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RELIS  作者: 孤独
VS黒リリスの一団編
155/634

凡人が死ぬ瞬間①


在り来たりの1人。どこにでもいる凡。出会う奴は大抵、凡。凡。凡。凡。

個性や特徴といった凡才にも色々とあるが、ステータスという関連で調べればどいつもこいつも凡に納まる。12歳、13歳、14歳からずっと校内ナンバー1の秀才とチョー馬鹿も、より広い世界に放り出されればどいつも似たり寄ったりの野菜共になることだろう。案外、チョー馬鹿は運動神経が良ければ馬鹿の方が希少価値があるかもしれない。また逆もある。


ただ広い世界に投げ出されるとどいつもこいつも、並んでしまうのが凡才の宿命。



「お前で3人目だ」


ザラマは自らを凡才と認識している。そして、もう47歳。パイスーは25歳。同じ仲間なのに自分だけ先にやってきたせいで老けてやがる。すでに全盛期でもない。

この凡才。非常に稀有な経験をしている。これは神様が与えた何かかもしれないと疑っている。



「紛れも無く天才」


それも極上。

そして、自らの才のなさに気付かされる。


「アレク・サンドリュー」



パイスー、ハーネットという怪物や天才と並ぶ存在と対峙した時、諦めという悪い悪魔が舞い降りてきたものだ。そして、その悪魔がアレクによってまた降りてきた。


…………………………………………………………



刻は少し前。

ザラマがアレクに言葉で脅されたところからだった。


「俺だけが死闘?」

「そうだ」

「それはないな。むしろ、それはお前ではないか?」


確かに強さという点でいえば、アレクに軍配があるかもしれない。パイスーが少なくとも強さで認めている人間の1人。だが、戦闘は強さが全てではないとザラマの経験が言っている。相性で考えれば自分の方が有利。


「お前のライターから繰り出せる力は"炎"が主体……その炎の元となっている"熱"を操る俺の"リアルヒート"……これはお前の科学が無力といえる事じゃないか?」


原理的な話ではザラマが正しい。だが、アレクは言い返す。やってみろよと口を出すのは簡単だが、それでは芸がない。むしろそれは向こうのミスという意味にもなる。


「その理論には穴がいくつもあるな」

「!」

「1、俺の炎を一瞬で消すほどお前が腕の立つ奴じゃない。2、魔術は魔力を元にして働く以上、俺の炎にお前の魔力を紛れ込ませるのは困難。3、俺の炎を断ちつつお前が攻撃を可能できるほど甘くはない。4、そもそも俺のライターが無力になってもやはり死闘をするのはお前だけだという事実だ」



言いたい放題じゃねぇかと……、ザラマは核心に突かれるところを認めているかのようだった。サングラスをあげ、メンドーそうな声を出した。


「あ~………そっか。そうだな」


彼なりの行動。長くこの早川仁治の体型で生きてきて学んだ事だ。強い奴と戦う前に、少し諦めを見せて緊張をほぐすこと。力と力のぶつかり合いは絶対に避けろと、心の芯に言い聞かせる。そして、自分の力である"リアルヒート"で身体を緩やかに温める。ぶつかる精神が少しでも冷えるとモロに実力差が現れる。


「確かにアレク。お前は俺より強い、俺が確実に死闘を演じるだろうな」


凡人が。


「だが、勝敗は分からない。俺がこうして戦って生き抜いたのは死闘が多い。格上が多い。傍にもいた。俺は強敵との戦いに慣れているんだよ」


天才と比べて、逆境と巡り合う機会の多さが違う。その中でひたすら生き延び、勝ち続けた者はいずれ凡人を越えた何かになれる事だろう。

年齢もそうだし、"RELIS"を通せば生きていた時間の長さもアレクとは倍以上もある。負けていたり、劣っているところを観察するだけでは勝負を諦めてしまう。何かしら、自分の優位を探ることが一つの手。



「始めるか」

「ああ」



お互いの戦闘の間合いは中距離~遠距離の撃ち合い、魔術と科学の合戦。


「"王族墓地を守護するレッド・レンジ・レコード"」


灼熱の再現。炎の元、熱を操るザラマに対して、見えず、瞬間的で、高火力、範囲も広い、罠としても活用できる。アレクの"焔具象機器"はザラマの体を軽々と焼き、ふっ飛ばしていた。

熱を下げ、炎を消す暇すらなかった。


「っっ!」


ザラマは受けに回らない。攻撃時間は自分の方が長いが、威力と連射できる数からいって一度受けに回れば攻めに転じる暇を奴は与えてくれない。



ガゴオオオォォォッッ



2人の戦場は激しく熔け、炎がそこら中に発生し、スプリンクラーも機能停止させるほどの高火力を再現させた。海のように広大になっていく黒い煙を始め、上がった炎が青く光り出し、近辺にあった液体という存在を全て気化させ、全ての原型を崩す熱量が生まれていた。

いくつもの爆発が起こり、何者も拒んでいる。

サングラスも髪も、皮膚も、肉体も熔けながらもザラマにはこの戦況に勝機があると確信した。

熱によって潰れた喉、水分が熱で吹き飛んで渇きを超えた両目、それでもなお分析し続けた。



「アレクのライターは…………俺が見えていないと使えない」


炎と熱で生じた濃い煙。それが周囲を覆い、視界を格段に奪っていた。それを機にアレクからザラマに対する攻撃がピタリと止まった。ザラマの読みは概ね正しい。アレクがピンポイントで狙うということはできない。だが、止まったとは言い切れない。ザラマと似たようなことも可能であるからだ。

もっとも、ザラマはソッチの方が得意だ。



「焼けてしまえ、アレク」



標的を狙う事よりも、一定の範囲内の温度を急上昇させる。特定の誰かを狙うより、全てを焼き尽くす事は単純な仕様で複雑な操作はいらない。アレクが範囲内に入っていれば焼ける。



ジュウゥゥッ



黒焦げになる白衣と靴、肉体の損傷も酷い。自分が高火力の科学を使用する故、炎や熱の耐性は体に施しているが、なければ死んでいたほどだ。アレクは大怪我ですんでいる。

通常、戦闘不能に陥るほどのダメージをお互い負いながら、この灼熱と炎の足場で行動する。ザラマの攻撃範囲がかなり広いことを察知し、煙に包まれ奴を見失っても遠くに逃げれないダメージ量を与えた自信から、前へと進んでいくアレク。




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