表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
VS黒リリスの一団編
169/634

救えよ、命



人類と管理人の戦争は終わった…………。静けさが物語っていた。

揺れが止まり、炎も消え…………ここにあったのは残骸だけであった。



「まだ桂さん達からの許可が降りていない」

「外出は許可しない」


ラッシとクロネア達はシェルターに閉じ込めていた人間達に説明している。静けさがあるからといって、戦争が終わったとは限らないし、こちらが勝ったかという情報も流れていないからだ。ポセイドンが撃ち込んだ、"一輪の向日葵"(サン・ザ・サン)により被害に巻き込まれぬよう逃亡した朴達が再びこの世界に来てくれなければ解放の宣言ができない。

また、ラッシ達は朴達がどこにいるのか分かっていない。戻ってくるとは思うが…………。






「パイスー…………」


死体となったパイスーを春藍はちゃんと埋葬した……。アレク達に見つかったらきっと可哀想なくらいボロボロにされてしまう。3人が目覚めない間に、綺麗に埋めてあげた。パイスーのことは心に焼きついている。


「……………終わったんだ。パイスー達の戦いは……」




静けさと風を感じる。戦争が終わった。もう何もない…………そう思える時だと言える……


「?」



ガゴオオオオォォォォォッ



「え……………」



少し離れたところで起こる爆発……。何かが崩れる音かもと……春藍は思ったが……上がった炎が見え、…………誰かがまだいると分かった。

その"誰か"に。自分の心が深く落ち込んでしまう。"もしかして"という……気持ちで一杯になった。津波のように襲ってくる出来事だった…………。

もしかしては確かな事実で、信じられないという結末になるのが現実であり、戦争なのだ……。悲しいけど、それが争いの本質なのだ。







バヂイイィッッ



爆発の現在地にいる女性。


「ありえないですわ…………」


パイスーの死をレーダーで確認したリアがそこにいた。春藍に身体を磁力化状態にさせられたが、技術開発局の崩壊と共に復活。呪縛から解放された。


「パイスーが、みんなが、……死んだのですか!!?ワタクシを置いて、ワタクシだけを残して!!」


リアの心は怒りと悲しみに満ちた。

身体が無事元に戻ったが、心は崩壊していた。ありったけの感情が噴出し、体内にあるあらゆる兵器が作動する。



「殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい」



何を殺したいのか、具体的なモノはない。だから、単語だけを喚いていた。

ただ。……リアの殺したい者がいるとしたら、自分であった。今の自分の辛さから抜け出すため、1人だけの自分。一時、一緒にいた連中。受け入れてくれた人達。

いなくなった…………。

今の自分が嫌だった。でも、言葉を受けて死ぬ決断ができない。錯乱のようで彼女の、命のあり方の平常運転。人は希望や夢があれば簡単に死ねない。



「殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい」



誰かを選んでいる殺意はそれさえ消え失せれば止まる。心に風が通る。復讐は正義だ。

だが、今のリアには誰かもいない。見えていない。だから、ありったけの兵器は花火のように綺麗に上空へ撃ち上がり、地上に降り注いだ。



「みんな死ねぇぇっ!!!死ねぇぇっ!!消えなさいぃぃぃっ!!」



爆発の連鎖は止まらないのに、リアの心は落ち着かない。どんなに壊してもスカッとしない。捨てられないゴミのように残っている。苛立ち、恐怖、渇望、……悲しみ、寂しさが。それらの溝が破壊衝動で埋まらない。ドンドン深くなっていく。



「消えなさいいぃぃぃっっ!!」



自分1人では何も助からない。

リアの暴走を見て、動ける者はそこへ向かっていた。春藍もそうだ、……ライラもそう………。

何がいるのか分かっていない者達が多かった。あまりに遠く、生み出される炎だけが印象的だった。走れるほどの力はなく、歩いていた。


「はぁっ…………はぁっ…………リア………」


生きていた者達の中で一番早く、リアの前に現れた彼女がいた。



「リア!!」



地下で隠れ、大人しくしていたネセリアだった。静けさを感じ取り、地上へ昇っていた。リアの爆破から逃れながら、リアがちゃんと見えるまでのところまで来ていた。


「リア……」


確かにリアだった。一緒にいたから、分かる……けれど、彼女の表情はとてもリアじゃなかった。怨霊と戦っているような、……決して消えない、叶わない存在と戦っている人だった。

人間が持つ禍々しさの塊を剥き出しにしていたと、ネセリアは背筋を凍らせて見ていた。



「死ねぇぇぇっ!!!」



リアには近くにいるネセリアが見えていない。禍々しい感情は感覚を奪っており、今の彼女は兵器を使い続ける人形でしかなかった。五感は閉じ、殻に篭った人間。変化を失った人間。人じゃない、人間の形をした人じゃない奴。"科学"という枠にも入らない。



「死ねぇぇっ!!!」



リアの暴走はさらに大きくなり、体から銃弾が大量に飛散した。美しい弾幕だった…………



「あ」



パパパァンッと……ネセリアの身体に三発命中した。



「痛っ」



ドパァァンッと、……さらに2発の銃弾が襲った。



「え?」



ネセリアはその場で倒れた。意志とは無関係に倒された…………。自分がもっとも痛いと思えた瞬間。声も視界も良好なのが不思議だった……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ