どこかの雨の日のお話
『パイスー、君はやっぱり最強を目指すのか』
『当たり前だ。いいか、次こそはお前を倒して最強になってやる』
『……私を……か。君より強かったというのは事実だが』
『嫌なことを言いやがって』
『ただ、私が最強かどうかは私にも分からない。このマーティ・クロヴェルの中で一番かもしれないが……しっているかい?パイスー。世界は、まだまだ沢山あるんだよ。こんな世界なんて一つに過ぎない』
ザーーーーーーーーー
『世界最強になるということはとても難しい事だよ』
それでも、俺とまともに戦えた人間はお前しかいなかったんだ。
『"無限牢"という世界を割っている檻があり、檻の中を管理する"管理人"がある。人類は管理されて生存する事ができた』
お前がどうして強かったかは分からない。そういや、戦ったのってザラマや梁河よりなかったな。俺より強い奴は敵と昔は思っていたが、いつの日か仲間になっていた。それに戦うことを拒否してたな。たぶん、あのマグレ勝ち以外、俺を超えることはできねぇーって思っていたんだろうな。
『世界が沢山ある、時間もいつだって進むんだ。それでも信じられないほどこの広い世界で最強を目指すのか?』
最強っていう目標だけが果てしなく、自分を強くできるからな
『困ったな。本気の目をしないでよ…………私はそーゆう道には興味がない。無駄な戦いは好きじゃない。え?……何が好きなのか?ふむ……好きという言葉には当てはまらないよ。ただ、したいことがある。ははは。まー、教えてあげるよ。僕は、また人々に本当の自由があれば良いなと思って、世界を回りたいと思っている。意外と昔話って面白いんだよ』
雨はいつの間にか止んでいた。
もう何百年以上も前の話。一度死に蘇るとそんな記憶が正しかったと疑問に思っても、正しいと自分に言い聞かせた。俺の魂はほとんどそのままに生きていたんだ。
なぁ。ハーネット。
俺はお前を探している。俺には自分の自由が分かっていても、お前や若、ザラマ、梁河、リア、インティや他の連中が求めていることを深く理解できない。けど、お前ならなんとかなるんじゃないか?お前は管理人でもなく、ここを知り尽くしていた。
お前と出会えたから今のグループがあり、再び俺は最強を目指せる。
一つの目的である。お前との合流。ザラマも梁河も俺は見つけたんだ。お前もそこにいるんだろ?教えてくれたじゃねぇか。俺達の魂を未来に届けたじゃないか。来ていないなんて言うんじゃないぜ。
俺達は終わっていいで済まないだろ。
…………………………………………………
ガアアァァァンンッ
"闘技島"タドマール。
まだそこではパイスーとインビジブルの戦いが続いていた。無敵の生殖を繰り返し、世界を破裂させようとするインビジブルだが、パイスーの抵抗が思う以上に長く続いていた。生殖と破壊が五分五分の割合で行われるまでになっていた。
ムクムクムクムク
「あーっ……ちきしょー」
パイスーは
「腹減ったなぁー。2週間、ぶっ続けなんざ久々だ」
戦闘意欲から食欲になろうとしていた。インビジブルの自爆攻撃、こいつはもう死んでいる。付き合えたのはここまでっぽい。それに心配になって戻ってきたのか、"ディスカバリーM"で迎えがやってきた。
「パイスー。まだ戦っていたんだ。つーか、ここすごぉっ………」
「インティ!」
「若が春藍くんを連れて来たから戻ろう。もうインビジブル様より強いのはウチが認めるからさ」
「……そんなのは俺も知ってる。それより腹減ったし。眠くなったわ」
インティに連れられてパイスーもようやくアジトへ戻る。これでアジトには全員が戻り、彼等のお話が始まる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
パイスーが去ったとしても、インビジブルの"無敵艦隊"は止まらずに増え続ける。もう彼の意思は死んでいるからだ。パイスーですら倒せない生き物になった彼。もうすぐ、本当の意味で"闘技島"タドマールは終わる。
それなのにまた1人、一冊の本を開いてここに誰かがやってきた。