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RELIS  作者: 孤独
VS黒リリスの一団編
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凡人が死ぬ瞬間②




超が。超付く。それだけ超嫌い。嫌になる。超。やってらんねぇ~。


「はっ…………」


ザラマの肉体はこの地獄な炎と熱の爆心地で生命を維持するだけが限度。もう風前の灯。前に出したい足が震えるわ、力が入らないわ、傷付いて泣いているわ。なんとか立つだけでいっぱい。

この歳のせいじゃなく。この歳まで鍛えて物になったのは"リアルヒート"くらいだという事が嫌になってくる。まったく困る。もう少し、何か特徴が身体にできないものか?

年下の若さ…………って類じゃねぇーだろ。相手は。俺と似たおっさんでこんなに差があるか?



ザリイィッッ



両目とも水分がぶっとんでまともに見えるか怪しいが、確かに奴が焼けている身体をこの目で見た。ゆっくりとであるが、進んでくる。グツグツと煮え滾る溶岩の上のような場所で、そんな事ができるか。できるのか、この男は…………。自分の放った炎も、俺の熱を浴びてもなお動けるのか?そして、この視界を遮る黒い煙の中で正確に俺を見つけ出す直感力も恐ろしい。



「見つけたぞ……」

「っ…………」


パイスーや梁河、インティと比べれば格段に遅かったが、立っているのが限界の俺になす術なし。右ストレートをもろに顔面に叩きこまれ、灼熱の温度を足だけで防いだが、身体全体がそこに突っ込んだ。さらに焼けると、熔けるを味わう俺の身体。悲鳴を上げるほど元気はなかった。余裕もなかった。

アレクは倒れるザラマに言葉をかける。


「死闘をするのはやはりお前だけだったな」


その言葉は元気になる言葉じゃなかった。だが、心が"リアルヒート"なしでも燃える言葉だった。ふざけるな…………。信じらんねぇ。と、熱意を湧かせた。

そんな言葉や、そんな現実を。認めたらどう俺がお前に勝つ?


「どの道、お前等に勝ちはなかった。さっさとクタバレ」


所詮、お前等に俺は勝てないのか?これで………


「お前で3人目だ…………」

「!」

「紛れも無く天才…………アレク・サンドリュー」


焼けた喉で出した声が届いたかどうかは分からない。立ち上がったわけでもない。高熱の鉄板みたいなところでドロドロにされる運命でしかない自分が、行ったのは自分なりの抵抗。他者から見れば足掻き。



「道連れだ」



燃えろ。燃えまくれ。灰燼となれ。一切の存在すら許さないという鬼神の精神で、"リアルヒート"を起動し続ける事だけ。確かにアレクも、その熱に気付けただろうが…………。

あまりにも残酷にそれを払う。


「力の無駄だ。一秒でも早く死ぬことに使え」


再度捨て身になりきっても、このアレクの首にはまだ届かない。なんなんだコイツは?なんなんだコイツ等?強すぎる。なぜ、これほどの力を備える?俺が……………。


「俺はお前如きにたくさんの力を使ってられねぇ。ぶっ殺したい相手が控えているからな」


どんなに一生懸命にやったとしても、超えられない壁があって良いのか?凡人共はそれでいいのか?俺は良くない。超えなきゃ、心がどこかへ吹っ飛びそうだからだ。



でも、勝てねぇ。根性や熱意だけで現実を突破できるなんて、甘ちゃんでも思わない。夢に過ぎない。



「げほおぉっ……………」


ザラマは心が折れない。身体と魂が合っていないと言える。肉体的に滅び、指が一本たりとも微動だにしていないのにも関わらず、魂は焼かれていない。皮膚、神経、血管、筋肉、骨が熔解していっても魂が強く残り続け、アレクも疲弊するほどザラマが最終的に消え失せるまで警戒していた。魔力が尽きようと、身体が灼熱に焼かれようと。そこにザラマがいる気がした。

この男が今まで戦って生き続け、自分を鍛え上げているのをアレクは心の中で恐れと似た感情で警戒していた。



「か、…………つ…………」



凡人は決して。天才に勝つ事はできない。なぜなら、天才が勝者であるからだ。勝者でなければ呼ばれることはあり得ない言葉なのだから。敗者以下を凡人、負け犬とこき下ろした言葉で表現される。こいつはかなり食いつく負け犬だった。




ジュウウゥゥッ


「完全に肉体と魂が消え失せたか…………なんつー、しぶとい奴だ。雑魚じゃなかった」


ザラマは焼かれて死んだ。血も骨も魔力も焼かれて散っていた。ハッキリと確認したアレクはようやく警戒を解いて、この熱い戦場から一目散に逃げ出した。

彼が死の最後まで放ち続けた熱は確かに刻まれた。この天才に与えた傷、ここで火山活動が起こったと思えるような熱の攻撃は技術開発局に刻まれた。勝ちではなかったが、ただの人がこの地を訪れれば魔神でもいたのかとも思われるほどだ。


自らを凡人と称していた時点で、自らの才に気付こうとしなかった。もう少しだけ人に恵まれていれば気付けた事だろう。


凡人がいつまでも努力をして、凡人ならば。才能がないという枠ではない。それホントに努力してたの?という疑問文。自己満足での終了である。

ザラマは凡人であったが、とうに凡人ではない領域にいた。凡人はここで確実に死んだのだった。

命としても、魂としても、そして、凡人としても…………




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