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RELIS  作者: 孤独
VS黒リリスの一団編
165/634

死闘②~最強に近い方~



ギギギィッ



真っ二つに斬られたポセイドンと、そのロボット。それらが斜めに動き始め地面に落ちようとする。まばたきをしている間にはそうなる刹那、パイスーと桂の間合い及び位置関係は丁度、ポセイドンを挟んで180度の向かい合い。桂にとってパイスーは切り込める間合い。パイスーにとってはポセイドンが邪魔で、自慢の貫手が届かない距離。

桂から見るとパイスーの体はポセイドンが邪魔で見えていない。結論、今。ポセイドンが超邪魔。

パイスーも桂の立ち方、身長から視界を想定し自分の体が隠れていると感じていた。左右、どちらかに回り込んで討ちに行くか。



「いや、これ邪魔だろ」



攻撃は何も拳だけじゃない。目の前にいるこの不様に斬られたゴミも、蹴り飛ばせば飛び道具となる。蹴るには少し大きく、固く、重たいのだが。今のパイスーにとってはボールみたいなものだ。



バギイイイィィッ



前へと蹴り飛ばし、向こう側にいるだろう桂を狙った。だが、蹴られた邪魔なゴミ(ポセイドン)は味気なくただ蹴った方向に飛んでいっただけだ。

今のパイスーの眼は通常の状態と違い、左右共に広角な視界を実現しておりゴミがいなくなれば桂がどこにいるか分かるはずであったが、見えなかった。たったそれだけの理由でパイスーは首をわずかに上げて、空を確認する。すでに刀がパイスーの頭を貫こうと空中から突きを行う桂の姿がいた。だが、そこから桂の動きは変幻自在のスピードとテクニックを見せる。



音も立てず、光のようにパッと消えて桂は"雷光業火"によって姿を移動させる。



パイスーの首は上がったまま、目だけ動いて。自分の左側に居合斬りする体勢。身体能力ではパイスーが総合的に上回るが、このような細かなレベルの動きでは桂が上手を行く。

ここから居合斬りが来るとパイスーに予感が走る。刀を強く意識する…………。だが、桂のそれは構えだけであり、本命と思わせるだけの殺意があった。



バヂイィッ



「!!」



桂の居合斬りを左腕で止めたパイスーであったが、その攻撃がフェイクであることに止めてから気付いた。パイスーほどの"超人"が単純なフェイントに引っかかるというのはそれだけ、技術が桂にはあったということ。止められる寸前まで本命と思わせる、体捌き、殺意であった。逆に見破られていたらこちらがこっ酷くやられていたかもしれない。



バギイイイィィッ



桂がパイスーから一撃で奪った物は両足をつける大地であった。彼を蹴り上げて空中へと吹き飛ばす。



「くぉっ」


桂の狙いを悟ったパイスー。通常のレベルの悟りと、パイスーと桂のレベルでの悟りは意味が違う。状況の不利を瞬時に気付き、それを受け入れて戦おうとする。



「なっほどな」



パイスーの豪腕は確かである。だが、上半身の筋力だけでは限界がある。支える下半身の強さもあるのだ。桂はパイスーの大地を割れるほどの脚力を封殺するため、空中戦へと持ち込む。足場があるという前提での強さを発揮するパイスーと、空中戦でも問題なく能力を発揮する桂。

その差は強さより駆け引きと、自身の持っている能力の性能の差、戦う陣地の差



「………………」



足が使えない状況にすればパイスーのスピードも格段に落ちる。拙者には"雷光業火"があり、スピードに陰りは起きない。足は決してつけさせない。



桂も飛ぶ。空中でも自在の方向転換とスピードを発揮し、パイスーをさらに打ち上げる。絶対的な優位を作ってからトドメを刺すというやり方。優位な戦況とはいえ、パイスーのあの豪腕なら一発逆転もあり得るのだから、慎重になるのは正解であった。

空中に投げ出されているパイスーはとにかく桂にチャンスを与えないで守り切ることに専念していた。背は絶対にとられない。俊敏さを奪われたこの状況で博打を打つのは死にたがり。自分の耐久力に自信を持ち、桂の失策を待っていた。優秀な桂とはいえ、パイスーの底力の測りそこないはあり得る。



バギイイィッ



「っっ」

「!」


刀と豪腕のぶつかり合い。地上ではパイスーが勝っていたが、空中では桂が大きく上回った。それでも、腕が壊れない、斬られないパイスーの豪腕は負けていない。

だが、パイスーには負けてはいないが勝っていないという心中だ。押されているという事実を静かに受け止めての守備。



バヂイイィッ



パイスーは4度ほど桂に弾き飛ばされ、ようやく攻撃に転じる気配を出した。地上に落とさぬよう上手に戦っていた桂に失策はなかったが、変化を起こして様子を見る。


「"キング"」


空中に生み出されるパイスーの獅子の群れ。パイスーの足場となるために生まれたという悲運な獅子達。柔らかな獅子の体を踏み、弾き飛ばされた勢いはやや残されたが足をつけるという喜びを知ったパイスー。



「"軍獅子"」



パイスーによって雨のように生まれ、落ちて行く獅子達。地面につけば自由な意志を持ち、桂には読みようがない動きをする。獅子の身体の上を足場とするパイスーであるが、やはり地上での戦闘の方がやりやすい。桂には見抜かれていると、やってから悟る。"キング"と超人技の同時の併用は体力の消耗が激しい。魔力の疲労も馬鹿にできない。

桂は先ほど同様、パイスーを空中に留めることに徹している。



チィィンッ


「!」


パイスーの拳が届かない距離で、桂は集中して抜刀の構えをとる。自分の命を狙っていないとパイスーには分かる。それでも自分の命を刈り取る攻撃がやってくる予感。



「………………」



何百頭も作り出された獅子だけに的を絞り、全ての獅子の横を通り過ぎ、斬るという一連のプロセスを"雷光業火"に打ち込んだ。これを実行すればプロセスが終了するまで"雷光業火"の行動が続く。



ピイィィンッ



桂の持っている最強剣術。逃げと防御を封じる光速となった身体で、多く、広く散らばる敵を同時に斬る。

桂から現れた光がフォーワールド全体に包まれた時、行動の余波も現れる。光速にただそれだけの行動をとれるわけではないのだ、桂の攻撃はあくまで行うだけ。力をそれだけに制御できないからこそ、桂の持つ最強の剣術。



バヂイイィィッッ



パイスーの獅子達が桂に狙われているため、弾けるように斬り飛ばされる。一瞬でパイスーが多く出費した魔力を無にする。

その次に影響が来るのが、ポセイドンによって蒔かれた炎や煙に及んだ。

生み出された荒れ狂っている暴風は多くの炎を消し飛ばし、煙は空と同化していった。斬れない存在達をも斬り、消し飛ばすといった感じであった。



「これがお前の切り札かよ」



本来ならば相手の動きや視線などから攻撃を読みきれるパイスーであったが、こうも無作為に狙い、回避不能のスピードを持っていると完全に凌げない。獅子の上といえ、パイスーの土俵ではないならなおさら…………。桂に左足を持っていかれたパイスー。



キイイィッ


「…………………」


桂はようやく止まった。そして、それが攻撃の余波の最後。

証拠を知るのはパイスー、桂、……まだ生存しているポセイドンだけだった。不吉以外何物では音が世界中に響き、バランスを失って全てがゆっくりと動き始める。沈んだり、上がったり、不規則な動きで……安定した形を求めているようで崩れる事を望むような動きだった……。

そして、小さな風が吹くだけで全部が終わった。



ガジャアアァァッ



いくつか用意されたシェルターの内、2つが。桂によって斬られて崩壊。下敷きになった住民達は全滅。地震のように世界中が揺れていた。平らな大地が不規則に沈んでいく。


「ついでにこの世界、全部斬りやがったか」



パイスーは左足も、足場にしていた獅子も消え、斬られて沈んだ地上へと落下して行った。

大きな痛み、消耗と引き換えにパイスーの心の内は狂気の笑みを出し、ハッキリと桂の切り札から情報を抜き取った。桂が平静を装っているつもりであるが、悲鳴をあげたいところがあることをパイスーは気付けた。




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