パイスー VS ポセイドン
ヒューーーーーー
光と音は届いた。
「何?」
「ん」
多くの連中はポセイドンが発したミサイルに気付いたのだが、それに身体が反応する事ができたのはパイスーとインティだけだった。
「ちょっ!」
インティは"韋駄天"で逃げようとするも、城内では逃げれる範囲に限りがある上に爆発まで避けれないと判断した。安全な場所なんてあるか分からないが、つーか。考えている間にミサイルは城へと当たり、この城を揺らし、爆炎を起こした。
ギラつく光が皆を襲った。魔物達は容赦なく焼かれた。失った。壊された。そして、死んだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
跡形もなく。誰も残させやしない。破壊の極みと末路を見せ付けられる。
ガラアアァァッ
「城は消えたか……」
ポセイドンの言葉通り。インティが1分くらい掛かるほど遠くある巨大な城が、わずか1分でなくなるほどの徹底的な破壊。魔物達の残骸の腐臭など軽いレベルの、残虐な光景と臭いが広がっていた。血の味を知らず、絶叫の表情すら見えない距離からの総攻撃。
「!……生体反応があるな………………ふっ、8つとは優秀だ。一人は粕珠、もう1人は例のパイスーか…………」
トドメの集中砲火と行きたいところだが……まだ準備が終わっていない。それにこんなにも離れていても、何かが近づいて来ることはポセイドンには分かった。
「巨大な瓦礫か?品のないことだ……我にいくつも飛ばすんじゃない」
巨城からポセイドンの方へと投げつけられた巨大な瓦礫。ここまで投げ飛ばすとは大した能力だが、つーか。当然だが……ポセイドンが動かずとも当たらない瓦礫だ。
ガジャアアァァッ
「!」
ポセイドンを通り過ぎるいくつもの瓦礫の上に乗っている獅子達。瞬時に地上へと降り、ポセイドンへと襲い掛かった。少し驚いたが……それは
「少しは頭が回るか」
【ガルルルル】
見下したという意味での驚き。ポセイドンの余裕はまるで消えない。攻撃手段を持ち合わせていたのは見事だが、手段だけで達成できるほどポセイドンの首は甘くない。
ポセイドンは千発は撃てるミサイルの発射台の次に小型の拳銃を取り出し、空へと発砲した。その際の発砲音は奇妙な音が鳴り、ポセイドンに襲い掛かる獅子達の動きが乱れた。
人間以外の生物に有効な行動や統率を乱す科学だ。
無論、生物に向けて発砲しても十分な威力がある。射撃の腕だって一流であるポセイドン。(アシスト装置がついているけどね)
パイスーが頑張って飛ばした"キング"達だが、ポセイドンにはまるで通じずに銃殺される。多少の時間稼ぎでしかなかった。
「もうお終いか?猫共」
ズズズズズズズ
「!」
「さっきの爆破はテメェがやったんだなぁ。おい」
「パ、パイスー…………こいつ。やばいぞ。粕珠の比じゃない……」
多少の時間稼ぎで、若の"ディスカバリーM"が使用できる時間を作った。彼を通じてパイスーはポセイドンとの間合いを一気に縮めた。
「最初からこれ使って城に入れば早かったんじゃね?」
「た、ただスタート地点の近くにポセイドンがいただけだ!観たろ!一回、僕達は外の世界に行ってからまた戻ってきたんだよ!(分かりやすい解説だろ!?)」
「……そういえば、もう1人いることを忘れていたぞ。空間移動の類を使う奴か…………」
城から遠く離れたところで、この戦いの大将同士ではないが最も主力の存在がぶつかり合う。
並の身体能力と危機回避能力しか持たない若はパイスーから離れて、とにかく見守る。やれることと言えばパイスーの足を引っ張らないことだけだ。
パキパキと拳を鳴らしながら、黒雲の空が揺れるほどの殺意を放つパイスーと。体から滲み出る感情は静かだがどんな手も使い、身体に血が流れ出てもいい冷血さを出すポセイドン。
「テメェはハーネットをぶっ殺した野郎だ」
「…………」
「なら、俺が"まずは"ハーネットの弔いとしての、ここを戦場とさせてもらうぜ」
「…………我は残念だ」
「なんだと?」
「桂と同じ程度の貴様を倒しても、嬉しい実験結果にはならんなぁ」
「その余裕が命取りだぞ、コラァ」
「貴様は頭が悪いな。天に立つ我の理解が届かないか…………」
ポセイドンの底はまだ見えない。
「"科学"こそ、この世で最も優れた存在なのだ。我が貴様に勝っているのは当然なのだ」
ポセイドンはなんとパイスーとこの睨み合える間合いで、取り出したのは剣の形をしている"科学"だった。"超人"と"魔術"のスタイルを同時に使えるパイスーに、接近戦を望むなんて信じられないという顔を出した若。
「後悔した時には死んでるぜ、ポセイドン」
徒手でパイスーもポセイドンに挑む。