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RELIS  作者: 孤独
”不信な森”イビリィア編
16/634

リアルヒートと打出小槌

サイソップの街では人間と魔物の戦争が起こっていた。

四方から攻め込んでくる魔物達であったが、幹部や長が不在という事もあって統率力はイマイチであった事に狩人達は気付いていた。

だが、そのような連中がいなくても単純な物量で不利。

城壁を登って来れる二足歩行が可能な魔物や、一定時間空を飛べる鳥や虫のような魔物もおり、城壁上での戦闘も頻繁に起こっている。



「うわー!なんですか、なんですか!凄い多くの魔物がいます!これ、これ、全部私達を食べる気なんですか!?」

「騒ぐな、ネセリア。ジッとしてろ」

「怖いです。超怖いです。アレクさん!」


そのわりにネセリアのテンションが高いのは、魔物という存在がこんなにも多く奇形だった事だからだろう。気持ち悪いと感じているが、こんな姿でも生きているんだという謎の感動もあった。

だが、魔物が人を襲うという行為はどう目に映っているだろうか?




グジャアァッ


「た、助けて…」

「死にたくねぇぇよぉ!」


2人の狩人が向こうで魔物に喰われて散っていく。その時、ネセリアはその方向に右手を伸ばしてた。瞳の色が曇っていたのにアレクは気付いていた。



「あ、あれ」

「冗談じゃないんだ。無理はするな」

「いや、大丈夫ですから。アレクさん。はははっ、大丈夫ですから、私に命令をください」


小刻みに震えている身体。少しでも戦おうとしていたのか。死体や遺体を見るのは初めてではないはずだが、目の前でそうなった奴。即死になった人間を見るのは初めてだろう。

それがここの世界の日常かつ常識。生きた者を殺し、食べる生活。

生易しく頼めば調理する事もなく受け取って皿とテーブル、箸やフォークなどを用意すれば簡単に生きられたとことはまるで違う。

今まで知らなかった事を知ってしまう事は。過激な事だ。



「"掃除媒体"に入って休んでいろ」

「アレクさん、ですが」

「急げ」



アレクは魔物に恐れてなどいない。確かに状況は最悪過ぎるが、死ぬつもりもない。



「これは命令だ」

「は、はい」


ネセリアをもっと早くこうすれば良かったが。なんでもかんでも、初めて観る物に楽しそうな顔を出す。辛く見たくもない物でも想像せずに現実を見てしまう。

空っぽに育っているとついてしまう、悪い癖だ。

現実を想像できない事は


カチィンッ



"掃除媒体"に入ったネセリア。CD状のそれをアレクは白衣の裏ポケットに入れて、代わりにライターとタバコを取り出す。一服とるアレクの背から魔物達が襲いかかってくる。だが、ライターの火は付いたまま。攻撃はすでに始まっている。



炎獄爾来(えんごくじらい)



ガゴオォォンッ



突然に現れる爆炎が魔物達に襲い掛かった。

一撃で魔物の身体を焼き尽くし、一瞬の内に命を終わらす炎。

アレクはライターを握り、火を出したまま。城壁に近くにいる魔物達にライターを向ける。やや離れたところにいる標的に伸びる火ではなく、飛ぶ火をお見舞いする。



紅蓮放雁(ぐれんほうがん)



ドパァァッ



鳥の形と大きさをした火がライターから放たれる。それもとても早く、当たった魔物の身体を焼くだけでなく焼き貫く。連射がやや遅いがそれ補うだけの弾の速度。

城壁近くにいる魔物達を倒し、アレクは素早く城壁から飛び降りて外側に落ちようとしていた。



【人間が落ちてくるぞ!】

【喰っちまえ!!】



落ちてくるアレクを狙う魔物が数十匹がいたが、アレクのライターはさらなる火を放っており、とても大きい火の形。しかも、両手にだ。二つ同時に使用している。



ズバアァァンッ



アレクが落ちてきた箇所の近くにいた魔物達は木っ端微塵かつ、焼き尽くされた。二刀流というべきか、二つのライターを握ったアレクの攻撃は圧倒的なモノだった。

ライターが放っている大きさは、魔物達が見て来た剣や槍よりも長く、攻撃となる部分が切っ先だけではない。その火に触れただけで大火傷。



「…………………」



アレクは魔物達の動揺を少なからず見抜いて、なるべく数を多い側を狙って攻撃を繰り出した。城壁の上でチマチマ魔物を撃退するよりも、横からかっさらうように焼いた方が多くの敵を沈められるからだ。

質が伴っていないこの軍が退くとしたら、数では覆せなくなるほど魔物を減らす事だ。どんな魔物だろうが良かった。



「な、なんだあの男!」

「異世界の人、強ぇぇ!」

「魔物達をガンガン焼いている!!あの火を出している道具は一体なんだ!?」



アレクの活躍が街を守る狩人達の士気を熱くさせた。

絶望的な数の差の前に、物凄い武力を持った存在が現れた事は生き延びられる機会が生まれた事。ともかく、他の城壁から昇ってくる魔物達を食い止める事に専念させる。アレクを援護するほど、狩人達は強くないのだ。



ズバアァァッ



「!」


魔物との戦闘からそこまで時間が経たない間に、アレクが見たのは。自分と同じだろう立場の人間。



「おー?なんだお前?1人で魔物達と戦っているのか?」

「テメェは誰なんだよ?俺等の獲物を削ってんじゃねぇぞ?あぁん、ぶっ潰すぞ」


謎の男達、二名。自分ほどにイカしたサングラスおじさんと茶髪で夏を生きる青年という印象だった。ザラマと梁河がアレクの前に姿を現したのだ。彼等が現れた先の向こうには、魔物達がグチャグチャにされていた。


「交ぜてくれるか?俺達は魔物達と戦いをしに来ただけ。わざわざやってきたんだよ」

「単なる雑魚殺しだろうが、ザラマよー」

「なんだお前等は?」

「お互い分かっているだろう?あんたは強く、強さを見抜く眼力がある」



ザラマは出会って話していたアレクから、離れるようにしながら語る。かけているサングラスを少し落として、裸眼で前方の魔物達を睨みつけつつ



「この状況で生き残るには何かしら飛び抜けた奴が必要だと、俺とあんたがガチバトして疲弊するのは互いが死ぬだけ。こんな魔物に殺される結末しかねぇ、くだらん死に様だな」



ビリリィィッ


「出たよ」


梁河はザラマ特有のあの語りにはウンザリだった。

単なるカッコつけでダセェーって目で見ている。強くなれたもんだから、調子に乗ってやがる。

自分より倍以上生きているくせに。だがな、



「俺はこっち。あんたは俺の後ろ。梁河は向こう側で戦うと良い」



ゴウウゥゥンンッ


「!なんだ?」


先ほどから大地の悲鳴のような声がしている。アレクも周りにいる魔物達も空を見たり、大地を見たりした。とんでもない広範囲に及んでいると察していた。



「来たぜ、来たぜ。おっさん。あんたの"炎"も中々だが、ザラマの"熱"はイカレ過ぎてるぜ。敵に回さなくて良かったな」



梁河はゾクゾクと身体を強張らせ、ザラマのマジに戦闘意欲が沸いてくる。

サイコーに良い眺めに変えてくれる。そして、ザラマは情報整理を終えて魔術を起動する。


「"リアルヒート"」


ザラマ

スタイル:魔術

スタイル名:リアルヒート


魔力を熱に変え、周囲の熱を操作する能力。(主に熱の上昇を得意とする)

熱が上昇した魔力は発火したり、溶け出しやすくなったり、触れた相手に大火傷を負わせることもできる。ザラマ自身にはこの熱が通じない。ザラマの"リアルヒート"の範囲の大きさ、及び発動している場所や条件を複雑にするには、彼の集中力と魔力に依存する。



「"王族墓地を守護する熱レッド・レンジ・レコード"」



ゴアアァァッ



ザラマは街と魔物達の群れの外側の四方を高温状態にした。周囲が森に囲まれていることもあって、昇った熱は火となり、火は炎となり、炎は街の周囲を完全に覆い尽くした。

逃げられない。外にはもう誰も出ることができない極悪過ぎる炎と、黒々としている煙。



「!むっ」



熱と火では違うが、出している炎は同じ。

"魔術"と"科学"に差はないと思っているが、このような器用な芸当が"魔術"で可能だとは思っていなかったアレク。驚いた顔を出したが、ゆっくりといつもの顔に戻る。

一方、ザラマはアレクに訊いた。



「おっと、俺はアンタの名前を聞いていなかった。名前くらい教えてくれや」

「アレク・サンドリューだ。ともかく、そっちは貴様等にやるぞ」

「ああ、任せときな。梁河もさっさと配置についてやれ」



三人はそれぞれ別れる。広範囲の攻撃が可能なザラマが北側と西側。アレクが東側。梁河が南側の城壁についた。


「俺が一番遠いじゃねぇか!反対側だぞ!!」


何を今更な事を叫ぶ梁河。

すでに西側にはザラマの"リアルヒート"が発動しているため、そちら側を通ると焼け死ぬ。アレクと一緒に東側周りで南側を目指す。まだこちらは魔物の数が多い。

だが、そんな事よりもアレクは梁河やザラマを注視していた。

敵ではないが、仲間でもない。何より自分達と同じ別世界からやってきているのがハッキリ分かるほどの、強さと恰好をしている。




「なーにジロジロ見てやがる」

「なぜ、俺達と違う異世界人がいるか不思議でな」

「は!それは俺達もテメェが不思議だっつーの。どーやって移動してんだ!マシなやり方じゃねぇだろ」



お互い、そんな疑問を持ちつつも深くは関わらなかった。

今はそんなのはどーでもいいからだ。目の前に現れる脳筋だらけの魔物達。それに立ち向かったのは梁河であった。自分も戦いてぇーなって顔がハッキリと会ったばかりのアレクにも分かった。



「どいつもこいつもこの俺から正面で来てよー。馬鹿にしてんのか?」



梁河は"魔術"でもなく、"科学"でもないスタイル。アレクにとっては初めて見たかもしれない。

"超人"というスタイルだ。身体能力が異常発達している力であり、魔力が筋力などに変化していたり身体全体に浸透している。



「"打出小槌"がグッショングッションにテメェ等を潰してやるよ」



間合いはかなりあったと関わらず、どう考えても当たらない。完全に距離を間違えているジャブを数発行った梁河。何をやっているかは、アレクや魔物達には一瞬分からなかったが、4発目のジャブを繰り出した瞬間。



ドブウウゥンッ


「グシャグシャ死刑だ」



突如、両腕が伸びて膨らみ始める。ジャブの射程距離が大きく伸び、パワーも大きく上昇した。両腕が伸びてデカクなった梁河の姿は、魔物のように奇形であった。だが、そんな奇形な両腕の拳は圧倒的。宣言通りのグシャグシャ死刑。



グジャアアァッ



拳一つで魔物達を押し潰す。攻撃を繰り出し続けるほど、両腕だけでなく身体まで徐々に大きくなり始める。出会った時はアレクの方が大きかったが、戦ってすぐにアレクの身長を超えてしまった。


「おらああぁ!!死ねゴラアァ!!」


梁河を見上げて言葉を吐いてしまうアレク。


「こいつも化け物か」


圧倒的な戦力が二人加入し、街にやってくる魔物達を撃退する。



梁河やなかわ

スタイル:超人

スタイル名:打出小槌


自分の体の一部を巨大化できる能力。(全身も可)

巨大化する条件は、巨大化したい箇所を運動させることである。激しく運動をするほど、より巨大化できる。ちゃんと大きさもコントロールできる。巨大化する速度は極めて迅く、運動と呼ばれる条件は比較的簡易に条件をクリアできる。(走るだけで両足が馬鹿でかくなれるとか)


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