は~~~。これも飽きちまった。
「おい、クソガキ」
それは幼女の粕珠が言ってはいけないだろうって、春藍は思いながら地面に倒されていた。与えられた刑は潰されろだった。
「テメェって生命の性を見た事ねぇーべ?」
「?」
「嫌って思ってもー、運命や摂理みてぇーなもん。持って生まれたなんとやらってのは大切なんだべーーぇ?え?分かる?俺っちが言っている意味?」
ごめん、分からないという顔をしている春藍。緊迫や緊張を感じなかった。
「手っ取り早く見せるとするべー。そこに転がっている人間と、ガラクタもまぁーあるだろうべな」
「?ふ、2人に何をさせる気なのかな?」
リアとインティに近づく粕珠に少し危機感が増した春藍、
「クソガキはその内理解するべか?知った歳べか?経験済み?どっちにしろ、楽しくもねぇー幸運ってのはあるもんだべぇー」
「??」
初めて手に取ったエロ本やらエロ動画やらエロゲーやら。とにかく、まぁーなんでもいいや。思い出すことはできないが、いつからそーゆうのが必要になったか。
『ちょーひーわーいー』
『せーかいらーくしけーい』
天使達がどこから用意したか分からない。春藍には気持ち悪い形の道具だなって思ってみていた。道具にはそれだけしか思えることは分からなかったが、
「え」
「何々?」
『それー脱がしーちゃぇー』
『つける準備つける準備』
『とやー』
『わー!なんだろこの子ー。拘束具みたいなのつけてるー』
『へー、中って人間っぽー』
春藍はそーゆう光景を初めて見せつけられた。
「クソガキィ」
粕珠は春藍の頭を踏みつけながら、この光景を見せ付けた。
「俺っちが管理人なのか?って質問に答えてやるべぇ」
粕珠は本能的に春藍とは相容れないと理解した。そういえばこいつ、確かポセイドンが死体を欲しがっていた奴だと気付いた。だが、もうそんなのはどーでも良い。
「俺っちはなりたくはねぇーべ。かったりーべ。クソガキ」
ムカつくんだよ。インティと戦っていた時も、一つのことに真っ直ぐ向かっていた綺麗な目がむかつく。
「俺っちは知らずに生まれちまったんだべ。誰だってそうだべ?」
粕珠の踏みつけはそこまで強くはなかった。悪戯のような攻撃だった。だけれど、春藍の目に映っているリアとインティの姿は酷くもがいていた。それが本当の粕珠が春藍に行っている攻撃だった。体が震えてきた。酷い寒気とほんの少しの熱を感じた。
「おいおい、目を逸らすのは勿体無い光景だべぇ」
「ううぅっ」
「そそるだべ。どんな奴でもあの表情ー、ええのぉー。あーゆう潰れた幸せを出してる人間」
「止めて!止めさせて!」
「ダメダメ。お前。分かってねぇー。なんでお前も、あの2人も、心臓と脳みそと」
声と口と目と鼻と、イキかけている表情を残していると思っているの?分かってんの?え?楽しそうに苦しんでる様見て分からない。俺っち、れっきとした女も楽しめて。
な・ん・で、お前はこーゆうのを楽しめないかな。男としておかしくねぇー?
「見たくない!僕は見たくない!!」
「いいべぇいいべぇ。本当はもっともっと見てみたいだべ?そーゆう表情と声が良いよぉぉ」
死にてぇーーーって、人に思わせるなんて。なんて気持ちいいんだべ。抜けるぅっ…………。
「そうなのよー。あたちー。苦しんで苦しんで苦しんで、でも笑っているっていう喜んでいる命を見るともーーーーぅぅぅう。溜まらなくて。殺してるよりも楽しいんだべぇぇぇ」
「!」
「あぁ、いけない。お前。目を閉じちゃいけない」
『目ー開けろ!』
『開けろ開けろ』
「や、止めて!見たくない!リアも、インティにももう!!止めさせて」
「それはないべぇぇ。死ぬまで、ぶっ飛ぶのを待つんだべぇなぁぁぁ」
壊れたところを見せられた春藍。心が荒んでいくところが粕珠にはとても美味しかった。さらにそこへ、美味しくなるソースをかけるように春藍に追い討ちを仕掛ける。
『それじゃはっじめるよー!』
『君はどっちが嫌いっかなー』
『痛い目に合うのとー』
『人の痛いところを見続けるの』
『口で早く教えてねー』
『下半身畳折りの刑!かーいし!』
『あー!ちょっと待って、こいつ!両足が義足みたいだー!』
『じゃあ、大切そうな手を』
『壊しちゃおっか』
『びっきびきぶちぶち、潰しの刑でー』
ベギイィィッ
「あうっぅ」
同時に行われる拷問。自分自身が痛みを負い、他人の痛みを見続ける。
「苦しめ苦しめ!!悲壮に塗れろクソ人間共!!!俺っちを幸せにしろ!!胸を焼かせろ!!」
ビールをぐびぐび飲みながら春藍の頭を踏み続ける。刑にはしていないが、気持ちいいからやっている粕珠。
3人の阿鼻叫喚が心にキュンキュン来る異常。正常じゃない心臓と脳みそは生まれ持っての才能。
相容れない個性のぶつかり合いはどちらかの劣等によって、決着がつく。
ザラマ、梁河、リア、インティ、そして春藍。
粕珠の幸せのために五名が倒れ、苦しんだ。彼女が生きるためにそうなっている。それが現実。人間が多ければ多いほど起こりうる事態。個性の反感。
ザーーーーーーー
「ひゃははははははははは!!!踊り喚け!!血も、潮も流してくれる大雨が降ってるんだべーー!バレやしねぇーんだべ!!もっと崩れて死んだ表情で生きてくれべ!!」
「えううぅっ…………」
『しっつもーん!』
『っていうかー、ラッキーチャンス?』
『両手潰しちゃったからー、このまま刑は止めてあっちを見るのを愉しんじゃう?』
『それともどMの精神で電撃ビリビリの刑?』
『雨降ってるから、雷直撃の刑もできるよー!』
『早く答えて君ー!どっち好きー』
『他人の不幸を見続けて、ついでに○○しちゃうのと』
『マゾヒスト魂みせて雷に撃たれるのー?』
『どっちが好きかなー』
春藍の両手は無残な形となっていた。グチャグチャになっていて、"創意工夫"も使えない手にされた。それが恐怖であり、未来まで繫がる傷。自分が浴びるのと…………。
「ぼ、僕は…………」
助かりたい…………
『時間切れー』
「!!」
『じゃあーセットにしよっか。ハッピーセットみたいな』
『雷直撃の刑から行っちゃうよー!!』
「はははははは、早く言えば良かったべなー!男が迷うから行けないんだべ。いらねぇー女はすぐに捨てるのが吉だべ」
粕珠達の表情をよく記憶した。許せない鬼畜だ。ここで死んじゃう。みんな、苦しんで苦しんで。死ぬって…………まともな整理ができる春藍だけが分かった。
『落ちてくるよー』
『頑張って耐えてねぇー!!まだまだ楽しい事あるはずだからー!』
あーー。
これで僕は死ねるのかなって……諦めて締まったような事を思って。
バギイイイィィィィッッ
雷が落ちてきたところまで正確に春藍は見ていたし、聞いていたのだった。そして、疑問はあとからやってきた。
「?」
「がはあぁぁっ……」
『え?』
ここにいる全員が理解できていない。確かに雷は落ちてきたのだが、春藍に命中しなかった。誰に落っこちて来たのか?
瞬間的に身体を焦がされる粕珠…………。粕珠に雷が直撃したと、春藍は気付いた。天使達も喰らった粕珠にも理解できていない。自分はマゾなんかじゃないって粕珠も思っているだろう。
なんでこんなことが起こった?なんでだ?
粕珠には理解できなかったが、春藍は倒れた状態でも。彼女が後ろにいる事に気付けた。
「え」
彼女はまたあの時みたいにいきなりやってきた。黄色の横髪と、クラゲっぽいヘアーで。
「まったく……なーんで!!なんで!あたしのいないところであんたは勝手な事をしてるのよ!!怒ってるからね!!そいつ等と行動してるし!!」
「あ……」
久々に、彼女に怒られた気がした春藍。でも嬉しい声だった。
「でー!!あんたが粕珠ね!!春藍も、リアも、インティも救うにはあんたを倒す以上の事をさせてもらうわよ!!!」
「だ、誰だおめぇ……………」
その言葉に凄くキレた表情を出す。怖い。リアに負けず劣らず怖い。降り注いでいる雨と雷がさらに強くなっているのが分かる。
「ライラ・ドロシーよ!!!このクソガキィィ!!!」