。位ではこの中で一番高い彼だが、一番馬鹿にされている。


「蒲生さんは私と一緒に穴になっている管理人の穴埋めをしましょう」

「!……俺がそれで良いのか?」

「ポセイドン様と桂さんもいない状況。……正直、私と蒲生さんでどうにかできませんよ」

「…………おい、朴。この龍様がカウントされてないぞ。俺は無事に生きてるぞ」

「少なくとも3人…………。"緊急昇格"として」

「おーい!無視か!?」

「"無限牢"全体の管理や……ゼオンハート、英廉君、ガイゲルガー・フェル、粕珠などの穴も埋める者を作らなければ全部が終わります」

「…………ふむ。確かにな」

「ポセイドン様が復帰した際に正式な任命を行えば問題はないかと思います。今はとにかく、人間も管理人も数が必要です。力や強さではなく、数です」



管理人の統率はナンバー002のポセイドンの仕事である。フォーワールドだけの崩壊と思われるが、実際には管理人の死亡やら世界の崩壊があったため、大きく響くと朴は感じていた。

ポセイドンがいないからとか、桂がいないからで……しないという選択肢は愚。

上司がするのではなく、自分達が動かなければ災害や復興が終わるわけがない。



「……うむ。分かった。俺にも推したい奴は何人かいる」

「!良かったです。やっぱり蒲生さんは身体が大きいだけでなく、顔が広いですね。私、あんまりいませんでしたから」

「数が必要ならばここに呼んだ方が良いか?」

「できるのならお願いします。ともかく、管理人が一丸となって全世界を支え合いましょう」



朴達の働きもあって、多くの人間と管理人、物資がフォーワールドに次々と流れ込んできた。絶望的な破壊が目に見えて分かった移民達であるが、彼等はどう破壊されたのかが分からない。セーフティの掛かった恐怖は希望に変えたく、身体が動いた。安心のかかった恐怖は人を動かす。

それに釣られるように本当に辛い絶望を感じ取っている者達も希望を求めるように動き始める。





……これが戦争が終わってから半日経つまでの行動であった。




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