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RELIS  作者: 孤独
VS黒リリスの一団編
147/634

梁河 VS 蒲生


「オイラ!ICU付き救急車になーれ!!」



ガチャガチャ



フルメガン・ノイドはあらゆる乗り物に変型する事ができる。列車から救急車となり、乗り物であれば中にあってもおかしくはない物まで用意する。走る病院と呼ばれるほど。つーか、病院じゃね?って思うくらい巨大さ。車輪さえついてれば何でもアリな奴。

だが、建物や道具を身体で揃えることができても、その中には人間のような生命体はいない。その部分を補うのがリップル相馬。


「手術服。ナース服。手袋。キャップ。マスク。名医セット装着完了ってのー!」


自身に大量の医師の服を装備し、治療専門のキャラクターになる。また用意した人形達にも着させ助手として利用する。

インティにやられてしまったベィスボゥラーを治療する二人。

科学使いは"超人"や"魔術"と比べればコンボが成立しやすく、応用性はピカイチ。


「治療するってのー!」



それが開始されてすぐの事だった。中にいたリップル相馬達が転倒し、フルメガン・ノイドが逃げ切れない速度で爆撃が行われた。



ドガアアァァァッ



「な、何事ってのー!?フルメガン・ノイド!!」

『て、敵襲だ!!2人いる!ぐおぉっ、熱くなってくる!!』



爆撃だけじゃない。病院内が真夏どころか、溶岩地帯に変わりそうな温度になっていく。病院の外でお祝いという言葉で死をプレゼントしたい二人がそこにはいた。



「乗り物に変型する科学…………厄介だが、俺達と戦場を甘くみたな」

「ワタクシ達が治療なんてさせると思っているのですか?」


リアとザラマである。狙い撃ちといった形でこの場にやってきていた。特に厄介なフルメガン・ノイドが戦闘力0の救急車となっていれば攻撃し放題。他人は治療できても自分自身は治療できないという欠点を露出。リップル相馬も、距離と建物内という状況を考えれば戦闘力は0。



「"王族墓地を守護するレッド・レンジ・レコード"」

「"ノッツ・ウォー・セクシャル(愛がない戦時)"ウウゥゥゥッッ」



フルメガン・ノイドをボロボロにしてみせようとする2人の総攻撃。完全に圧していた。





…………そして、リアとザラマがフルメガン・ノイドとリップル相馬に戦闘を仕掛ける前のこと。

インティが若をすぐに救出に向かい、さらに向こう側に見えた景色。


「あのデケーのが……蒲生っていう管理人か?でけーな」


パイスー達が辿り着いたところは技術開発局の屋上であった。その場所からでもよく見える蒲生であった。


「桂とポセイドンの前に殺しに行くか。前座には良い相手だ」

「おーい。パイスー。テメェはその2人で我慢していろよ」

「あ?」

「あの馬鹿デカイ管理人はこの俺によこせ。"打出小槌"っつー、体型を調節できる俺に相応しい敵じゃねぇーか」


梁河が自身の能力もあって戦ってみたい奴であった。


「あの野郎は世界を潰す役目を持っている管理人だろ?見るからに力勝負する野郎だ」

「…………ふん。負けんじゃねぇーぞ」



インティと若のやり取りを遠目で確認しただけだが、パイスーはリアとザラマ、梁河を自分の"

キング"を利用して、戦場へと連れて行かせた。生の位置より朴達の戦場の方が近かったため、リア達は先に交戦した。そしてようやく、梁河も蒲生とやり合えるまで距離を縮めた。



「いくぜ」



梁河は人間状態で近づいた。運動する事で大きくなれるその力を最初から使えば、この間対決したアレクのようにデカイ的にされる可能性がある。だが、蒲生の巨体さも考えてある程度近づいてから使っての肉弾戦を持ち込めば狙い撃ちは難しい。蒲生だって同じハンデを背負うのだから。



ムクムクムクムクゥゥ



だから。

この管理人との対決は。自分自身に秘めて、鍛え上げた肉体勝負。



「!巨人が現れたな…………俺と戦うつもりか?」

「巨人のテメェが言う台詞じゃねぇーだろ」

「下がっていてくれ、龍。危険な肉弾戦だ」



ゴジャアアァァッ


ドガアアアァァァッッ



大怪獣VS大怪獣。どちらかが転がったり、吹っ飛べばとてつもない破壊を生み出すだろう。お互い、同じくらいのサイズの敵と戦った事はないだろう。


「……………」


"九頭鳥"を使えばすぐに決着がつくだろうが、そうなれば散っている朴達に危害があるかもしれない。それに桂さんやポセイドン様からの許可は降りていない。これも試練か。


「行くぜぇぇっ!!」

「来い!!」


大怪獣同士の殴り合い。一撃の衝撃が凄まじく、行うための動作だけで伴う破壊は震えさせる。



ゴガアァァッ



立ち技だけではない。空中技だって平然と行う二人、雲を身体で跳ねのけるほどだ。デカイから力だけが目立つかもしれないが、お互いが使っているテクニックにも光るものがある。パワーではほぼ差が無いが、テクニックでは性質に違いが出ていた。

拳闘という技術であれば蒲生。



ガギイィッ


「がはあぁっ…………」


突き、蹴り、投げ、締め。格闘というセンスでは生きてきた年数と鍛えた年数に差がある。戦闘に身を投じている回数が多い梁河でも、その1000倍以上の経験を積んでいる蒲生に勝てるわけがない。奴の鍛錬の拳闘に人間が互角に渡り合うには数億年に1人と言われるほどの格闘センスが必要だろう。無論、そんなものは梁河にはない。あいつにはありそうだが体格はない。



「なめんじゃねぇ!!管理人!!」



バギイイィッ


蒲生の拳闘とほぼ互角に渡り合えている理由が梁河にはある。元々の体格が恵まれている蒲生と異なり、能力で巨体となっている梁河だ。彼は蒲生の締め技と投げ技を封じていた。ザラマとリアに比べればその能力の質は平凡。凡才の天才にも成りきれなかった、本当の凡才。無駄な努力をしていた男だという良い例だ。ざまぁー。

そんな彼だが進歩というか、改良をした。

運動することで体型の大きさを調節できる"打出小槌"。その体型を細かく部品ごとに分けることができるように訓練した。腕という括りではなく、指、手首、肘といったように関節にある部分ごとに調節できる。この細かな体型のコントロールが蒲生の投げ技と締め技をやりにくくし、封殺とさせていた。伸縮自在の速度は十分にあり、蒲生のスピードよりもあることから回避できた。紙のようにヒラヒラと蒲生の攻撃を避けているが、万が一の直撃は即梁河の死亡を意味する。


このクソ度胸。蒲生は拳を交えている状況で賞賛する。



「この俺を相手に怯まない男がいるか」


管理人最大級の体型を持っている蒲生からしたら、ほぼ同じサイズの人間と踏み潰せない、壊しきれない人間との出会いは初めてである。


「俺達にはいっぱいいるぜ。デケェだけじゃ怯めねぇ奴」


梁河の方が回避が多い。手数の関係でダメージは蒲生の方が喰らっていた。だが、このビッグサイズだ。立ちで雲に届きそうな巨大さを持っている肉体の耐久力は想像の上だろう。

能力で巨大な梁河と素で巨大である蒲生(少しは体型操作はできる)。体積が増えれば力は増すが上限がある梁河にとって、耐久力という面では蒲生と大きく差がある。集中を切らし、モロに喰らえば勝負は終わり、危険な回避を続けるのがその証拠。

同じサイズでも強さに開きがある。それを分かっていながら向かう度胸が見事である。少しのダメージと引き換えに梁河のデータを引き抜いた蒲生。


蒲生の巨体が沈み、梁河に足払いを仕掛ける。土地をグチャグチャにする弧を描いた綺麗な蹴りだが、梁河は跳躍してこれを回避する。しかも、同時に攻撃を繰り出し蒲生にダメージを与えようとしていた。



バギイイィッ



並みの相手ならこれで倒れるが、巨体な蒲生にとっては効かないと同じ。


「力が技についてこれていない」

「!」


空中での攻撃と、大地に足をつけた攻撃では後者の方が梁河は強い。欲を出した攻撃を必ず出すと、凡才の慢心を読んでいた蒲生。また、攻撃を出した直後の回避は伸縮自在の能力をもっている梁河では難しいという器量も分かっていた。それは蒲生が相手だからというのもある。並の超人相手であれば梁河は避けれた。並じゃねぇから芯に効く。

残酷に身体に打ちこまれた打撃。



ベギャアアァァッ



天に近いデカイサイズになれても、蒲生ほどの運動能力がない。この巨人の方が持っている肉体、経験、技術が上だと理解できる。無論、強さという一線で見ればはるか格上だと、自分の肉体に喰らった打撃でよく分かる。度胸だけでは迎え撃つだけだった。



ゴゴゴゴゴゴゴ



ついに傾いたと分かるほどの吹っ飛びが見えた。転がって土地や建物を破壊する梁河。


「ぐっっ……!」


たった一撃で流れを呼び込んだ蒲生が倒れている梁河の頭を踏み潰した。二つ目の攻撃で即死に匹敵する攻撃を行える蒲生の動きは強さもそうだが、勝負をよく理解し、相手も理解していると分かる動き。



バギイイィッッ



「頭!!粉砕だ!!!」


流血。大量出血。蒲生の足に梁河の血がベットリとついて、剥がれる皮膚をみたとしても力は緩めない。中にある脳みそが出ない。コイツの中にある魂が抜けるまで力を緩めない蒲生。


「お、重い…………」



今。"打出小槌"を解除したら死ぬ。踏みつけられた状態で体型を変化させるのは死だ。縮みそうでヤバイ。



ガギリィッ



梁河はこの劣勢で感じる。早々にやられちまうなんて、俺らしいかもしんねぇ。ではなく。

蒲生は強い。心の中にある強さと、実現する俺の肉体にある力を持ってしても太刀打ちできねぇーって、俺にはある現実が言っている。天才や怪物と呼ばれる人間達が持たない現実が言っている。俺の現実が言っている。俺の魂から絶対に言えることがある。



メギャアァァッ



俺の中にいる本当の怪物。目指すべき位置の奴と比べればやはり蒲生はデケェだけしか、奴を上回れない。そんなもんだ。テメェと俺は似ている。だが、強さにビビるのは飽きたほどの俺にはお前が怖くない。



「うごおおぉぉぉっ!!」

「!!」



メギイイィッッ



梁河。命を賭けた変型。死の恐怖に怯えていたらそれこそ死んでいた。常に道を開くのは動く勇気。無論、その勇気で閉じる道もある。結果論じゃねぇーか馬鹿野郎としか言えない。



ズルウゥッ



梁河の頭蓋骨は"打出小槌"によって傾斜になるような、非常に奇妙な変型をした。蒲生にとっては平らで踏みやすい頭が突如、坂になり、血で滑った。そして、梁河はこの窮地を逸した。すぐさま起き上がった。


「!」


蒲生にしたら異常。踏みつけ状態から脱しられた事、顔面の皮膚が剥がれている相手がすぐ様起き上がる事、雄叫びを上げる事、闘志を向き出しにする事、拳を握り、この俺に放ってきた事。力強い拳であった事。



「うらあああぁぁぁっ!!」

「っ!」



バゴオオオォォッ



強さでは測定できない野生や執念を込めた一撃だった。逆に蒲生が梁河にぶっ飛ばされ、倒された。唖然とし、魂に気圧された形だった。蒲生の不覚ともとれるが、梁河にそれをさせるほどの威圧感、プレッシャーがあったからだ。



「つ、強さが足りねぇ!!蒲生ぉぉ!!」

「!」

「俺が立ちてぇ位置にテメェはいねぇーー!!今からぶっ飛ばすからな!!」



瀕死の身体が躍動する。梁河は死の淵で手にした力は向き合い続けた最強の男がいたからこそ、得たモノだった。流血し、ボロボロでも彼は戦い続ける。本当の死など忘れてまで……




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