表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
”不信な森”イビリィア編
10/634

やってきた世界、初めての異世界

ライラの魔法陣は一度、ラッシの出現で崩してしまった。そこから急ピッチで作り上げて発動したため数々の異世界を突き破るのように吹っ飛んだ。

ライラは自分が体験してきた異世界への移動で起こる酔いが、一番強烈だったと認識した。彼女がそうなのだから、春藍達にとってはもっと痛烈なものであった。身体がグニャグニャと変型しているような錯覚。視界が何度も変わり、耳には不協和音が通り、脳の中に記憶され、常に流された。



「ううぅぅっ」

「くああぁっ」



四人は星のように落ち場所を求めていた。一向に辿り着かないではなく、一向に着地できない。春藍達に見えるわずかな視界変更は、フォーワールドの想像とはかけ離れた世界が広がっていた。妄想なんかでは記憶に残る景色は生まれない。



「ふあっ」



どんな体勢で吹っ飛んだか忘れてしまうほどの、四人に襲い掛かった突然の急ブレーキ。



ドガアアァァッ



春藍の部屋にライラが突っ込んだのとは比較にならないほどの衝撃。

この世界にいる者達はさぞかし驚き、その方向を見ただろう。



「たたたたっ…………みんな、いる?」

「くっ」

「っっ」



一番早く、意識を取り戻したライラは全員の無事を確認した。春藍、アレク、そしてまだ意識を失っているネセリアは傍にいてくれた。

そして、ライラは周囲を見渡した。一体どんな世界に飛んでしまったのか。今までにない移動の仕方に自分自身驚いている。とてつもない破壊を齎してここの世界に落ちてきていた。巨大なクレーターの中心にライラ達はいた。



「ここは」



クレーターの外の周囲の光景はジャングルであった。フォーワールドのような、ある種の平和がない世界。魔物達が生息していると言える、森の世界だった。


"不信な森"イビリィア。


それがこの世界の名称。そんな事はすぐにライラには分からないだろう。

また、四人のど派手な出現に、とても高い山の頂上からその光景を見ている男が2人いた。



「なんだぁ?今の衝撃は~?」

「さぁね。ただ、やってきた連中は"管理人"ではなさそうだよ」



黒いオールバックに左耳にイヤリングをつけ、身体にいくつかの獅子の刺青が刻まれた男と、長着を羽織ってズボンを履いているダサファッションの優男。



「また少し面白くなりそうじゃねぇか。俺達に似た連中がいるなんてよ。一度、戦ってみてぇもんだな。”管理人”を倒そうとして、できる人間はそういねぇからな」

「えー。僕はこんな虫と魔物だらけの世界は嫌いなんだけどな~。帰って良い?」



2人は、今は様子を見るに留めた。この世界での目的は一通り終わったからだ。

2人の後ろに死んでいる者達。オールバックの男が殺害した。

その死んでいる奴等は……



◇     ◇



ビヂヂィィッ



「ううぅっ……痛い痛い」


今、一番酷い状態にあるのはネセリアだ。ラッシに攻撃され、その怪我を負ったまま異世界へ移動してしまった。生死を彷徨った事だろう。だが、春藍の"創意工夫"の力によって"傷口だけは"とりあえず修復した。

土を人間の皮膚や血管、筋肉などに変えたのだ。



「今はこれだけが僕の精一杯です。どこかにもっと良い材料があれば」

「材料って何!?できるなら探してくるわ!」

「人間の皮膚や血管が欲しいです、できれば臓器も」

「アホかお前は!?そんな事できないわよ!」



スパコンっと叩いて春藍にツッコミするライラ。春藍にはなぜ叩かれたか分からなかった。一番良い素材はまさにそれなのに。凹む春藍にアレクは訊いた。



「ネセリアの命は繋いだのか?」

「今はです。できるなら、土とは違ったモノで改めて僕の"創意工夫"で修復しないと、土の中にバイ菌などが混入していたらネセリアの身体が異常を起こすと思います。僕の"創意工夫"は傷の修復がメインです」

「分かった。とにかく、よくやったな春藍」

「あ、いえ!」



春藍の話を聞いたライラはちょっとゾッとしている。実際、この目で"創意工夫"によってネセリアにできている傷がドンドン埋められていくが、その中に虫が入っていたら。寒気がするレベルではない。

蚯蚓とか気持ち悪い。あの土を身体の一部に変えたけど、虫は変わらないらしいから。

チラリと、自分の体を治された箇所を見た。土ではなく、なんかそれに近い物を変化させて埋めたとか後で訊いたが怖すぎる。時間が経てば身体と一体化できる素材を使ったとか、平然と言ってくれて"ありがとう"なんてよく考えんたら言えるわけがない。



「と、と、とにかくね!」

「おう」



ライラの思考は自分の用事よりも、彼等を優先させた。ある意味、自分の傷は春藍に握られているともとれる。第一、ここに連れて来てしまった以上。自分の仲間だ。本当は置いていった方が、ライラ的には都合が良かったと思う。



「今、ここがどんな世界か分からない。ネセリアを救えるような素材があるのかも分からない。管理人にも目をつけられている。状況はもう最悪だと思って行動しなきゃ行けないわね」


ライラ指揮の下、全員の意思と行動を確認。


「まずは街や村でも探して、どんな世界か確認する必要がある」


ライラが自分の魔力で、モクモクと四人が乗れるような大きさの雲を足元に作り出す。


「あまり魔力残っていないけど、ここは私が負担する」



ドヒュンッ



問答無用にライラを含めた四人は雲の上に乗って上空へと浮かぶ。雲に乗れるなんて馬鹿な話を実現させてくれる事に、春藍は目を丸くしてライラと下の景色、雲を見て触っていた。



「うわぁー、ふかふかな感触なのに僕達を支えて浮いてるなんて」


楽しそうな魔術を体験するのは初めてだ。向こうでは、ラッシの"ライヴバーン"の処刑しか見ていないから恐怖を感じる物だと思っていた。使い方や能力次第では全然違うのだと、口を開けて感じていた。



「喜んでないでアレクみたいに周りを見なさいよ、街を見つけないとネセリアを救えないんでしょ」

「ご、ごめんなさい」



叱られシュンとしながら周囲を見渡す春藍とアレク。ライラは自由自在にコントロールできるが、極力寄り道はしたくない。この世界を空から見て核心した。全世界が森や山で覆われているところであり、人間が多く住んでいる世界ではないと。自分のいた"吉原"という世界とほとんど同じ、魔物と人間が共存している世界。だが、ここはむしろ魔物が人間を支配しているような。過酷な世界ではないかと。

管理人に殺されるならともかく、魔物に殺されるなんてシャレにならない。くだらないゲームオーバーだ。だが、それがありえそう。今は自分だけじゃなく、仲間と連れているからだ。

自分がこの三人を守るだけの事を



「無理している顔を出すな」

「!」

「ネセリアだけじゃなく、お前も怪我人なんだぞ。お前がここで倒れただけで全滅だ」



アレクはライラのわずかに苦しそうな顔を読み取って警告してやった。アレク自身もライラとほぼ同じ事を思っているだろう。こんなくだらない死に方は拒否したいから、懸命に自分のできる事をしている。



「おい、あそこで煙が上がってねぇか?」

「え、……本当ですね!ですけど、何かあるんでしょうか?」



とても遠くの方、山の向こう側で上がっている灰色の煙を見れたアレクと春藍。



「春藍、よく覚えとけ。煙が何もないところじゃ起きないんだぞ。技術開発局だってよく煙が上がるだろう。人がいるという事だ」

「!じゃあ、あそこに街か村が」

「見える煙はいくつかあるから、ほどほどに多そうだが。こう山や森に囲まれた場所だ。大きな期待はよそう。それでも行くがな」



雲を操作するのはライラだ。希望があるとは思えないが、今はそんなわずかな物でも頼らなくていけない。そして、山を越えたところで煙を出している街が見えた。



「街ですね、随分小さく見えますけど」

「周りの森や山がでか過ぎなんだよ」

「!」



ライラは頭を抑え始めた。限界だ。


「ごめん、春藍。アレク……。緊急着陸するわ」


自分の魔力が底をついた。雲はゆっくりと落下していく、安全に着地を行うライラ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ