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RELIS  作者: 孤独
"罪滅ぼし"ネクストステッパー編
130/634

粕珠の正体。その全貌


「あっあっ…………」



一分ほど前。


「あっつーーーーーーー!!!ザラマ!!能力を勝手に使わないでよー!!ウチを溶かすつもりー!?あつあつ!!」



ポセイドンの攻撃から逃れたインティであったが、グチャグチャになった城を見てどこを動けばいいか分からず、様子を見ていたところ、ザラマの"リアルヒート"を喰らったというところ。

城の残骸から逃げ、湿地帯の方へと避難したインティ。


「ふーーぅ、助かったぁー!……でも、中で何が起こってるんだろ。それと向こうも……」


どーゆう状況かインティの視力でも見えないが、……戦闘が行われているのは分かった。剝き出しで誰もこっちくんじゃねぇって、殺意のシールドが見える。



「あれ、パイスーだよねー。あいつが苦戦する奴なんて誰がいるのよ」



パイスーと互角に渡り合う相手に興味を示すも、今はザラマ達の様子を優先するべきだとインティの身体は動いた。"リアルヒート"の範囲から逃げ切った後、能力が解除された事を確認した。


「……倒したのかな?」


疑問に思い、ザラマの元へ向かおうとした時だった。ザラマ達と同じく、インティにも突然。


『いやー。間に合わなかったよ』

「え?」

『粕珠ちんがおじさんとスパッツの青少年に刑を与えたから、終わったよー』


天使が上着のポケットから出現した。気配で周囲を探れるインティもまったく気付かずにそんなところにいた。インティは瞬間、その天使を"韋駄天"で跳ね除け、さらにダッシュをして逃げてみせる。雰囲気がヤバイと勘が言っていたからだ。

速さで自分に追いつける者はいない。


『わー!速ーい!これはスピード違反かっくて~い!』

「!?」

『どんなに走っても無駄だよー!楽々追いつけるから』

「な、何こいつ!?」


この日、スピードだけでは通用しない相手を思い知ったインティ。


『それじゃあ、あなたの刑を教えるよー!』

『そうだねー』

「っていつの間にか増えてる!!?なんなのよ、あんた達!!」

『両足チョンポの刑にしよー!』

『速くて気持ち良い風を受けるけど、ちょっと寒いね』

「!?」


天使達がインティに刑を告げる。刑を良い渡されたからといって、この速さを継続していたらできるわけがないと思っていたが。


『ほらぁ、もうすぐ始まるよ』

『覚悟するんだよー』



ドッッ



天使の微笑みを見てから、足が縺れた感じでインティは転げた。剣や槍が出てきたわけじゃない。それだったら絶対避けられる。この天使が付いてきているのと同じ原理でやっている攻撃。


「ったぁっ……」


刃は見えないのに、インティの右足に大きな切傷が現れた。


『まだまだー』


しっかりとインティは自分の両足を見ていても、避けれず、見れずに。刀が突き刺さった痛みと事象が引き起こされる。絶対にダメージが来る攻撃。


「ふぁっ、ぁっ…………くぅっ」


要の足を潰されてしまっては助けてもらうのは不可能っぽいとインティは思っていた。


『まだまだ刑を発行しようねー』

『何がいいかな、何を喰らいたい?』

『決めてもいいんだよ』

「!っく…………」



バギイイィッ


「うあっ」

『足の切傷は飽きたと思ったから、殴打にしてみたよ!』

『今度は溶かしてみようかな』

「ぐっ…………やばすぎでしょ、ウチ……」


こんなとこで死ぬかも…………。






インティとザラマ、梁河が粕珠の攻撃を喰らい、やられてしまった。頼みのパイスーもまだポセイドンと交戦中。姿を現さない粕珠に静かに葬られる"黒リリスの一団"達。

粕珠が繰り出す攻撃のヒントは3人共、なんとなく理解できたが伝える口や状況ではなかった。もしまだ2人が無事だったのなら、粕珠を獲るためにヒントを伝えなければ全滅する。



「さっきの爆発や、……ザラマさんの熱も凄かった~」

「そうですわね。ワタクシ達はどうやら遅れてしまいましたわね」



ポセイドンの攻撃からも、ザラマの攻撃からも耐えてみせた春藍とリア。


「ですが、春藍くん。あなたは男だというのに女性に助けられて恥ずかしくはなかったのですか?」

「うっ…………」

「先ほどの爆発時はワタクシの背に隠れ、ザラマの時はワタクシに背負われていましたわね。なんと情けない小動物なのですか?」

「ううぅっ……そーゆうのは黙っていてよ……」

「男として恥ずかしいですわよ」

「こ、これから!僕は強くなるつもりだから!その時は、リアを助けられるくらいに成長するから!」

「うふふふ……言ったからには守っていただきたいですわねー」



春藍とリアはザラマ達と同じ地下にいた。とはいえ、別ルートであり、ザラマ達とは結構離れた位置にいた。


「ひ、広い地下だよね。色んな部屋がある…………」

「調べるのも構わないですが、ワタクシ達の目的も忘れずにして頂きたいですわ」

「うーん、でも。リアだって管理人を探しているんだよ」

「そうですが……明らかに人がいないところを入念に探しませんことよ」


春藍は標的の粕珠をソッチのけにして、この地下で行われていた実験試料に興味を抱いていた。

"科学"の分野ではなく"魔術"の書籍が多く並んでおり、解読はできなくても研究意欲が沸いてくる。

春藍の行動に少々呆れていたリアであったが、春藍がたまたま手に取っていた書籍を横から見た時。自分達が患っている"RELIS"に関する資料だと知った瞬間。


「!こ、これは…………」

「?」

「あの、あの、……クソ忌まわしい、"RELIS"の研究資料ですの!!?」

「リ、リア……」


鬼の表情に変わって破壊をしてしまうのかと思ったが、リアは乱暴に手当たり次第に資料室の本を取り出し、漁り始めた。


「"RELIS"の治療法はどこにあるのよ!!その責任者!!」

「?リア……」

「ワタクシに"二度目"の、悲惨な人生をさせた!クソゲス野郎!!!ぶっ殺してやる!!」



春藍にはどこかで聞いた事がある単語だった。だけど、意味までは分からなかった。



「ワタクシは!!あれだけで良かったのよ!!なんでこんな身体で生まれなきゃならなかったのよ!!なんで、ワタクシだけ!!パイスーも、ザラマも、梁河も、インティも、若も少しだけ良かったって思っていられて!!ワタクシだけ忌々しい思いをしていなきゃいけないの!!?」



ご乱心のリア。目的を忘れてそれに集中してしまいそうだった。見る資料見る資料。"RELIS"の成果と現状報告ばかりで腹が立ってくる。"RELIS"になった者はずーっと"RELIS"でいなければいけないのか?そう思うとふざけんなって思いが倍々に来る。


「あああああああ!!!」


終いに資料を全部撃ち殺したリア。



「どうして、ワタクシはいつの間に"RELIS"に掛かってしまったのよ。嫌よ……。ゆっくりと音楽を聴いて、コーヒーを飲んで、友達と遊んで、屋敷で過ごしていたかったのに……」

「リア……………」


女座りをして疲れた声を出すリアに春藍は。先ほどから名前を呼ぶことしかしていない。

事情はまだ良く分かっていないけれど。


「まだ探す場所はあるんじゃないかな?」

「………………」

「あ。僕には"RELIS"というのはよく分からない。けど、その…………まだ、……リアにはまだきっと。良い事が待っているはずだよ」

「……良い事って何かしら?」

「うーん」

「分かってるわよ。そんな馬鹿な問いをして立ち止まる人間は、結局ダメなのよ。ここで諦めるほどじゃないわよ」



リアは立ち上がり、少し見せた涙を拭いた。なんだか辛いことを思い出したようだ。


「行きましょうかしら」

「うん」

「インティ達には内緒ですわよ。あなただから見せたのですわ」

「分かってるよ」


資料ばかり並んだこの部屋を出て、粕珠を捜しつつ。春藍とリアは"RELIS"の資料を探し始めた。リアが求めているのはそれの解除方法だけであり、どうしてできた経緯や生まれた原因には興味がないようだった。

向かう方向は決まっていない。決まるわけがない。ザラマの"リアルヒート"が解除されてから20分ほど経過し、6つ目の部屋から出て次の部屋を探しに行こうとした時だ。


「あれ?」

「あら?」


お膝の皮膚が擦り剥けて血を流し、緑髪でとても可愛らしいエプロンを身に着け、泣きながら幼女が春藍とリアに見えた。


「ええぇぇ~~~んん、たちけてぇ~。お母さ~ん!」




「子供がいる!」


「!……忌々しい」


春藍とリアはその子に駆け寄った。そして、幼女の向こうには20名以上の人間が倒れ、亡くなっていた。魔物に襲われたとは良い難い猟奇的な死に方であった。


「あたちー、あたちー……」

「だ、大丈夫だよ!君の傷くらい、僕が治療するよ」

「人間というより……ここに連れて来られた罪人達のようですわね」



春藍は幼女の傷を治療しようと、お膝に"創意工夫"を翳した。リアは人間達のやられ方にここの管理人に憎悪を抱いたところ、



「クソガキ、気安く女に触れるんじゃねぇーべぇ」

「へ?」



リアも気付けなかった。優しさを向けた春藍に襲い掛かった悪魔が近づいた時、ようやく気付けたところ。



グジャアァァッ


「うっ……あっ…………ううぅっ」

「えひゃはははは、何々?テメェ等、男女ラブってんじゃねぇーべよ。ここは遊園地じゃねぇーべよ」

「あ、あなた。何者!!?」


春藍は腹部に強い衝撃を受け、吹っ飛んで壁に激突した。そーゆう刑を浴びせたからだ。幼女は笑いながら、エプロンのポケットから缶ビールを取り出してリアの前で空けて飲んで見せた。

そのふてぶてしいっつー枠じゃなくて、どう見ても幼女がビールを堂々と飲み、か弱い男の春藍を軽々とふっ飛ばし、幼児の声で吐かれる言葉はどう考えても幼児であってたまるかである。

しかし、目の前にいるこのクソ可愛いエプロン幼女なのだ。

春藍がやられてからスイッチが入るのが遅すぎて、


「ぶぅぅぅぅ殺すぅぅぅぅ!!!」

「ひゃはぁ?」

「粕珠ああああああぁぁぁぁ!!!!」



リアは身体から兵器を取り出し、幼女の姿をしている粕珠に発砲した。




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