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RELIS  作者: 孤独
”不信な森”イビリィア編
12/634

管理人達の仕事と不信な人々が住む街


「クロネアとラッシがしばらく再起不能か」

「一命は取り留めておりますので。なんとか復帰できるかと」

「だから"しばらく"と言っただろう」



"未来科学"フォーワールド。

春藍達がいた世界だ。そこへ、1人の管理人が来ていた。

ライラのいた世界。"和の国"吉原の管理人、桂である。

とても綺麗な黒い長髪をしており、後姿はライラ以上に女性らしい人物(ライラに失礼)。腰に帯刀をつけていてその姿は侍のような姿である。

残っている今井達に指示できるほど、彼は"管理人"の中でも特別な存在であった。



「フォーワールドの管理はなんとか三人で回せ。ライラを逃がした責任はない」

「は、はい」

「ポセイドンに連絡して、ライラが壊した"無限牢"の穴を塞がせる人員を手配させろ。拙者も修復作業に入る」



桂はライラが開けてしまった、異世界に通じる風穴を真剣に見ていた。世界の安定を壊してしまう。今もなお、空いたままであり、ここを歩いていけば別世界に辿り着いてしまう。そして、その世界でも穴が続いている。多少の穴なら瞬時に自然回復するのだが、大きく損傷した場合は回復機能すらも失った可能性も高く、ずっと空いたままになる。



「"黒リリスの一団"については後回し、ライラも後回しにせざるおえないな」


弟子であり、子のように育てていたライラの行動に溜め息をついてしまう桂。

まだ色んな異世界に繋がるだけで、済んでいるだけマシかもしれない。下手をすればそれが影響で世界が崩れる事もありえるのだ。

だからいち早くライラを止めたい。ライラはまだ知らな過ぎる。



「桂さん。"黒リリスの一団"の方は一体どうなっているんですか?私達の参加はあるのですか?」


今井はライラ以上に危険視されている組織について桂に訊いた。色んな世界に出現していると聞いている。


「奴等と戦う事となったら、クロネアとラッシには討伐に参加する。お前達は自分達の世界だけを守っていれば良い。とはいえ、拙者は今井達やポセイドン達とも違うし、編成する事には権限はない。"用心棒"であるからな」



管理人の"用心棒"。それが桂の役目である。

通常の管理人は人間達を管理する存在であるが、桂は通常の管理人達を裁く管理人である。

管理人が行う所業などを監視し、彼が感じる範囲内で違反と見た場合、彼は特別に対象の管理人

を殺害する権利がある。その上で自身も一つの世界を管理している。


管理人を裁くという役目であるため、通常の管理人よりも遙かに強い。ライラが来たら終わりと言っていた通り、ラッシやクロネアなどとは比較にならない強さ。管理人内でも1,2を争う強さを持っている。



「"黒リリスの一団"の方はポセイドンが中心だ。今回の件は拙者がやる。編成の最終的な権限はポセイドンにあるため、どうなるかなんとも言えないが、拙者が育てた子供だ。面倒を見なくてはならない」

「早めに動いて欲しいですね」

「すぐ動ける状況ではないからな。慎重に事を進めるのは拙者も賛成だ」



ライラ達に追っ手がなかったのはこーいった偶然が起こったからだ。

ライラ達が突き破っていた世界の穴を塞ぐことに管理人達は集中していた。ほとんどの管理人が自分達の世界を管理しにくくなり、淀みがわずかに生まれている。

特にフォーワールドは管理人の2人が離脱だけではなく、技術開発局の主任であるアレクまでもがいなくなり、仕事が回らないどころかできない始末。この世界が物作りを止めてしまっては、異世界の均衡にも影響があって当然であった。



ライラは知らない。彼女の行ないは"正義"かもしれない。世界の一つや二つ、死者が出ないとはいえ迷惑を掛けてもいいから全てを救う事。それはとても遠くにある理想のために、極当たり前な日常を潰す事である。全てとは過去から今までの領域なのだ。

彼女のその行動には勇気があると理解できるが、知識や覚悟、判断力、やれるだけの力、仲間もいない。勇気だけでは愚か過ぎると教えられなかった桂の責任だ。勇気とはやる事ではない。時には見逃すことも勇気だ。



「拙者もそろそろ行く」

「お気をつけて」



"管理人"という立場は大変だ。

朽ちる、衰える、寿命というのを持つ人間達を纏めるために生まれ、今もこうして働き続ける。

人間1人に休みはあっても、世界に休みはない。誰かが犠牲となっても、人間1人に休みが与えられる。幸せな行ないをできるのは誰かが犠牲になってくれるのだ。機会を大切にしなければいけない。

春藍達は嫌っていたが、ほとんどの者達は服従し、納得し、洗脳されていた。幸せに形などないし、味も違うからだ。普通は大変な仕事が終わればドリンクを飲んだり、睡眠をとったり、シャワーを浴びたり、たまには仲間と仕事の愚痴を零す、運動をする、絵を描く、小説を書く程度の無意味に思えるサイクルで十分が占めるだろう。


彼等がとても我侭な子供なんだ。極々当たり前に、納得してくれないなんて迷惑だ。

そんな連中ですら人間と考えて管理人は操らなければ行けない。

なに?操られる義務は人間にはないだと?なぁ。



昔の人間達は愚かにも、戦争を繰り広げて全滅の危機があったんだ。



生き残り、子孫を増やすため、街を作り、国を作り、社会を作り、世界を作り、安全に平和に効率的になるべくの幸せのために。人間達は"無限牢"と呼ばれる多重の異世界空間システムを作り出し、"管理人"という不老であり、ほぼ変わらない生命を作り出し、管理される事を望んだのだ。

人間が生き残るために人間が管理を求めたのだ。



「…………………」



数百億年以上の管理下から今。何かが変わろうとする予感を桂は察した。

ライラの事もそう。"黒リリスの一団"というのが現れたのもそう。そして、おそらくまだ隠れている桂も管理人達も知らない何かが動いている気がしていた。その前兆はもしかすると、



「"RELIS"というのが生まれたからなのか」



ライラが空けた穴を通って、フォーワールドの隣に存在する世界に辿り着いた桂は速やかに穴を防ぐ作業に入った。"無限牢"修復用の"科学"を用いて穴を防いでいく。



◇      ◇



そして、”不信な森”イビリィア。


「もう大丈夫か?」

「はい、大丈夫です!」



翌日。十分に休息をとり太陽が出てくるのを待っていた四人。

起きたら簡単な食事を済ませて、出る準備。

ネセリアが最後に家から出てきた。忘れ物はない、一日過ごした家とはここでお別れである。

少し寂しそうな顔をする春藍。自分が携わった物を置いていくのは仕事ではよくあったけど、旅では初めてである。もし機会があればまたここに訪れたい。


「降りるわ」

「うん」


春藍達は山の上から遠くにかすかに見える街を歩いて目指す。ライラは余計に魔力を消費するのは遠慮していた。ネセリアには悪いが歩いて街を目指す。彼女のペースに合わせながら進んでいく。


「疲れたら言ってよね」

「大丈夫だよ、ライラ。少し身体はよくなっているから」



朝に春藍がネセリアの傷具合を見た。外傷はとりあえず修復し掛けているものの、体内の様子は春藍には分からない。ライラもネセリアの傷の修復の色を見てしまったが、肌の色ではなかった。自分とは違っていた。土なんてどこにでもありそうな物で補えば当然。

少しでも早く。


「何か考え事、ライラ?」

「なんでもないわよ、春藍。ネセリアは無事なんでしょうね?」

「う、うん。大丈夫のはずだよ」



なんで私はこんな事をしているんだろ。自分も万全な状態になりたいけど、自分よりも優先すべき事があるはずなのに。


少しだけ迷いと戸惑いを見せるライラ。

その迷いを少しでも晴らそうと今は歩いて、歩いて、歩くしかない。

少しでも早く街に着いて、そこでネセリアを治療できればそれで良いはず。



「ねぇ、ネセリア。君の"掃除媒体"を僕が使うから君は中に入って休んだらどうだい?」



約1時間歩いたが、まだずーっと森の中。山をとっくに下ったため景色はまったく見えない。

少しだけネセリアの疲労に気付いた春藍が訊いてみた。ライラはその事を思い出し、それをさせようという顔を出したのだが、ネセリアは。



「うーん。でも、せっかくの異世界だから私は景色をみたいの。私、頑張って歩くから。ちょっと遅くてごめんなさい」

「い、いや。僕は心配だったから」

「無茶はするなよ、ネセリア。倒れてからでは遅いんだぞ」



ネセリアのお願い。ライラはこの時、自分の目的と三人の目的が大きく離れている事を強く知る。

正直。中に入って欲しい。(ついでに春藍も)

大人しくして欲しい。チンタラしているわけにも行かないのに。一緒にいる人は観光気分だなんて。世界の問題を解決しようとしている自分が馬鹿じゃないか。



「ネセリア」

「ライラ。私、頑張るから。ね。ごめん。我侭をさせてくれないかな?」

「~~……」



ちょっと可愛い笑顔をされたら。許してしまう。

この子は一番何も知らない上に、大きな傷を負ってしまっている。私は馬鹿かと心の中で思った。世界云々前に、目の前にいる巻き込んだ人を見殺しにできる悪じゃないでしょって、自答した。

それに焦るなって、呟く。時間は惜しいけど、それが例えギリギリセーフでも良い。言い訳を心の中で作り出した。



「無理はダメよ。それに足場も悪いんだから」

「はーい!」

「ふぅ」



景色を見たいと言っているネセリアだが、右も左も前も後ろも森だ。こんな場所はフォーワールドにはなかったが。けど、ずっと観ていたら飽きる。春藍は少し疲れていた。

一方、アレクはネセリアと同じように周囲に顔を向けながら歩いていた。春藍はネセリアと同じなのかなって思っていたが、ライラはアレクの動きに何かを察し出来た。



「魔物が襲ってこないから変だって思っているの?」

「!お前は心も読めるのか?」

「目の動きを見れば分かるわよ、実際。私もそうしているし」



昨日から感じている。いろんな魔物が生息していたような痕は沢山あるのに、1時間歩いてもまだ姿が見えない。ネセリアという負傷者がいるのだから襲い掛かるチャンスでもある。(頭があるか知らないが)

やっぱりこの世界は何かがおかしくなっている。



「昨日、アレクには音が聴こえたんでしょ?魔物の悲鳴が」

「やっぱりあれは悲鳴だったか」

「食われたってとこよ。何かが生息しているのは事実ね」



魔物というのは本でしか見た事がない三人。どんな物なのか。恐ろしい存在であるというのは、なんとなく分かる。食べて生きる奴等だからだ。春藍はそんな話を聞いて、自分も不器用に周囲を見渡しながら進む。襲ってきたらどうしようという不安もある。



「どんな魔物がいるか、私も見なきゃ分からないわね」



ライラは木々や地面を見ながら、魔物達の痕跡を確認する。

水を汲みに行った時は普通の魔物かと思っていたが。ここまで歩いていろいろと見ると、すぐ見渡せば見つかる痕が二つある。

"足跡"と"爪跡"がほとんど周囲に見受けられる。

それも大量だ。一つ一つの跡の大きさは若干違うが、形などはかなり似ている。

進めば進むほど新しい痕も見つかる。



魔物の群れの移動?



にしても同じ種類ばかり。規模で言ったら数え切れないほど。

もしかしたら世界全体で起こっているような異常事態。一つの生物が群れをなして襲っているような予感がした。これだけ痕があっても姿が見えない。

死骸や糞、尻尾の痕は魔物だと判断していいが、"爪跡"と"足跡"のほとんどは魔物と位置づけると違和感ばかりである。

もし、こいつと出会ったらヤバイと予感はしていた。


そんな深読みまで行けるのはやはりライラだけだ。アレクは警戒こそするが、そこまで危険かどうかは認識してはいない。春藍とネセリアは論外である。



タッタッタッ



見つけた川で休憩をとりつつ、予定より1時間遅くなったがついに四人は街へと辿り着く。

3時間以上も歩いて足がパンパンになっている春藍とネセリア。集中力ではなく、体力を削られる事にはまだ慣れていない。だが、なんとか歩き切った。



「魔物避けの高い壁ね。扉を見つけましょ」



街を囲う城壁だ。きっと門があるはず、春藍達は動こうとするが上から声がした。



「な、何者だ貴様等!?」

「!」



その言葉と共に上から矢が何本も落とされる。それを上手く避ける四人(っていうか、どこに撃ってるんだ?)



「なっ、何すんのよ!?」


ライラは怒りながら城壁を見上げた、6人の男女がそこにはいてまだ春藍達を狙おうとしていた。その中で一番歳をくっている男がライラに向けて叫ぶ。


「貴様等こそ何者だ!」

「私達は人間よ!ちょっとこの街に入って休みたいだけよ!!」

「人間だと!?ふざけるな!その森は、その森には魔物が沢山いて支配している!たかが四人でなぜ森からやってきた!?」

「魔物が森を支配している?」


男の言っている事と自分達が通ってきた現実が大分違う。


「貴様等は人間に化けた魔物だろう!また我等を襲おうとしているんだろう!?」

「ちょっと待ってよ」

「話が通じないようだぞ、ライラ。強行突破が良いんじゃないか?」

「それもそうね。ここで喋るより状況は良くなりそう」



ライラはみんなを集め、その下に自分の魔力で雲を作り出して瞬時に城壁と同じ高さまで昇った。


「ひいぃっ!?"魔術"を使うのか!?」

「そんなに驚かないでよ。悪いけど、中で話しましょう」


この街の名は"サイソップ"。森にいる魔物を狩猟して生活を送っているそうだ。魔物が多く生息するため、人間の活動領域はこの街くらいだという。



「確かに警戒するのも分かるわよ」



屋敷に連れられて、春藍とネセリアに手錠が填められ、ライラとアレクがこの街の偉そうな奴。さっき叫んでいた男と話していた。主にライラがこの手の話を纏めてくれた。



「だからってロクに確認しないなんてオカシイでしょ」

「そ、それは済まなかった」



男達は春藍達を人間と認めてくれた。もうすぐ釈放までこぎつけた。



「ところでさっき魔物が支配している森って言ってたけど、私達魔物すら出会っていないでここに来れたわよ?4時間くらい歩いて来たけど」

「魔物と出会わなかっただと!?」

「町長!やっぱり最近の異変が現われているんですよ」


少し疑問に思った事をライラが訊くと、街の者達は皆驚いてしまった。


「それは本当なのか!?」

「ええ。戦った痕すらないでしょ?」



ライラは立ち上がりクルッと回って無傷である事を見せる。魔物と出会わないなど、ありえない話だ。だが、ここ最近の異変を街の者達も感じていた。

町長は重たく、そして情けない声を出していた。



「魔物は森を支配している…。うだ。弱い我々はこの小さな街でしか生きる事ができない。2~3週間の遠征に行って弱い魔物達を狩り、強い魔物達から逃げるようにして街へと戻る。森に出れば食料はわんさかある。一回の遠征でみんなの1ヶ月や2ヶ月分の食料が手に入る。そうやって生活していた」


ハッキリ言って、魔物は街をも支配していると言える。それだけに数も力の差もあった。



「先月。遠征に失敗し、多くの犠牲を出した。もうダメかと思った。ところが1週間ほど前から魔物の悲鳴や食われている死体が見つかるようになった」

「え」

「我々は怖かった。一体何が起こっているんだって、大勢いる何かに食われた魔物達が沢山見つかって、夜までずっと森から魔物達の悲鳴が上がっていたんだ。怖かったんだ。森に出て魔物を殺す魔物に出会ったら今度こそお終いだと」

「俺達が昨日聞いた悲鳴もそれか」


町長は改めて訊く。


「き、君達ではないんだろうな!?魔物を襲った魔物じゃないんだろうな!?」

「人間だって言ったでしょ。落ち着いて」


つまり春藍達は運良く、魔物と出会わなかったのは先に魔物を殺す何かがいたおかげか。


「私達に何ができるか分からないけど、この世界の"管理人"はどうしているのよ?」

「か、"管理人"?なんだね、それは」

「え?」

「馬鹿な、"管理人"が分からないのか」


ライラとアレクは唖然とした顔で町長を見てしまう。

"管理人"が管理していない世界だとでも言うのか。

それはないと思うってライラは感じる。この場合、"管理人"は人々に知られないようにやっている可能性もある。自分のとこも、春藍達のフォーワールドは"管理人"と人間が共存していただけだ。


「変な事を訊いてごめんなさい」

「あ、ああ」

「じゃあ、私達2日か3日はここにいるから、好きにこの街にいて良いかしら。何かできる事があればこのおっさんがしてくれるから」

「勝手に俺を捨てるな」

「春藍とネセリアも釈放してね」



町長の話を聞け、春藍達は無事にこの街で過ごす事ができた。民宿と呼ばれる場所に四人は足を運んだ。この世界のお金なんてないが、町長の口ぞえで無料で借りられた。

まだ陽が沈むまでは時間がある。四人は民宿の部屋に集まって少し話をした。


「ちょっと変な街ね。管理人の存在も知らないってのも、ちょっと厄介ね(別の意味で助かるけど)」

「春藍。ネセリア。これからしばらくどうする?と言っても、ネセリアを治療が優先か」

「はい。ドクターを探します」

「"お医者さん"ってここでは言うみたいですね。さっき住民の方に訊きました」


違和感に何も気付かない天然の2人。この2人を一緒に行動させていいのやら。


「俺は街を回ってみる。何か面白い事が見つかればいいかな」


アレクが単独行動を示す。ちょっと睨むライラ。とはいえ、自分も医者に無事なのかどうかも確認しなきゃダメだと思っているから。


「じゃあ春藍、ネセリア。三人で医者を探しましょ。ネセリアが治れば2日でこの街を出るから」

「うん」

「分かりました」



午後はこのように行動する事になった。荷物を置いてアレクはさっそく消えるように街のどこかへ行ってしまった。春藍とネセリアはさっき通った道でも、新鮮な顔をして左右に首を振らせていた。付き人としてちょっと恥ずかしい。



◇     ◇



そして、その頃。西の森の方では一つの魔物の軍勢が集結していた。沢山の種族がいて、その一番上に立っている魔物が指揮をとる形だった。



【人間を許すな】



その魔物の外見は角が生え、一つ目の緑の肌をしている人間をビッグにした者だった。世界では"ルイネス"と呼ばれる。人間や魔物を捕食する凶暴で大型の魔物である。多種多様に揃えるこの魔物の大群は強い者が支配者という簡単なルールであった。



【姑息で狡猾な者共に裁きを与えよ、同胞達の仇を討て!】



彼等は殺された仲間に復讐しようと、今までにないほどの軍を編成した。少し前までは、お互いが捕食のために必要な存在であったがために多少の犠牲で済ませていた。だが、この世界の魔物の3割が死に"ルイネス"のような、魔物達を束ねられる魔物。"3匹の巨頭"の一頭、カビンドラが討たれたのだ。

魔物達の平穏は砕かれた。だから、わずかしかいないこの世界の人間達に牙を剥く。



【おおおおおぉぉぉぉぉ】



天と大地が揺れるほどの魔物達の咆哮だった。ルイネスを先頭に唯一の街、"サイソップ"に進撃したのだったが


【!】

「いいぜぇ、その気迫。魔物ながら闘争心に満ちている。大群の癖に油断が見えねぇ」



魔物達の進撃をアッサリと止めてしまうほどの。とてつもなく強さを持った生物が現れた。たった一人、立ち尽くしている人間であるが。ルイネスは後ろにいる同胞達がいるにも関わらず、足が震えた。

数が通用しない強さを発している。



「仲間も多いな。あの街なんて一瞬じゃねぇか」

【な、なんだ貴様は!?】



魔物の声は人間には理解できない。だが、



「何を言ったか理解できねぇが、俺とテメェ等は分かり合えるだけの強さがある。闘争しか俺達の舞台と思わねぇか、魔物共よ」



黒髪のオールバックの男は魔物の大群を相手に単独で、拳による対話を求め、互いの強さを語ろうとしていた。それに応じるしかなかった魔物達。

およそ、3時間の大戦争。たった一人の人間と魔物の大軍、5万匹以上。



グシャアァッ



「良い戦いだった。良い仲間とリーダーじゃねぇか。リーダーを失っても戦う覚悟が、またたまんねぇな」


黒髪のオールバックの男は服がわずかに裂けてしまう程度で、魔物の群れを再起不能の壊滅状態にさせてしまった。その圧倒的な強さを持つ男は、残った最後の楽しみを求めてどこかへ行った。




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