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RELIS  作者: 孤独
"罪滅ぼし"ネクストステッパー編
123/634

黒リリスの一団、質問タイム。


春藍がここにやってきた時。

タドマールのロイとインビジブルが住んでいた古城に良く似ていた建物に辿り着いた。窓から外を見ると、広大な海が広がって崖の上に建てられていることが分かった。



「…………………」



自分が来た後、アレクさんにやられた梁河を治療し、その後に来たパイスーも治療した。2人共無事。良かったと思っているけれど、アレクさんは良い顔をしないって心の中で分かっていた。



「…………………」

「どうしましたのですか?浮かない表情ばかりですわよ」

「!リア……………」

「若から聞きましたが、望んで来ておられたそうですわね。ワタクシもあなたのような可愛い子はペットにしていたいと思っておりましたが」

「あはは…………。ちょっとね」



みんなにはちょっとごめん。



「リアも、パイスーも、色々な人と話したくて。けどね。……その」

「…………」

「いつも同じ視点でいたら分からなくそうだったから、見方を変えてみたくてここに来たっていうか」

「つまり、不倫ですわね。分かりますわよ」

「え?」

「クラゲにメイドおっぱいに、とまぁ色々といましたが。ワタクシとインティに入れ替えてみたというわけでしょう、あなたの不倫相手では少々残念ですが、それでも萌えるものはありますわね」

「あははは。……僕、そーゆうのはちょっと分からないで……す」



黒リリスの一団の中に入った春藍はさっそく気に入られているリアから沢山の声をもらった。少々タジタジ…………。

そんな春藍にまた話し相手が一気に3人増える。



「"月本"以来か……。春藍慶介…………で、本当に間違いないんだな」

「そーだよ!ウチはタドマール以来だね。ゴールゥンでは一緒に捕まったし」

「……?ちょっと待て、初めて会ったのは俺だけなのか?」



ザラマ、インティ、そして意外にも初めて出会った梁河が春藍の前にやってきた。春藍は3人にお辞儀をした後、


「皆さん。パイスーと若さんがいないんですけど…………尋ねて良いですか?」

「立ち話がちょっと難だから、共同部屋でしようよ」

「それからでもいいな。敵がいるわけでもない」

「梁河。あなたはワタクシにコーヒーとザラマとインティにはお茶、春藍くんには……コーヒーで大丈夫でしょう。若とパイスーにもお茶をお出ししなさい」

「リア、俺がいつから給湯係にされてんだ。大半、お茶じゃねぇーか」

「あなたはお水ですわよ」

「おいコラァ!!俺はコーラをいただくぞ!!」



インティが案内し、梁河はしぶしぶリアが言った飲み物を用意しに向かった。春藍はその風景だけを見ただけでも、やっぱりアレク達とは違う枠に入る仲間同士なんだと分かった。4人共、出身世界が違う、性別も違う、持っている能力スタイルも違っても纏まっている。形が少しだけ違ってもこうして仲良くできるのは特別って思っていた。

共同部屋に入ってみんなが座れば、春藍は梁河のお茶出しよりも先に喋った。給湯係をやらされている梁河も共同部屋で用意しているので良いのだろう。



「インティには前にお尋ねしたんですが…………みなさんはどうしてその……管理人を消そうとしているんですか。僕は彼等のことがそこまで好きじゃないですけど…………危険なのに……」


春藍の言葉が少し詰まっていたのは怒られるより怖い、殺されるだ。4人共明らかに春藍を瞬殺する実力者。アレクやロイといった仲間も今はいないのだ。怒らせてしまう質問なのかもと、思っていた。



「…………俺が代表して答えようか」

「そうだね」

「お願いするわ、ザラマ」



パイスー不在時はやはり年長者だからかザラマが務めている。とはいえ、パイスーもまともという部類ではないので、こーゆうやり取りはザラマがやっているのだが……。


「しょうがねぇー話なんだが」


インティは該当しないが、おおむねそれだった。


「俺達は管理人から辛い思いを喰らった。俺と梁河、パイスーも一度は殺されている。生き返った先で俺は人間だというのに売られ、ガキの頃は人間の生活をしていた。生きるだけでも精一杯だった。こーしてつけた力をどこに向けるかは生前から決まって、管理人しかなかった」


ザラマの言葉に梁河も、リアも軽く頷いていた。ただ、リアはザラマが言ったしょうがねぇの部分は気に入らなかった。しょうがないじゃないだろ。


「不満を溜め込むほど、良い人間をやっているわけじゃない。生きるためじゃなく、変えるためにやっている。俺達の管理人が最悪だっただけじゃないかと思うが、それを放棄したら二度と変わることができないだろう」

「!………………」



最悪って奴を探すのは大変だが、悪や嫌とかを見つけるのは容易い。感情がそのままだからだ。梁河がみんなに飲み物を配り、リアはコーヒーを手に取りながら


「難しい事じゃないですわ」

「リア」

「ただただ。嫌い…………それだけですわ。ワタクシ達はそんなもの…………」


優雅にコーヒーを一杯飲む…………。


「あなたは悪や嫌いを理解しながら、それに歯向かう勇気がほとんどない。むしろ現状を理解しただけで終わってしまう、本当のペット」


リアの言葉に心が痛い。


「人間に首輪はありませんのよ?マゾヒストじゃない限りわね」


マゾヒストってなんのなのか分からないけど。彼女は春藍の中で一番人間らしい感情を持っていた。戦闘中以外は…………。

リアに言葉にザラマは訂正ではないが、付け足した。大まかな意志は同じだが、メンバー内で完全に団結をしているとは言えない。


「他人が消えて変われたら苦労しねぇさ。本質的には自分が変わらなきゃな」

「…………ザラマさんは管理人が亡くなった後の世界を見たことは………」

「何度もある。……管理人が死んで動けなくなる世界にも問題があるだろう。俺は人のせいで弱さを言い訳にするのは嫌いなんだよ」

「……けど。その……………」

「……………」



確かな意見だとは思うが。管理人がいなければ世界は孤立してしまうだろう。黒リリスの一団は管理人を殺すと同時に世界を壊しているのだ。パイスーのような派手さがなくても、影響を与えている。次に梁河はこう答えた。



「そこは鬩ぎ合い。どっちが正しいなんてもんはねぇ。深く考えてもしょうがねー、答えは絶対にでねぇよ」

「梁河さん…………コーヒー美味しいです」

「ありがとよ。まー。そーゆう詰めた話は"時代の支配者"に託すしかないだろうな」

「"時代の支配者"?」

「ここのボスのパイスーだって、管理人がいなくなった世界の事なんざ考えちゃいない。あいつには自分が最強になるくらいしか思っていない。ま、いずれ最強になるのは俺だがな」



パイスーとは付き合いが長いと言われる梁河。パイスーの強さを認めたくないことと、自分がそれに成りたいという気持ちがよく春藍に伝わった。不思議と…………。ある意味、パイスーの気持ちをよく理解している人間だ。



「本当なら人生ってのは一回だからよ。後の話なんて俺は興味ねぇーな」

「…………罪悪感とはないんでしょうか?その……」

「夢と夢がぶつかり合うこともあるんだよ。激しい競争だってある。負ければ終わりだ。一々、やっていいのか?って戸惑ったらそれこそ周りから置いていかれるんだ。その辺を判れよ」



3人共。凄い意志があった。自分がそんなにないのかもしれない。きっとそうだ。まだ足りないんだ。自分にないのは3人のような意見、勇気……。

アレクさん達がいないここで少しだけ手に入れたい。

メンバーのほとんどと話を終えた頃、睡眠と食事をしっかりと摂ったパイスーと若がこの場所へとやってきた。入ってきたいきなり、パイスーは全員に伝えた。無論、春藍にも言っていた。



「管理人の1人を全員で討ちに行くぜ。サイコーのゲス野郎をな」


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