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RELIS  作者: 孤独
”不信な森”イビリィア編
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洞窟生活、初めての野宿

「ネセリアとライラがこうなっては下山は難しい」


ロクに歩けないライラとネセリアを見てアレクは冷静に何をすべきか考えた。春藍はただ、アレクの指示を待っていた。こんなきっと初めての状況でどうして落ち着いて何かをできるのか、春藍には尊敬しか沸かなかった。


「今日はここで休むしかあるまい」

「や、休むって」


春藍は不安そうに空を見上げる。


「陽が落ちたら真っ暗ですし、風や雨の心配とかがあるのではないか?」

「心配はない。俺とお前なら、家の一つくらい速攻で作れる。ここは傾斜になっている。地下の家が作りやすそうだ」



アレクはライター。"焔具象機器"を取り出し、火をつけ。地面に向けた。そして、春藍に一つ伝える。


「すぐに中を"創意工夫"で修繕する準備をしろ」

「は、はい!」


大きな火力を使うと春藍には分かった。手袋を填めてアレクに視線を返した。アレクはライターを握る左手の手首を右手で掴んだ。自分も吹っ飛ぶような威力だからだ。



「滅火破炎」



ライターの火の飛び出し方、大きさ、熱はこの"科学"の性能で最もずば抜けている機能。地面を焼き尽くすのではなく、消し炭するのでもなく。灰すらも残さない、そこが一瞬で消えてしまったような圧倒的な炎。一度しか見た事がない春藍だが、どうしてそこまで凄い性能を付け加えられるのか。アレクという科学者には学ばなきゃいけない事が多い。



ガゴオオォォォンンッ



「ひ、ひいぃっ。相変わらず、とんでもない威力」

「早く中に入って修繕してくれ。熱いから火傷には気をつけろ」



地面を焼き飛ばして、無理矢理作った人工の洞窟。まだ熱気が篭っている。春藍はその中に入って脆そうな壁に"創意工夫"を当てて、崩れないように物質を変化させる。綺麗に破壊している事で崩れそうなところは数箇所に留まっている。


「熱っ」


まだ出来たばかりの洞窟の熱が酷い。春藍は修繕を完了してから慌てて洞窟から出た。


「まだこの中に2人を入れるのは危険だと思いますよ」

「だな。ならその間に俺達は料理の調理器具なり、ベッドなり、タンスなりを作るのが技術者や科学者という物だろう」


効率が良い。洞窟が冷えるまでの時間にその他の作業を行う。アレクの計画性は仕事の時でも助かっていた。アレクの指示を聞きながら、春藍も協力する形でどんどん作業を行う。陽が落ちて、真っ暗になってもアレクのライターで周囲を照らした。

約3時間後には洞窟内に家を作ってしまったアレクと春藍。



「さすがに疲れたな」

「は、はい。今日という日は色々あった気がしますし(というか、今日で収まってるのかな?)」



日曜大工の父と子のようであったが、その成果はホンマもんの仕事であった。

周囲の木を焼き落として加工を施したりして、いろんな道具を作り出した。それらの道具を洞窟の中に運んで完成。



「家を作ったのは初めてです」

「そうだったのか。俺は若い頃、集合住宅の設計や建築に携わっていたぞ」

「経験豊富ですね」



豪華な家ができて大満足の二人。

だが、肝心な事を忘れていた。というより、何も気付いていなかった。

作る事が2人の日常であったが、野宿という過酷な環境は初めてだった。どうにかなっていた平穏はここにはないのだ。


「あ、あんた達、凄いのを作ったのね」

「ライラ!大丈夫!?」


2人が洞窟を塗装中に起き上がって入ってきたライラ。人口の洞窟から、家具などが入って来て立派な家になっていた事に唖然としているのだが、少し不安を感じていた。



「それで。み、水とか、食べ物はあるのかしら?お腹減ってないの?」



音や熱は眠って休んでいても感じ取れていた。だからこそ、そればかりに2人は集中していたのではないかと不安を抱いていた。



「水や食べ物なんて後で注文すれば来るんじゃないかな?4分くらいでいつも来たよ」

「食料に困る事じゃないだろう。一日食わなくても死なないぞ」



馬鹿だこいつ等!って顔をしてしまい、ライラはお腹を押さえながら。唖然から激昂の顔になった。"ピサロ"を使わずとも雷が落ちたような迫力だ。



「あんた達!食べ物の大切さを知りなさいよ!空腹を気合で誤魔化せるほど、旅ってのは甘くないのよ!食べ物を残したり、捨てても別に良いなんて思考じゃ生きられるわけないでしょ!?」



春藍がその場で尻餅をつけるほどのライラの叫び。アレクも少し反省している顔を出して述べる。



「……すまん。確かに食料も大事だと思った。お前の言うとおり、俺達は食料困難なんて想像つかない」

「ふうぅぅっ、私やネセリアには栄養が必要なのよ」

「とはいえ、俺達は調理はした事があっても、原材料なんてのはあまり知らない。何が食えるかなんて、いつもビニールの袋に包まれ、名前が付けられた食材を見て購入していた。こんな山の中で平気で食べて良い物というのを探すのは難しかった」

「私だってそんなの予備知識程度よ!とにかく手当たり次第に食べる!!臭い物や毒っぽいのは食べない!それくらいよ!」



ライラと自分達の世界の違いを思い知っている春藍。確かにお腹が減ってはいるけど、いつも頼めばすぐ料理はやってきた。

けど、ここにはそれがない。自分は頼んだら絶対に来ると思ったけど、僕って馬鹿だなって自覚する。

ライラは2人に溜め息をついてから



「ふぅ~、私が1人で行くわ。魔力も寝て少し回復したし、40分くらいで戻るから」

「だ、大丈夫!?だってさっきまで」

「平気よ。その代わり、ネセリアをちゃんと診てあげなさいよ。それから水を入れる容器とかあるなら貸して」



ライラはバケツを持って1人でもう暗闇の山の中に進んでしまった。二人にはついてくんじゃねぇってオーラが見れていて、大人しく作った家で引き篭もった。



「俺達はまだ知らない事が多いな、春藍」

「そ、そうですね」



ライラが戻ってきたのは時間通り40分後。特に何事もなく、あの暗闇の中から大量の野菜のような食材と川から汲んできた水を抱えて現れた。



「ふー、川が近くにあっただけ運が良かったわ」

「川か。僕達の世界じゃあまりありませんでしたよね?」

「ああ。だが、水には困らなかったがな」

「重いんだけど、ちょっと持ちなさい」



食材なり、水なりを家(洞窟)に持ち込んで、二人で作った料理道具で早速調理開始。見た事もない食材ばかりであるが、春藍やアレクにはそれらの下処理などは感覚で分かるとか。毒ではない時点で食えそうだった。そんな2人のやり取りを見てライラは


「あんた達、私より料理上手いでしょ」

「え?何か言った?」

「別に」


手際の良さ、調理までの計画性の高さにライラは女らしさの無さを痛感する。自分の料理はそこまで上手ではないし、食えれば良いという頭なのだ。盛り付けや味付けは細かくした事はない。面倒だから!

ライラは2人が調理している時に、ネセリアを横にさせているベットの所に寄りかかりながら2人に訊いてみた。



「あんた達の世界ってやっぱり良かった?」



なんとも曖昧過ぎる質問。春藍はどう答えて良いか分からない。

異世界に来たは良いが、まだ一日目だ。分からない事、したことがない事ばかりだ。比較なんてまだできない。だが、アレクは答えてくれる。


「飯のありがたさを知れたかな」

「その割りに料理は得意そうじゃない」

「材料や水はかなり管理されてたようだったな。頼めば本当にその分だけ来るんだ。俺や春藍、ネセリアもそうだが。基本は1人分だけだ。食う量にもよるが、必要以上は要らなかった。世界というのは難しくできているのだな」



この中ではぶっちぎりに歳をとっているアレクも勉強している顔だった。考えを改めるというよりかは付け足すような考えになった顔をしている。



「明日、空から見れた街に行けそうか?」

「大丈夫でしょ、歩いて3時間くらいで辿り着けそうよ。そこでネセリアを治療できるならして、ここがどんな世界か聞き込みもしないと」


アレクの質問にライラはある程度答えるが、……。少しこの世界の特徴について頭の中で整理していた。

40分も掛かって水とかを取ってきたが、実際には20分ちょいでそれが可能であった。ホントに近くに川や食材が転がっていた。この世界はやはり森一色であるため、食料にはそんなに困らない。木の実や魚が取り放題だ。少しの時間でこの森を探索したが、魔物が生息していたような足跡や糞、死骸、爪跡が確認できた。にも拘らずアレクも春藍も、自分も魔物と出会っていない。

空から見た時もそうだった。魔物が生息していた痕跡はあれど、姿がまったく見えない。この森では何かが起こっている。



「できたぞ。そらぁ、お前等食べろ」

「いただくわ」

「!あ、ネセリアも起きた?身体は大丈夫?」

「おいしそうな匂いがしたので、目が覚めました」



春藍はネセリアに出来た物をさらに調理した。起きられるとはいえ、もっと食べやすい物にしなければ身体に悪い。


「これは少し熱いから気をつけてね」

「うん。ありがとね、春藍」


ライラは春藍とアレクが作ってくれた料理を食べながら。舌は旨いって叫んでいたが、口に出さずこの世界について考える。

ここの"管理人"は自分達の存在について気付いているのだろうか?異世界に行く度々、"管理人"にバレて追われていたのに今回は、理由が分からないけどまだ現れない。自分の魔力が尽きた時に襲われていたら、すぐに終わったはずなのに。



「ん」



街に行けばある程度、情報が得られると思うけど、この辺りに魔物がいないとなると攻め込まれている可能性もある。上がっていた煙もそのせいかもしれない。



「我ながら最高の出来だ」

「ネセリア、細かく刻んだけど食べられる?」

「少し体調は良くなってきているから食べる」



三人は仲良く食べているが、ライラだけは警戒を強めながら食べていた。いつも以上だと思っている。頼りなるのは自分だけな気がする。それは桂から離れてからそうだったけど、一人だった時はそこに頼られるという事はなかった。




グォンッ



「!」

「!」


ライラは警戒のおかげか、とても遠くで何かの叫び声を聞けた。アレクにも何か聴こえたらしく、拍子に箸を落とした。


「どうしたんですか?」

「?」


春藍とネセリアは2人の突然の行動にポカンとしている。


「……何かの声が聴こえたな」

「人間じゃないわ、たぶん魔物よ」

「魔物!?」

「子供の頃、教科書とかで見ましたよー。けど、私達の世界にそんなのいませんでしたけど」



春藍は驚き、ネセリアはそんなまさかという顔をする。

だが、ライラの世界では普通に魔物が生息していた。だから、その声が人間ではない事が分かる。

そしてどんな鳴き声かも


「大丈夫よ。結構遠くの方だから、ここをピンポイントで狙うわけがないわ。食べたらすぐ寝ましょう」

「そうだな。明日は陽が出たら降りるんだからな」

「でも、まだ時間があります。たぶん、23時ピッタリじゃないと僕はその」

「私は寝すぎちゃっているから、せめてシャワーでも良いかな?春藍手伝ってよー」


アレクはまともな事を言えるが、他の2人はなんだか旅行気分でいる。魔物がいる時点で旅じゃないんだから。それにしても


「シャワーってなに?」


ライラにはそんな単語がなんなのか分からなかった。自分の世界にはないし、別世界でも見た事も聞いた事はない。

そんな彼女の顔を見てネセリアはとても嬉しそうに語った。


「シャワーって気持ちいいお湯が沢山の穴からシャーーって流れて、それを手に持って身体中隅々洗う科学ですよ。シャンプーなどをつければもっと気持ち良いし、バスタオルで拭いた後はとってもサッパリしますよ。今度一緒にしましょうよ」

「へー、お風呂みたいな事なのね」

「オフロ?」

「温かい湯を溜めて体を清める物よ。こっちの世界でいうシャワーと似たような事よ、きっと」

「そういやそんな物を作る装置に携わった事があるな。あの馬鹿デカイドリルとハンマーだ」


ライラの答えにアレクは風呂と呼ばれるのを自分の家に配備した事を思い出した。


「そういえばありましたね。あれは結構大変でしたね。素材が限られていましたし」

「地面を掘るドリルを作るのは大変だったよね。何度か修正しました」



春藍達もそんな話から加わってくる。とても楽しそうな、異文化について話し合った。価値観の違いが話を生み出してくれる。

って


「ネセリア。さっき、春藍にシャワーを手伝うって、どーゆうこと?」

「もちろん、春藍に背中を流してもらって、髪の毛もちゃんとセットしてもらって、シャワーもかけてもらうまでです」

「僕がネセリアの身体を洗ったりしてたよ」

「へー、そうなんだなー。楽しそうだし気持ち良さそうね……………はぁ?」


少々、戸惑いと怒りが混じった顔を出すライラのその切り替えしに春藍達は


「?」

「?」

「?」


であった。確かに不思議な事をしているが。ライラは完璧に春藍のことを



「春藍!あんたやっぱり変態でしょ!!」



バキイィッ



とにかく、想像しただけでそんな光景は絶対にありえない。どんな関係だ。シャワーってそーゆうの?馬鹿でしょ!嘘でしょ!!


「じゃあ、ネセリア。機会があったら私と一緒にシャワーを浴びましょう」

「いいですね。女の子同士しようね~」

「な、なんで僕は殴られるの?」

「男だからじゃないか?」



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