ワタシノトモダチデストショウカイスル①
インビジブル様の弟子はいくらでもいた。ウチはあいつと隣同士。友達同士。そして、強敵同士。
「うっ………ぐぅっ」
「起きた?」
「!!」
姿が変わってしまい、性別まで変わってしまい、持っていた能力も違ってしまった。
この柔らかい手とか、小さいな胸。ウチが持っている記憶や意志が本当に確かなのか?タドマールに再びやってきた事でようやく、真実だって理解できた。
「さっそくだけど、決闘をしよう。ロイ」
「お、お前は…………お前、今…………」
インティはロイに優しい膝枕をしてあげていた。状況が判らないロイ。ひとまず、インティの言った事に対して、冷静に返答する。
「俺と結婚しようだと?」
「いっとらんわ!!」
予想外かつ馬鹿過ぎる発言にインティはビンタをかまし、怒りの赤面を見せてロイをポイーと投げ飛ばした。
「いつつつっ……じゃあ、なんて言ったんだ!?小娘!!っ…………」
「決闘って言ったのよ!!この馬鹿ロイ!!馬鹿!!アホぉ!!」
ロイはその言葉にやや状況を把握。投げ飛ばされただけでは絶対にならない身体の重さ。自分がパイスーと戦ったという記憶まで戻ってきた。そして、奴がここにおらず、インティがいるということは負けたという事実も知りえた。
「お前には興味ねぇー!!パイスーって野郎をぶっ殺すだけだ!!」
「あんたにそれは無理!!負けたのが分からないの!?」
「次は負けねぇ!!」
「次もないわよ!ウチがあんたを倒すからね!!」
インティはナイフを2本取り出し、戦闘体勢をとる。その姿と戦意を感じ取ったロイ。ロイは左手でインティを静止を訴えるポーズをとった。
「ま、待て!俺は女と戦うのは夜くらいだ!お前が"超人"でも命の奪い合いはしねぇ!!やるなら命の産み合いだろうが!!」
「変態空気読め!!」
どーしてウチが女の子で生まれちゃったのか。それだけ少し残念。手に入れられる筋力には限界があり、小柄なところも欠点。男の時は気にしなかった汗の匂いも気になる。頂いた、この眼、この耳、この手、この胸、この足、この身体は決して今を望んでいるわけじゃない。
「戦うよ。ほら構えなよ」
「!……マジでやるのかよ」
前の魂くらいしか望んでいない。でも、それが何よりも強く、ロイを倒せと言っている。
「しなきゃ八つ裂きにするから、ね!」
ロイにとっては寝起きや浅い混乱したような状態。そんな中、インティの"韋駄天"を捌ききれるわけがない。まず、ロイにはインティとの対決を望んではいないからだ。
ロイはインティに右肩と左足を軽く斬られ、意識がようやく本調子に近づいた。
「ぐっ…………」
マジで構えなければやられると悟るも、どこか戦う気にはなれない雰囲気を発しているインティに戸惑うロイ。攻めの意識を欠き、インティの動きについていき凌ぐようなやり方を選択した。
防戦。
パワーは自分の方が上。スピードはインティに及ばないが、対応できるだけの能力はある。攻撃は決して仕掛けないロイにインティはキレマークを出しながら、失望したと結果で伝える。
「あんたねぇ」
「!」
インティの2本の刃と2本の両足から繰り出される攻撃は読み切っていても、身体がついてこれない。ロイのガードの隙間を掻い潜って叩きこむ、インティの華麗な連続かつ変則な攻撃。
「裂蹴風迅!」
フィニッシュにロイを蹴り飛ばし、助走する距離を作った。そしてすぐにクラウチングスタートをとる構えになったインティ。ロイが背中を地面につけた時、インティは溜め込んだ足を爆発するように加速させ、ロイに突撃する。パイスーを相手にみせた技の、究極型。華麗な斬撃、華麗な連打ではなく、華麗な轢き殺しと言える攻撃であった。
「真・風神真葉!」
ロイをすり抜けたインティ。殴打、蹴り、斬、自身が行える全ての攻撃をすり抜けた間に叩きこみ、ロイを勢いだけで天高く打ち上げ、傷だらけにしてみせた。
キイイィッ
「…………………」
暗い表情を出し足にブレーキを掛けたインティ。求めていた相手だというのに、これっぽちで終わってしまった。
「違う…………」
未だに宙に浮いているロイを見て、非常に残念な顔で怒っていた。
「違うでしょ!!ロイ!!ウチとあんたが!こんな勝負で終わっていいわけないでしょ!!不完全燃焼だよ!!」
ドガアアァァッ
血に染まって、骨身に染みた攻撃を喰らったロイ。意識はまだあって、何かを必死に思い出そうとしていた。それとは別にインティは今の感情を吐き続けた。
「ウチはこんな姿になっちゃったけど、もう一度。あなたと戦いたかった。前のウチを……"金剛"の超人だったウチを倒したお前を!!ウチは殺したかった!!」
「………………」
「ふざけるな!!ウチが女になったからって手を抜くな!!全力で戦え!!ウチの夢、希望は貴様の死、それだけを思っていたんだ!!」
インティは死に向かっているロイにぶつけていた。命が終わる十数秒後、自分がどうなるか分からなかった。
「…………あー……」
「!」
ロイが起き上がってくれた事で正気を保てたインティであったが、次に彼が発した言葉にショックを受けた。
「わかんねぇな」
「はぁ!?」
インティは知っている。ロイが殺した相手、負かせた相手をいちいち覚えているとは思わなかった。けれど、その言葉を聞くとやはりショックが大きい。さらにロイは続けた。
「だが、俺がお前と戦いたくねぇと思う理由が見えてきた。女の嫉妬は怖いなぁ、おい」
「!!」