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RELIS  作者: 孤独
”不信な森”イビリィア編
13/634

鍛冶屋の改造計画

ライラとネセリアはこの街の医者に診てもらったが、


「この薮医者が!」


医者とは名ばかりにただ治療薬を持っているに過ぎないど素人。本当の医者は先日、魔物に食べられてしまったとか、この街はある意味終わっている。管理人は何をやっているんだと、ライラはちょっと思った。

この街ではネセリアは完全に治療できない。春藍の見立てから、良い素材もないそうだ。

こんなところ早く飛び出した方が良い。

こんな森ばかりで虫も多いこの世界は嫌だった。



「ライラ、酷いよ。彼はまだ、始めたばっかりだって言われてたじゃないか」

「春藍は何を言っているの!?命を扱っているの!失敗しました~……で済むかあぁ!」

「ぼ、僕だって彼と同じような者だったよ」

「だから今、私達はちゃんとした奴に診てもらいたいのよぉ!誰のせいだと思っているのよ!」



ライラが鬼のような顔をして春藍の胸倉を掴んでいた。

期待はできないと思っていたが期待外れ過ぎる。昨日の野宿と大差ないかもしれない。

プンプン怒りながら民宿に戻ったライラ。そして、彼女に怒られて半べそをかいている春藍。ネセリアは結局自分の体がどうなのか分からないのだが、だけれど、不思議な物ばかり見れて楽しそうな顔をしていた。



「アレクはまだみたいね。ったく。今日はここで過ごすとして、明日はどう動こうか考えないと」



とはいえ決まっている。この世界を出るための場所探しだ。ここは森が多く行える場所は早々見つからない。もう一度山に登った方が良いかもしれない。とにかく、何もない広い場所が望ましい。



「異世界ってこんなにも変わったところなんですね~。なんだか見た事ない物ばかりです。自然というのが沢山ありますね」

「そ、そうだったね。火を起こすのにコンロではなく火打ち石というのを使ったり、木造の住宅が並んでいた。僕達の世界とは全然違う場所だよ。食べ物だって自給自足というし」

「ここに来ていた証拠に何かお土産が欲しいです。春藍、ライラ。一緒に探してみません?」

「僕は良いよ。何か面白そうだよ。良い物を発見したいなぁ」



ライラの考えている事とはまったく別の能天気さを見せるネセリアと春藍。



「勝手に行ってなさい!ただし、夜まで戻ってくる事!街の人々に迷惑を掛けない!いいわね!!」

「はーい、ライラちゃん」

「ライラはお母さんみたいだ」


ライラの怒鳴ったような言い方に春藍は胃を痛めているのか、手でお腹を抑えている。ネセリアは門限を設定されたとしても子供のような楽しそうな笑いを零しながら、再びに外に飛び出した。旅人らしいグッドなスマイルだと。

それにひきかえ、ライラと春藍は全然違う顔をしている。アレクもきっと違うだろ。

ネセリアの純粋さが時に、みんなの笑顔になるのかもしれない。


「えへへへ。工場とかがあれば観に行こう」

「工場かぁ、あるのかなぁ?」



実に女の子らしくない。こんな大自然の森に囲まれた場所だが、もっと別に女性らしさを出すような、場所や物を探さないのだろうか?

2人の製造員は物珍しそうに街を歩いていた。ネセリアがキョロキョロと、楽しそうに辺りを見渡しているのだから、春藍はネセリアを見失わないよう、心配しながら傍にいてあげた。


「あ!あれはなんだろ」

「なに?」

「うーん、なんて読むのかな?」


春藍とネセリアが見た文字は"鍛冶屋"。

どんなところか、文字や言葉からは伝わらなかったが、小さくとも構える住まいと、中から聴こえる音と鉄のような匂いが2人の感覚に馴染みがあると意識できた。


「入って良いのかな?怒られるかな?」

「ら、ライラじゃないんだから。大丈夫じゃないかな?」


確認し合ってから2人は同時に扉をソロ~っと開けてみる。

店の中は酷く言えば質素であるが、何かを製造するという観点から見れば十分なくらいの設備があると入っただけで2人は分かった。


「い、いらっしゃいませ」


しょぼそうなカウンターがあり、看板娘らしき人物がおどおどしながら。異世界からやってきた二人を見て言っていた。自分達もそうだと、春藍達も彼女と同じ気持ちになってしまう。恐る恐るネセリアは訊いてみた。


「こ、ここは何を作っている場所なんですか?」

「こ、ここですか?し、死んだ魔物達から使えそうな物を剥ぎ取って、その、剣や盾、矢を作ったりしてます。魔物に対抗するための武器を作っています!」

「武器?危険な物を作っているんだね」

「ま、魔物は人間より強いですから!これが無くてぇは魔物に太刀打ちできません!」


声を裏返したりして言ってくれる看板娘の緊張がとっても伝わっている。逆にそれが2人の緊張を解いてくれた。少しだけ異世界にいる時間が長かったからだ。


「どーゆう風に造っているか見て良いですか?」

「僕達は"鍛冶屋"とは違うんだけど、別世界で製造作業をしてたんだ」



カンカーンッ



春藍達も武器を作った事はある。剣や槍など、当時は突き刺すや斬るに特化している物を作れと言われて、造っていただけに過ぎなかった。その先で誰がどのように扱うか、お客様という存在を春藍もネセリアも見た事はなかった。

イビリィアの鍛冶屋の設備は、フォーワールドに比べて原始的で手作業である事が多い。量産する事には向いていないが、最低限の素材をフルに活用できる製法。これだけしかなく、質も悪いときた中で凄い職人の魂を感じ取ってしまう。


ピィッ


「凄い」

「なんだ兄ちゃん!武器に詳しいのか!?」

「いや、興味があっただけです。お邪魔ですか?」

「かまやしないよ!こんな貧相な鍛冶屋に興味を持ってくれる人は嬉しいよ!」



剣の切れ味を試さなくても、石なんて軽く切れそうだ。鉄以外に魔物の外殻を交ぜており、刃こぼれもしにくい、これほどの業物は造ったことがない。道具はあれど人の手が多く込められているとこれほどの耀きを見せるのかと、春藍はジーンッと胸を撃たれていた。

製造業を務めていた物。やっぱり物に魂を込めるというのは至上の喜びであり、それが手にとって温かさが伝わると来たらこのような道を進んで生きたいと思い返せる。



「へー、こんな風に造っているの」



ネセリアは造られた物よりもどのように造られているかという工程や道具、素材に興味を示していた。

特に魔物の素材というのはフォーワールドでは滅多に転がってこない。触ったり匂いだけで色んな性質を持っていると感じていた。


「春藍、ちょっと手伝って」

「ん?何をだい?」

「私達もお礼に何かを造りましょう」


鍛冶屋の道具なんて使った事はないが、その作業工程については後ろで楽しく見学させてもらった2人。

自分達の技術でも可能といえば可能なのだが


「いいですか?」

「まぁー。かまやしないけど、壊さないでくれよ。この設備はここしかないからね」


良いようだ。凄い優しい人だ。


「ただ条件を一つ良いかな?」

「なんですか?」

「大した事じゃないんだが、君達もこーゆうことをしているんだろう?だったら、技術交流ということで一つ何かタメになりそうな技術を教えてくれないかな?」

「武器を専門に作った事はないんですけど」


ここの技術より凄い鍛冶技術なんて持っていない。春藍は少々諦めようとしていた顔を出していたが、


「別に武器じゃなくても良いさ。何でも良いよ、君達の反応からしてこの設備。少々しょぼいんだろ」

「ま、まぁ。僕達には馴染みがなくて」

「春藍ならもっと面白そうな事ができそうだよ。"創意工夫"もあるじゃない」

「僕に振らないでよ、ネセリア」


困った顔をしてから春藍はまた深く周囲を見渡した。

汚れが目立つので後でネセリアの"掃除媒体"で綺麗にしてもらった方が良いと考えてから、目に付いたのはグツグツと鳴っている大きな窯だ。鉄や魔物の素材を一度溶かすのだから、凄まじい熱を感じられる。

だが、アレクとは違う原始的過ぎる熱の出し方は若干の無駄が感じられた。



「窯の形は以前からこれなんですか?」

「ああ、そうだが」

「これを少し、形を変えても大丈夫ですか?」

「えっ、窯をかい?」



鍛冶屋の親父は目を丸くしてしまった。窯を変えるというのは今まで身についた感覚や景色が違って来てしまう。だが、春藍はこう続けた。


「この丸みのある窯は老朽化が始まっています。熱が使うたびに徐々に外へ逃げていっている。熱は閉じ込めた方がより綺麗に早く、より高い温度を出せるので、ここを修繕しましょう。それから生産性を向上させるべく、窯を若干大きくしましょう。それから冷却装置も一台で同時に二つこなせるように」



突如閃いた修繕案は瞬く間に、コストや期間などを無視している自分の理想の"鍛冶屋"の製作論を語らせた。鍛冶屋の親父は唖然とし口を広げていた。ネセリアはそんな春藍を見て聞いていると、彼の楽しみがこちらにも届いてくる。

無理難題を放っているが、彼の顔はとっても楽しそうな顔であり、求められている物をトコトン追求しようとしているのが春藍の矜持と楽しみ。

一番、"科学"などに触れていると楽しみ、誇りを持っているとネセリアは思っている。


「ちょちょ、あんた。いきなりそんな事を言っても、お金も素材もねぇーんだから。勘弁してくれ、発想はありがてぇけど」

「え、……あ!す、すみません。ついその、僕の癖で」


鍛冶屋の親父に止められた事に少しだけムスッとした顔を出したが、我に返ればあまりにもオーバー過ぎるデスマーチが発生している事に気付いた春藍。自分にはアレクのようなチームワークというのができない。彼はあくまでその道のプロであるだけ。


「……………」


ライラはどう思うだろう?

僕がここに入れる時間、ここにある材料で補修、改造。自分の心と気持ち、言葉が口にしたんだ。悩んでいる春藍の顔にネセリアは優しく触れて教えてあげた。



「大丈夫、私も手伝う。二人でやれば理想は叶うかもよ?」

「ありがと、じゃあ、汚れを"掃除媒体"でまず拭き取ってくれないかな?」

「分かったわよ」



◇     ◇



アレクが別行動をとってから3時間。

陽が沈みかけてくると心に何かがやってくるという胸騒ぎを感じていた。城壁の上に立ち、森と山しか外には存在しない景色なのだが、薄暗くなるほどに不安というのが現れる。

そして、アレクだけでもなかった。

先日の遠征での生き残りや、たまたま遠征に参加しなかった狩人達にもその胸騒ぎを感じていた。目に映るのは森だけだが。


「魔物が大軍を起こしたか」

「でしょうね。ホントの遠くから、向こうの向こうの向こうにある山から雄叫びがしている……気がします」



物凄く遠くにいる魔物達を索敵する手段はこの世界にはない。

人間の視力と数が索敵できる手段。あまりに頼りない。だが、根拠が存在しないが戦場での勘というのも大切な物だ。



「一体、森で何が起こっているんじゃ」

「まさかこの街へ襲ってくるのでしょうか?狩人が不足しているこの状況で」

「無くはなかろう。奴等にとっては好機とも言える」



狩人達の話を横から聞いていたアレク。

タバコに火をつけ、外を眺めながら一通り仕入れた情報で整理してみた。

なるほどなるほどと、頷いてしまう。

ライラのような次を考えているわけでもないし、春藍やネセリアのように楽しんだり知ろうとするわけでもなかった。推理小説を読む感覚でこの世界の情報を埋めていた。

"イビリィア"という世界での管理人の存在は人間を管理する存在ではない。森や山に生息している魔物達を管理する存在なのだ。街の者達が知らなくて当然だった。

家畜でもないし、野生でもないし、養殖でもない。自然の恵みという前向きに思えるクソッタレな言葉の搾取が正しいだろう。ここの世界は魔物を軸とした産物としている。そして、人間達が最高の肥料として魔物達に染み渡っている。



「ふはー」



"フォーワールド"でもそうだった。そこで造った物は"フォーワールド"でそのまま残るわけがない。管理人達の下へ送られ、異世界へ流される。そして、異世界から"フォーワールド"にはない物が送られる。それがお金じゃないホントの報酬だ。生命を繋ぎ、楽しみ、笑い、悲しむ等価交換。

差別のない物々交換というのを管理人だからこそ行える。人間のような利を求めている計算がないからだ。生存と繁栄のための犠牲を計画的にサイクルさせている。



「ほーぅ」



アレクは静かに宿屋に戻る。この世界は少しだけつまらないと感じた。

自分の世界がやっぱり一番と思えたのは、旅行から帰った時我が家のお風呂に浸かった時に口走ってしまうそれと同じだろう。

まだ、アレクにとっては一つ目の世界だというのに。



ギイィッ


「!アレク!春藍とネセリアはどうしたの!?」

「なんだ突然」

「あいつ等、この街を回りたいって言ったから行かせたけど。まったく帰って来ないのよ!何してんのよ!ホント!アレク!あんたもギリギリ過ぎ!」


帰る場所に入った瞬間に怒声を喰らうとは思わなかったアレク。そういえばお前がいたなって事を心の中で呟いてしまった。

怒るライラを通り過ぎて、宿屋の窓越しに立ってタバコを吸って流すように話した。


「お前、あいつ等を心配する柄か?」

「な、何よ!」

「こんな世界に長くいる必要はないって感じているなら、さっさと置いていくのも有りだったろ。春藍の治療が信用できない理由もあるが、俺の目から言わせてお前は絶対に無事だ。ネセリアが危ないだけだ」



アレクは春藍とネセリアの2人とは長く付き合いがあるから、そーゆう断言ができる。だが、ライラはそれができなかった。なのに春藍達を見捨てない。感情というのを抜きにすれば、春藍達を見捨てるくらいしそうだった。

1人になったライラはとても好都合だったはずだ。

人間ってのは面倒な種族なんだなって、アレクはちょっと思った。ライラはアレクに突っ込まれた事に髪を掻き乱しながら何かを考え、苛立ちを見せていた。

アレクはライラの様子を見て



「探しに行くか、ライラ。何処にいそうか検討はつく」

「そうね、心配だしね」

「そんな顔をする必要は何処にもないぞ」



アレクとライラは陽が暮れてしまった街に再び出た。



「ねぇ」

「なんだ?」

「あたし、アレクとはどっかで会っている気がするのよね」

「有り得ない話だろ。世界が違うんだからな」

「ごめん、可笑しなことを言ったわ」



ライラの脳裏にちょっとだけ過ぎったのは、こんな光景が見えて聴こえた気がしたから。仲間なんていない。けれど、それは言葉の中で思っていて心はきっと繋がっていた。

巻き込んでしまった三人は自分の責任と力不足でやってしまったのだ。これを守れずに、もっと大きい大切な存在を守るなんてできるか。

命懸けで成功するのか分からない。管理人ですら諦めている問題なんだ。小さい事もできない自分が大きな事をできるわけがない。


桂が「止めろ」と何度でも言っていたが、やらなくてどうする。

今もどこかでもしかすると、世界の一つが崩壊してしまうという環境だというのに。なぜ見過ごせる。なんで対策すら取らない。


『いずれ全世界に来るんでしょ?』って訊いたら。『ああ、必ずやって来る。受け入れろ』って桂は言っていた。無限の時間なんてありえないけど、それを受け入れろってほざける管理人の思考が許せなかった。

管理しといて、無理だと分かれば見捨てる行為は、動物をただ飼っているような奴等に思えた。

とても長い間、彼等に管理されていた人間はそのような扱いだと知る者はほとんどいない。



「春藍やネセリアが」

「!」

「戻ってきたら、話したい事があるの。昨日はそれどころじゃなかったでしょ」

「なら、早いとこ連れ戻さないとな」



アレクの足は自然と真っ直ぐに"鍛冶屋"の方へ向かっていた。そこが自分達と同じ匂いを一番放っているからだった。自分が賭けているような、作り出すという魂の匂いがアレクには分かった。

ただの勘でしょって、ライラはアレクを怪しく睨んでいた。

外から聞こえてくる大工事の音と、良い働きをした汗の匂い、集中している時に出ている無言の熱気が直感を確信に変えた。扉に手をかけて、すぐさま呼んだ。



「春藍!ネセリア!いるんだろ!」

「って」



中に入ったアレクとライラ。目の前にはこの店の看板娘が震えながら、店番をしていた。そして少しだけ後ろに視線を送っていたのに気付いた。そして、音も匂いも看板娘の向こう側からしている。


「な、な、何か御用ですか?」

「後ろはどうなっているんだ?」

「あたし達は、春藍とネセリア。ここに入った2人を探してるんだけど。ついでに連れて帰る」



ギイィン、ギイィン



「改修工事か。春藍め、俺も交ぜろ」


アレクは先行して、看板娘の小さい制止を無視してさっさと奥へと行ってしまった。

奥にいたのは口をあんぐりとしながら、改修や改良、清掃などが目の前で起こっている高速の出来事に意識を失っている鍛冶屋の親方。

それから熱意のある面と遣り甲斐を吐き出している笑顔で作業を行っている春藍とネセリアの姿。声を出しても、当然届かないと分かる目の色は真剣だった。


「良い仕事をし過ぎだぜ、お前等」


悪いところをとにかく直す。それも徹底的な志や目標は半端者の気持ちを奪い取る。今の鍛冶屋の親父はそんな半端者だろう。

飛び抜けた力と技術を持っている二人は人のために。物のために。必死に成果を出していた。



「ほー」



窯の老朽化の修理か。特別、使えそうな素材がねぇのに春藍の"創意工夫"で、持てる限り良い素材に加工してから交換か。窯の形も改造か。無駄なところを省き、使える範囲を大きくしている。冷却装置の改良はネセリアが担当か。


アレクは少し傍から部下達の仕事を見た。こーゆう事をしたのは2人が入ってきたばかり以来か、どちらも手も知識がまだまだ甘かった。指導した二人の成長をこのように見たのは初めてだったと思い、しばらく手付きを見た。よく成長したもんだと心の中で喜べた。そしてまた、まだまだ自分と一緒に上へと行けると思える。



「手伝うぞ、春藍」

「!ア、ア、アレクさん!」

「三人でやれば早い。一通り終わったら、もう終わりだからな」



アレクも加わって、鍛冶屋の大工事。それは晩くまで続いて


「ちょっと、あたしはあんた達に話したい事があるのに」


一体いつになるのやらって状況になって。ライラも、唖然としてずーっとボーっと。凄い速度で部屋が変わる様子を見ていた。

三人掛かりで鍛冶屋の修繕、改造は夜遅くに終了した。その疲れでネセリアと春藍はダウン。アレクと一緒に春藍とネセリアを担いで宿屋に戻った。くたびれ損をしてしまったライラもすぐにドッと眠ってしまった。アレクはタバコを吸ってから、一眠りしたという。



◇      ◇




その夜の間に一人の人物がイビリィアに2人の異世界人を連れて来た。

それを待っていた黒いオールバックに獅子の刺繍が入った男は、戦いの激化による楽しみを抱いていた。少し前に魔物の大軍を蹴散らしていた男の仲間。

やってきた二人の間に一人。長着にズボンという変なファッションの優男は、彼に声を掛けた。


「パイスー。ザラマと梁河を連れて来たよ」

「みりゃわかんぜ、若。2人共、腕を上げたようだな」


サングラスをかけ、額に斬られた傷があるオレンジ髪のおっさん。ザラマは礼儀良くパイスーに感謝を込め、頭を下げた。


「俺がお前の力になれるなら、どこでもついていくぞ。パイスー」


対して、梁河と呼ばれる茶髪の半袖シャツととても短いスパッツを履いた青少年は、常に何かにイラついているかのような顔をみせていた。男がスパッツって、変態青年やないですか。


「ザラマ。くだらねぇ事をほざくな。こいつの力になるため?は?勝手に呼び出して、随分ともうお楽しみしてんじゃねぇのか?あ?カスみてぇな、目を向けやがって」

「お、落ち着け梁河!どーどー」

「離せ、若!俺はテメェなんか認めねぇー!その気になりゃ、俺がパイスーを潰してやる。上から目線をしやがって」


外見に反して、キレやすい一面を浮き彫りにする梁河。彼を止める若も必死な顔だった。

だが、パイスーは笑みこそ見せないが、


「頼りにしてるぜ、梁河。テメェの闘争本能は前々から好きなんだよ」

「!、いつかぶっ殺死という形で後悔させてやるよ」



四人の、この世界とは違う奴等は何を企んでいるのかは、まだ分からない。


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