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RELIS  作者: 孤独
”土方暮らし”ダグリオン編
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"土方暮らし"、ダグリオンでのコーヒーブレイク


コトンッ



パラソルよし、綺麗な白いテーブルと椅子よし、美味しい挽きたてのコーヒーもよし。眺める玩具は少々変わってしまったが、猫な少女を眺めるのもまぁーよし。自分の綺麗さとお身体の秘密を覆ってくれるいつもの品が良く見えるお嬢様のファッションもよし。



「あとはですわね…………」

「は、はい…………」



ガラジャアアァァァァンンッ



「この世界には身を焦がす情熱の太陽が欲しいですのよーーーー!!!」



だからといって、町を一つ壊していいわけがない。太陽には程遠い炎や爆発をぶん蒔いていいわけがない。"黒リリスの一団"、リアはこのシメジメとして、閉鎖的で、汗臭くて、泥まみろ、洞窟に包まれている異世界。"土方暮らし"、ダグリオンがとてつもなく嫌だった。



「紫外線はお肌の天敵といっても、なくてはならない存在なのよ!!日から溢れる熱はそのまま恋や愛の熱のように!」

「あ、あの」

「なんですの!!?ペットの妹!!」

「ぺ、ペットの妹……?」

「言いたい事があるのなら言ってみなさい!!」

「あ、あの…………ま、町が燃えてます」

「だからなんですの!!?」

「あ、あそこのみんなが死んじゃうんじゃ……」

「だから!?それでワタクシが困ることがあると!!?ないないないない!!ありえなーーいですわ!」



自分の世界に入ってしまっているリアの話し相手をさせられている春藍謡歌。若に後ろからいきなり眠らされ、腕輪をつけられてこのダグリオンの世界に連れて来られた。目覚めるととても綺麗なお嬢様に見えるが、内面はとても凶暴で残忍だった。せっかく綺麗な容姿も台無しの性格だ。

そんな心を持っている人間が外の世界にいることを初めて知った謡歌。

燃え、悲鳴が上がる、町を眺めるだけで意識が吹っ飛びそうだ。



「は」



リアは暴走させた精神を落ち着かせる。蠢き乱れた青髪のウェーブ、謡歌に平然と晒してしまった機械で造られた自分、……。本来ならこの謡歌も抹殺すべき感情になっただろうが、春藍の言葉を気に少しだけ(?)自分の姿を改めることができた。



「刺激が強すぎたかしら?人を殺す光景って…………」

「!…………」

「ワタクシ。生きてきてそれがないと溜まらなく、溜まらなく。心が沈むのですわ」



潰した町をバックに、リアは優雅にコーヒーを頂く。



「人々は理解し合えない。けど、あなたのお兄様はワタクシの事を想って頂いた」

「え?」

「ワタクシの大いなる被害妄想かもしれないですわね…………。けど、そこから始まると彼から知りえましたわ」



怒りや暴走時に見せる狂気の微笑みではなく。とても幸せそうにコーヒーを頂いているリアの表情は、本当の笑顔であった。なんて起伏の激しい人物だ……。



「謡歌ちゃんはどんな子なのかしら?」

「あ、あたしですか?」

「夢とか、希望とか…………ワタクシは、まず。管理人を全員抹殺する事ですわ。それから自由に男の子をペットにしたいですわね」



自己紹介のように自分の夢や望みを謡歌に晒したリア。とても自慢できる希望ではない。笑顔で言えるようなことじゃない。他人の9割9分はそう思っても、自分にとっては夢だとリアには思えるのだろう。リアの笑顔に釣られて、恐怖に思える業火を見ながら謡歌は



「あたしはみんなと、繫がれるような人物になりたいかな」

「繫がれる?」

「リアさんはできないって言った、人々は理解し合えない事をあたしは可能にしたい。リアさんは寂しいしかありえない、1人じゃないですよね?若さんがいますし、あたしのお兄ちゃんもいて………」

「………ふふっ」



謡歌の言葉に嘘はない。ただ夢として、目標を高くして言っていると分かる。


「夢はできると良いですわね。あなたはお兄様に似ておりますわ」


リアは笑顔でいた。若はきっとホッとしているだろう。リアの暴走しっぱなしだったら、自分も被害を喰らう。謡歌は目の前で人々が死に逝く様を見ていたが、……それだけだった。リアは怖いし、自分が言った夢と非なる心を持つ人物。分かり合える人物ではない。けど、笑顔は綺麗だ。助けられる力がないなら、助けられる人を助けたい。自分も助かりたいし…………。リアには笑顔でいて欲しいなって思えた。笑顔が綺麗な人だ。

自分も歪んでいるんだなって、謡歌は気付けた。普通、リアと付き合いたいと思う人間はいないだろう。人間には本当に色々いる…………。



「そろそろ…………来ましたわね」

「え?」

「若が迎えに行ってますわ」



リアの言葉通り。優雅に2人が寛いでいる間に、春藍が"ディスカバリーM"を使ってこのダグリオンの異世界に辿り着いた。着地地点には若が出迎えていた。陽はないけれど、明るい町。少し男の汗の匂いが気になるくらい。



「!」

「やぁー、超超久しぶりー!顔を覚えてくれてるかな?」

「え、えっと……」


黒リリスの一団の中で最も影が薄い気がする。


「わ、若さんでしたっけ?」

「ピンポーン!!せーーかい!!」


春藍の言葉にとても嬉しそうな顔を出す。春藍が読み通りやってきたからだ。あとは謡歌と交換という形で攫えば任務は完了だった。だが、ここで春藍は意外な行動をとった。ポケットから



「CD?なにをするんだい?」

「ご、ごめんなさい!若さん」



ポウウゥンッ




春藍は起動し、CDの中に納まっていた3人を引っ張り出した。



「ええぇぇーーー!!?そ、そんなのありーーー!!?」

「ネセリアの"掃除媒体"なら何人でも連れて来れる」

「お、驚いたぜ!あんな小さな物に人間が入れるなんて!!ただのおっぱい担当じゃなかったんだな!!科学すげー!」

「そ、その言い方は止めてください!!」


若が驚愕し、一気に後ろを向いてリアがいる方へ走る。アレクとネセリア、ロイの3人は"掃除媒体"から出てこれで準備万端。ダグリオンで春藍謡歌の奪還作戦を始める。




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