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若き旅人と狐耳の神様

作者: 空橋 駆

世の中を渡り、流れ流されながら行く。


都会と呼ばれたある種の隔離世界から遠くへと離れ、

田舎と呼ばれる広大な世界へと片足を突っ込んでみようと思い立ち、

関を越え荒れた道を歩いてきた。


何故そんな事を思ったのか。

半分は気まぐれで、残り半分は純粋な好奇心だ。



「なるほどこれが外の世界であるか」


この言葉、ここに来るまでに幾度口にしたか。


厳密に都会と田舎が区切られて長い時が過ぎた。

その間に人の手が殆ど入らぬ地は荒廃し自然へと還ったと聞いている。


その割には歩いてきた道の中に廃墟らしき物が多く見かけられたのだが、

街道沿いはまだそれなりに人の手が入っているのだろう。

総じて言えば、自然へと還っているのには違いないらしい。


そんな世の中を見て回る。

気の向くまま、進める所まで進む旅をしていた。



今回訪れた先は街道から更に少し離れた場所。


この地もまた、人が住み着かなくなって長いのだろう。

古くに敷かれた街道は未だに残っているとはいえ、

現在の街道からは離れた地に存在する、過去を伝える廃墟。


遥か昔に建てられたであろう屋敷の数々。

そこには確かに、人が生きた証があった。

今では秘境と呼んでも差し支えない。


「隠れ里でも、人が生きるには十分な地だったのだな」


ここに至るまでに歩いた街道の劣化具合からすると、

古くに切り開かれ、その上廃道になって日も浅いのだろうと感じられた。

村の中心部として栄えていたであろう空き地が、虚しい姿を残している。

見るに耐えないとまでは行かないが、是非とも栄えていた頃に訪れてみたかった。


主に、橋の跡がくっきりと残っている向こう側に建物が集中している。

何らかの災害の影響なのだろうか、かなり損壊が激しそうに見える。

対して、こちら側には数軒の家の跡がまだしっかりと残っている。

家財道具などは残っていないので、最近まで人が住んでいたのかもしれない。


とはいえ、この村は災害に遭った後、不便な地故に切り捨てられたのだろうか。

大きな橋があったと思われる場所が抉れていた。

水害……それも、随分と被害が大きそうだ。


「それでも人はそこに住もうと考える……か。

 生まれた地を記憶に持つのは、魚も人も同じなのかも知れないな」


そんな、独り言。

誰もいないはずの場所に向かって、呟いていた。


「面白い考え方だな……」


背後から女の声がして、振り向く。


「物の怪の類か……」


時として見えては成らぬ物が見える時もある。

狐耳を頭に付けた女が立っていた。


「そうなのかね。

 そちらがそう思うのならば、物の怪でも良いか」


その女が諦めた顔で言う。


「はぁ……」

「何故溜息をつく」

「こちらの事情など、知らずとも良い事だろう」


思った以上に落ち着いている相手を見て、

とうとうこの状況を現実として捉えねば成らなくなってしまった。


非現実的な事は認めたくなど無かったのに、

とうとう認めねばならなくなってしまったのか。


「安心すれば良い。

 人といざこざを起こしたいとは思っていないから」

「その言葉を信じる馬鹿はまずいない」

「信じてくれないのか?」

「会った直後に言われて普通は信じられると思うか?」


冷静に返してやる。

気に入らない事でも言えば、襲われかねない。


「現にこちらは何も仕掛けなかった」

「今から仕掛けるという公算は?」

「得体の知れない物を襲う気はないよ」


その言葉を信じられるとは思わない。

現に襲われていない以上、ある程度警戒は解いても良かろう。


「得体が知れないのはそちらではないのか……」

「そんな事を言われる筋合いは無い」


気が変わったと言われ襲われる可能性もあるが、

語り口からしても襲ってくるかのような雰囲気ではない。


まず、狐耳のいかにもひ弱そうな女だというのに、

どのような方法で襲い掛かってくるというのか。

油断は出来ないが、あまり考えすぎるのも良くなさそうだ。



「見えている物や世界が正しいと思うな……」


狐耳の女はまず、そう言った。


「余計な物が見えるのはそれだけで疲れる……

 特にお前みたいなのに絡まれるのが一番堪えるんだ」


最近、本来ならば見えないはずの物が見えてしまう事がある。

今回はその中でも最も面倒な相手を見てしまった。


「そうかそうか、それは済まなかったな」


悪びれる様子も無い癖に、何を言うか……

と、内心では毒づいたつもりだったはずなのだが、

相手の態度は意外とまともだった事に気付かされた。

今度は狐耳の神様から質問を受ける。


「わざわざ街道を歩いてこの地にまで来たのだろう。

 目的は、この村の跡地を見ることか?」

「大体は当たっている」

「ならば絡まれるのも仕方なかろう」


確かにその通りだが、好きで絡まれているわけではない。

反論できない程度に自業自得なのは言うまでもない。


「そしてこの村の跡地を見た」

「その通りだ」


何か含みがあるかのような一言。

頷いてはみたものの、相手の真意は解らない。


「それが、どうかしたのか?」

「ここが何処かは知らないのだろう?」

「知らないな、場所だけしか情報としては持っていない」


地図も殆ど持たずに歩いているのだから当然だろう。

ただ、古くに消えたであろう街道のみを辿って動いてきた。


「ならば教えてやろう」

「結構だ……」


咄嗟にそう答えたはずだった。


「聞かねば何も開かれぬぞ」

「何を開くのかは知らないが、異世界の扉と悟りの誘いならばお断りだ」


冗談交じりで答えてみる。

尤も、相手が相手故に半分程度は冗談では済んでいない所もあるのだが……


とはいえ、親切で色々と答えてくれそうな相手でもある。

価値のある情報などが手に入る可能性は十分に高いので、

あえてここで聞いてみるのも悪くは無い。

それでも、誘いに乗るほど軽い神経は持っていないつもりだ。


「今見えるこの地こそ、終わった地の始まり。

 人が捨てた世界で、人が忘れた場所」

「ここは廃道や廃村の成れの果てか……」


断言するにはまだ、風化度合いが足りていないとも思える。

だからこそ、そこに始まりという言葉を加えて呼んでいるのだろう。


「ここから人は生まれない」

「人を生み増やしたいのか?」

「この人に近き身として再び蘇った今ならば、

 人として再び寂れて廃れた地に命を吹き込めるかもしれぬ」

「それが物の怪の……願いか」


あえて、物の怪という言葉を使い女を呼んだ。

忘れられた地を取り戻そうという考えを受け入れるつもりは無い。


手に武器を持っていれば、退治する事も可能であっただろう。


「物の怪と言われたくはないわ……」

「ならば妖怪とでも呼べば良いか?」

「尚の事不可解な呼び方。改めて貰おうか」


不機嫌そうだが、これでも譲歩しているつもりだ。

明らかに人とは違う物が頭に乗っかっているだろう。


「土地神を知らぬ今の世の者達の一人なのだな」

「知っていたとしても、そんな大層な物には見えないな」


主に背とか、胸の辺りとか……


「失礼な事を考えておるでないぞ!」

「そういうことに関しては察しが良いのか」

「この体型を気にしておるだけの事……」


妖怪にしては嫌な雰囲気が無い。

その反応もまた、何処と無く人に似ている。


「謀ったな?」

「いや、正直に答えたのはそちらだ」

「う……うぬぬ……」


激昂して襲い掛かってくるかと思ったが、落ち込んでいた。

果てしない罪悪感が心の底から湧き上がって来るだけでなく、

妙に守りたくなる何かが彼女にはある。


「ま、まあこれ以上追求はしないでおこう」

「ほ、本当だな?」

「ああ」


変に機嫌を損ねても良い物は何も得られはしない。

藪を突いて蛇を出していては話も進まない。

涙目で訴えかけられているのは少し悪戯心を刺激されるが、

土地神相手にそんな事をすれば罰が当たりかねない。



とはいえ……だ。

話を聞けば聞くほど、意外と人慣れしている神様である。

狐耳のその姿からはあまり結びつかないかもしれないが、

身近な所で人を見守ってきたのであろう。


「余と交わる気はないか?」

「無い」

「女が男を誘惑してるのだぞ?

 何故応じようとしないのだ」

「物の怪を抱くほどの勇気は無い」


当たり前だ、厄介な事に首を突っ込むつもりは無い。

触らぬ神に祟り無しとよく言うではないか。


「ならば余の話し相手となってくれぬか」

「食い下がるな……」

「人の姿となれど、余を見つけられる者は幾許かしかおらぬ」

「それならば尚の事却下だ」


見えない者には、独り言を喋っているかのようにしか聞こえない。

そうなれば、祓われる可能性も十分にある。


「寂れた地に延々と取り残される。これほど辛き事は無いのだ」

「ならば寂れていない場所へ移れば良いだろう」

「その手があったか」


簡単に言ってしまったが……

言っている本人も知っている、簡単ではないはずだ。


「余は、そのままでは動けぬ」

「誰かに憑かなければ動けないという事か」

「確か、それで良いはず」


話として聞く限りは騙されているとしか思えないのだが、

行動としてはある程度信憑性は確保されている話……

故に、そこに悪意があるとはあまり思えなかった。


都市を作る際に、守護の神を近場から集める際に使われた術。

確かに、人に神を憑かせ新たな地に降ろしていた物とされている。

この狐耳の神はそれを求めているのだろう。


「一介の旅人がやるには、辛そうだ」

「方法を知るならば、やらぬとは言わせたくない」


妙に強気で推して来る。これは嫌な予感がしてならない。


「具体的な方法は知らない。

 ただ、見聞の一つとして知っていた程度」

「それで十分」


何らかの策を持っているからなのだろうか。


「余からの働き掛けで協力を仰ぐ以上、

 手順など複雑ではなかろう」

「なるほど、だがどちらにせよ耐えられねば……」


経験を積んだ巫女が器として動いているからこそ、

そのような手法を採る事が可能なのだ。

しかし、何よりもただの旅人が……


「余の姿が爪先まで見えているというのに何を言うか」

「それもそうか」


断ろうにも、状況的に追い詰められているのはこちらだ。

ここまでしっかりと狐耳の神の姿が見えており、

その上で更に好意まで持たれている……


確かに、これほど相応しい人間はいない。

気分としては、非常に複雑ではあるのだが……


「そんなに都合良く見つかるものではないぞ?」

「構わぬ」

「長い距離は動けないだけでなく、

 その間に鎮座できる場所は見つからないかもしれないぞ?」


正直、これは賭け以外の何物でもない。

付き合い切れない。だが……


「それでも、構わぬ」

「本当に、それで……」


しつこく問いかけを続けて粘ってみせる。

面倒な事に巻き込まれるのは嫌だというのに……

全く折れてくれそうに無い。


機嫌を損ねさせるなどの方法を使えば折れてくれるだろうか……

そう思ったが、説得されかねない。


「動かねば見つかりはせぬ」

「そこまでして……何を、求める?」


理由を知りたい。

そうすれば、諦めさせる方法も思いつく。

しかし神様の発言は、予想の斜め上を行っていた。


「人の笑顔だ」


負けた、と、思った。

その言葉を笑顔で言われてしまった。


ここで退くのは、責任を放棄するに等しかろう。


「仕方ない。探すとしよう……」

「任せた」


狐耳の神様の顔が、笑顔に変わった。

仕方ないと思う気持ちも、少し和らいだ気がした。



そして、そのまま狐耳の神は左手を出して、

こちらの胸元へとそれを近付けてきた。


「暖かいな、安らぐ心音は羨ましい……」

「お前は……何を言っているんだ?」


うっとりとした表情。

しかしそれを見ても意味が解らず、困窮する自分。


「人の女子ならば、そなたから離れたくないと駄々を捏ねたくなるほど……」

「そんな事も知れるというのか」


物の怪……いや、神の力は恐ろしい。


「心の音は人の要。心の熱は人の想い。

 双方共に優しき物を持っているからこそ、余の姿を見分けられたのかも知れぬな」

「褒められているのか?」

「褒めているし求めている。極上の美しい心に虜にされかねぬ。

 そなたが死ぬまでずっと共に居たいと思うほどに……」


時と場合を変えれば、喜ぶべき言葉だろう。

本当に、相手が相手でなければ……


「そんなに凄いのか」

「うむ」


惚けている顔を見ると、考え直した方が身の為かもしれないと思った。

それでも、賛同をした以上はやらねばならぬか。



「覚悟……もとい、準備は出来た」

「それでは、間借りさせてもらう」


差し出されていた左手が輝き、狐耳の神の姿が消えた。


(これほど居心地が良いとは……)


自身の変化は何一つ無かった。

ただ、神の一片をその身に引き受けただけ。


(眠っても、良いか?)


もう良い、勝手にしてくれ……


(そなたなら、そう言ってくれると思った。ありがとう)


思った事がどうやら伝わるのだろう。

どのような原理を持っているのかは知らないが……

会話らしき事が出来るとなれば、逃げるわけにも行かない。



その後、この村の跡地を去った。


狐耳の神は、殆ど語りかけては来なかった。

力があまり残されていないだろうか。

もしくは居心地が良いからなのだろうか……


何にせよ、今までと同じ静かな旅が続いた。

しかし、この近辺に村らしき跡は残されていない。

街道沿いに休憩所はあるが、人が疎らな場所故に規模も小さい。


そんな質素な旅。

今まで繰り返してきた旅の延長線の上にある物。

例えそこに神が居たとしても誰も気付きはしない。


目に見えるものしか信じられなくなった世の中。

見えぬ存在が疎かになり、都市では神々は忘れられかけた存在になっている。

それが嫌で都市を抜けた。始まりはそれだけだった。


田舎の地、村の数々を見てきたが、

まだ旅を続けねば本質を知ることは叶わないのだろう。



二日ばかり歩いただろうか。

新たなる街道から逸れ、旧街道から少し離れた先。


そこには小さな村が残されていると聞いた。

人々の会話を元に道を辿り、その場所へとようやく辿り着いた。


村に足を踏み入れて、先程まで寝ていた狐耳の神が目を覚ます。


(この村……守り神はおらぬな)


田舎の世界が未だに廃れずに残っているのは、

各地にまだ神々が息衝いており、

鎮座し護られた地に村が作られているからに他ならない。


(土地の神無き地に、栄えは無し……)


この村にはそれが無い。つまり脆弱になっている。

人は居るみたいだが、あまり外に出ていないのもそれが理由か。

寂れていく姿を見せられるのは、辛い。


ふと、道端で老婆に声を掛けられた。


「来訪者かね」

「ん……ああ、そうですが」

「こんな寂れた村にようこそ」


老婆はそう言って、一礼する。


「少し、話を聞かせてもらえないか」

「何が知りたいのかね」

「この村を護る神についての話です」


単刀直入に聞いてみた。

遠回しに聞いても仕方ない。


「外から来た者に教える事はしたくない」

「そうですか。

 ただ、参らせていただければと思い聞いたのですが」

「参拝を望むと言いますか……」

「各地の村を巡り、神宿る地を参る旅をしている」


これは、嘘偽りのない事実。

廃村と呼ばれた地区でも巡っているのは、

田舎の世界にある神々をもっと知りたかったからに他ならない。


「残念ながらこの村に守り神はおりません」

「ならば、その跡地だけでも見てみたい。

 経緯も教えてもらえれば、尚の事助かる」

「外の者には……」


仕方ない……か。

やはり、そう簡単に事情を明かしてなどくれはしない。

何せ、己の住む村の守り神を失っているのだから。


「この地を治めていた神が何者かは知らないが……

 強い力にてこの地を護り、治めていたのだろう?」

「それが知れるとは、大したもの……

 本当に参拝だけの旅人とは思えないね?」


老婆の目付きが変わった。


「知りたいならば、

 神社の場所を教えてくれないか」

「仕方ないか」


老婆は首を縦に振った。

ようやく、了承を取り付けた。


(この老婆、村の事情を詳しく知っているかも知れぬな)


それは、こちらも思っていた所だ。



山の中。

あまり大きいとはいえない神社。


その奥にあった、割られた巨石。


(ここに神がいた……)


そうなのか。


「新たなる都市を作るために、

 この村の守り神は奪われた……」

「ここに眠っていたのか……」

「失って既に半年は過ぎた。

 村は一気に寂れ、この有様となってしまった」


見た限りではあまり大きな変化は無かろう。

しかし、流れている気の違いと言えば良いのか……

とにかく、この村には力が感じられない。

それが、僅か半年で起こってしまう事だとは。


(見た目に騙されてはならぬと言ったはず)


なるほどな。

感じ取れる身からすれば、それが異常と知れる。

目で見えている範囲では……それを掴み取る事は難しい。


(この地、よき力が流れている……)


狐耳の神は、どうやらこの地に興味があるみたいだ。


(余は本来、静かな地を護る神として存在を作り出された。

 暴れ川を治める神の補佐は退屈で仕方なかったが、

 ここならば最大限に力を発揮できよう)


予感がするとまで言い切れるのならば、

これで場所を探す所までは上手く行ったのだろう。

次に行わなければならないのは、交渉するしか考えられない。


「こんな場所、見てもつまらないと思いますが?」

「いや、十分に参考になった」


老人は首を傾げた。

相手には伝わっていない事情があるから、仕方ない。


「率直に言おう。

 ここを治めたいと願う神が居るが、受け入れる気はあるか?」

「い、今、何と……」


やはり、驚いて平静を失うか。

確かに、かなり突拍子も無い事を言っているのは自覚している。


「他所に居た土地の守り神だが、

 このような場所を探していたと聞いている」

「ほ、本当か……

 唐突に言われてもそんな事は信じられな……」

「確かに、普通ならば信じられないか」


しかし事実なのだから困る。

現に今、その神と共にこの場所にやって来たのだ。


(論より証拠、とてもとても名残惜しいがそなたから離れるとしよう)


そんな声が聞こえたかと思うと、

目の前に再び、狐耳の神が光を纏って現れた。


「老婆よ、余の姿は、見えるか?」

「狐耳の……神?

 まさかこのような方と再び逢えるとは……」


どうやら、老人にも狐耳の神の姿は見えるらしい。


「そなたのお陰で、力を随分と取り戻せた。

 暫くの間、人と共に暮らせるかもしれぬ」

「居心地が良いのは、単に力の回復が容易だったからなのか?」

「違う、本当に離れたくないだけで……」


だからなのか。

実体となった後も何故かしっかりと手を握られている。


この際、そんな事はとりあえずどうでも良い。

それよりも、更に気になる事がある。


「ところで、再び逢ったとは?」

「以前は暴れ川の側にて居を構えていたが、

 数年前の水害にて住めなくなり、この地に居を構えた」

「やはり、見覚えがあると思えば……」


狐耳の神は、頭を深々と下げた。


「あの時は、苦労をかけさせてしまった。

 一人でも多くの者を救う事は叶ったが、

 その結果余は取り残されてしまった……」

「それでも、この地に来てくださった」


老婆は、狐耳の神に対して深々と礼を捧げていた。


「この者のお陰だ」

「ありがとうございます」


続けて、老婆がこちらに対して礼を捧げてくる。


「礼を言われるほどの事はしていない」

「そなたは……

 もう少し誇ってもよかろう」


こちらの認識としてはその程度の事だったのだが、

狐耳の神に結局窘められてしまった。

その姿を、老婆は楽しそうに見ている。


「それにこの地には、あの村からの移住者が多くおります。

 狐耳の神様がこの地に降りたとなれば、皆が喜ぶでしょう」


なるほど、ならば尚更この地は適しているのかもしれない。


「しかし……」


だが、狐耳の神は何かが不満らしい。


「何だ?」

「そなたからは絶対に離れたくないな」

「そこに拘るか」


先程から一切手を離してくれそうにない。

どうすれば良いんだ、これは。


「神に好かれるとは、光栄な事です。

 この地に居を構え、共に暮らしてみては?」

「いや、一介の旅人がそんな……」


断りたいのだが、断りたくて仕方ないのだが……


「余の力がこの地に馴染むまで構わぬ。

 共に居て欲しい。頼む、この通り……」

「是非ともこの村にて……」


まだ外の世界を巡り足りない。

ここで足を止めていてはならないのだ。


「見聞狭く、世の中を知らぬこの旅人は、

 これより遠い村を巡る旅路に戻りたいと考えている」

「それは、ここから去るという意味か?」

「そうだ」

「神様にあれほど寂しそうな顔をさせておきながら、

 それを振り切ってまで何処へ向かおうというのか」


老婆の言う事は間違ってはいない。

しかしこちらにも考えねばならぬことがある。

このまま歩みをここで止めてしまうわけには行かない。


故に、今ここで言わねばなるまい。


「狐耳の神に告ぐ。これより旅を再開し、

 見聞を広げ、満足した後、再びその前に現れよう」

「そう言って永久に余の元から逃げるつもりであろう?」

「そこまでは考えていなかった」

「なっ……」


正直、言われて気がついた。

確かに口実にして逃げる手段としては最善だろう。


「本心で言われてしまうとは思わなかった。

 疑った事、申し訳ない」


神様が申し訳無さそうな顔をしていた。


「いや、こちらの我が侭であるのは自覚している。

 謝らなくても良い」

「そういう訳にも行かぬ……」


本当に、神様にそんな事をさせるつもりは無い。

ただ、己の気が済むまで旅を続けてみたかった。それだけ。


「ここからあと、二年位回れば十分と考えている。

 何せ、都会での成人こそ迎えているが、直後に旅を始めたので、

 まだ殆どの場所を巡っていない」

「旅の者は、まだまだ何も知らぬ若者……

 過度に縛り付けるは、世の為になりませぬ」


老婆はそう言って、狐耳の神を諭した。


「そうは言えども……余は、不安を隠せぬ。

 そなたを失いかねないという考えが頭を過ぎり続けている。

 この村の者が余を受け入れてくれるかも判らぬ」

「狐耳の神様、心配は無用。

 この村はあなたを快く迎えてくれる」


老婆は、寂しそうな顔をする狐耳の神にそう言った。


「旅はまだ半ば過ぎ、戻る場所も残されているか判らぬ身。

 故に、この地を戻るべき場所にしたい。

 だからこそ、待っていて欲しいのだ」

「どうしても行くのか」

「ああ」


泣きそうな顔をする狐耳の神。

確かに、辛い事をさせてしまうとは思っている。


「ならば……」


そっと、狐耳の神は手を差し出す。


「常に側に居ると思い、旅を続けて欲しい」

「これは……お守りか」


手の中に、お守りが渡されてきた。


「余の力を分け与えた品。それがそなたを護る」

「なるほど」


相当力の篭ったお守りだ。

恐らく、普通の手段で作成された代物ではない。


「それを通じて、余もまたそなたを感じられる。

 心行くまで見聞を深め、早く帰ってきてほしい……」

「確かに、受け取った」


老婆はそのやり取りを、何も言わずに見ていたが……


「約束の瞬間、確かに見届けました。

 ただ、せめてこの村の皆に挨拶をしてから……

 旅立つならば、それからにして欲しい。

 新しい神様の紹介もせねばなりませんから」

「老婆の言う通りだな」

「それまでは、ここに居るしかないか」


その後、一通りの挨拶を済ませた後。


「気をつけて往け」

「ああ、行って来る」


狐耳の神に見送られて、再び一介の旅人へと戻った。

懐に忍ばせた、お守りと共に。




二年の月日が本当に経っていた。

田舎の世界を巡り、色々な場所を見て回った。


都市という世界はやはり各地に作られて続けており、

その範囲や数を着々と増やし続けている事も実際に目で見て確かめた。

それでも、何らかの理由で根本となる力を壊されない限り、

田舎という世界はあらゆる場所で生き続けている事を知った。


いずれ、各地の村を巡り知った事を一つの形にせねばなるまい。

都会という世界を作り上げ、そこに引き篭もった者達と、

広大なる田舎の世界で生き続け、内に秘めた力を知らぬ者達。

そのどちらにおいても、互いの世界は興味深い


一つに纏め上げる事で、相互の理解を加速させる。

漠然としているだけのように見えるかもしれないが、

外の世界は、存外面白いのだと知らせねばならない。


だが、それはいずれ時間を掛けてやれば良い。

まだまだ、体験せねば知れぬ物事は多い。


二年の旅路を終えた後は、田舎にて生活をする。

旅人としてではなく、村人として暫く生きてみなければ。

その中で感じ得た事を含めて、知らせてみようではないか。


既に、何処でそれを為す予定かは決めている。

約束を違えるつもりは無いのだから。



久しぶりだ。

随分と心地良い気の流れる村にやって来た。

過去に一度訪れた時は随分と雰囲気が変わっている。


子供達の笑い声が聞こえ、

人々の明るい話し声も聞こえてくる、活気に溢れた村がそこにあった。


一人の女性が声を掛けてきた。ここに住む村人であろう。


「来訪者の方ですか?」

「ああ、一介の旅人だ……

 少し、この村で休みを取らせて貰いたい」

「宿でしたら、この先の広場の向こう側にありますよ。

 簡素な宿ですが、疲れを癒していただければ……」


いつの間にか、そんな施設まで作られていたのか。

月日の流れはによる変化に驚くばかりだ……


「宿は不要だ。茶屋はあるか?」

「茶屋も広場の所の近くにあります。

 実際に広場にまで行けば見えると思いますが、案内が必要でしょうか?」

「いや、構わなくて良い。気遣いだけはありがたく頂く」

「はい、それでは」


そう言うと、女性はそのまま立ち去っていった。


やはり、良い村だと思った。

強固な輪により、互いが結び付き合っている。

都会とは違った、新たな側面の世界を形成しつつある力に満ちた村。

これほどまでに変わるとは、思ってなどいなかった。


広場にやって来ると、壮年の男に声を掛けられた。


「旅人の方かね」

「あ……そうだが」

「何処か行きたい場所でもあるのか?

 先程から何かを探しているかのようだが」

「この村の……守り神は何処に居る?」

「神社へ行きたいのか」

「そうだ」


不思議な物を見る目をされていた事に気付いた。

恐らくこの村では、相当厳しく管理されている可能性が高い。


「あいにく、教える事はできぬ。

 旅の安全祈願ならば、村の入り口の近くから行ける御堂を頼ってくれ」

「そうか」


村の入り口近くの御堂……

先程見かけなかったのだが、奥まった場所にあったのだろう。


「神社の本殿には近寄ってはならないのか」

「この村の守り神の住む場所は厳重に護られている。

 外から来た人間をそう簡単に信用はしない。

 故に、立ち入りは許可できないのだ」


そうか、ならば仕方ないか……


「それならば御堂だけでも参らせて貰うとする。

 そちらの事情があるならば仕方ない、心配は無用だ」


案内をしてくれた男から離れて、御堂へ向かった。



小さきながらも、ここにも守り神が居る。

御堂を見た瞬間感じたのは、そんな事だった。


ここにも神が鎮座しているのは間違いないのだが、

一体それは何処からか引っ張ってきたのだろうか。

詳しい事は知らないが、かなり良い力を持っている。


あの狐耳の神と関わってからだろうか。

神の力の流れなどをより身近に感じられる。

体質として何かが植えつけられたか、それとも開花したのか。


参れば知れる気がして、手早く参る。


立ち去ろうと思った時、

誰かが後ろに居るのを感じて、振り向いた。


「そなた、やはり戻ってきてくれたのか……」


笑顔を浮かべる狐耳の神が居た。


「約束を違えたつもりはない。

 それよりも、こんな場所に降りてきて大丈夫なのか?」

「心配は要らぬ。この村には既に私以外の守り神も居る。

 彼らが、私やそなたを助けてくれよう」

「私……か」


随分と変わってしまったな。

受ける印象も、前よりも随分と柔和になった気がする。

ついでに体つきも随分と大人になった。

本当にあの時出逢った狐耳の神なのだろうかと疑いたくなるほどに。


「二年の間に、村人達と触れ合った。

 そして、この場に眠る小さな神々とも話をしてきた。

 そなたが外で見聞を広めるのと同じように……」


狐耳の神もまた、学び、力をつけていた。

素晴らしい事ではないか。


「そうか、だから自分の事を余とは呼ばないんだな」

「あれは補佐をやっている時に刷り込まれた話し方。

 なかなか抜けなくて困っていたが、ようやく慣れた」


雰囲気もやはり違う。

芯はそのままでありながら良い部分が進化した感じだ。

それが、姿にも言葉にも反映されているのだろう。


「本来の姿に近付いた、今の私をもっと見て欲しい」

「見えている、良く見えている……

 神として、磨き上げられたというべきかな」


口では言えないが、女としても素晴らしくなっている。

本当に、神様でなければ良い嫁になるであろう。


「ありがとう」


それでも、彼女は神であるのだ。



沈黙が、支配する。

お互い、何を言えば良いのか判らないのだろう。


「そなたは、この後どうするのだ?

 私としては、長く、どうか末永くこの村に留まって欲しい」


顔を真っ赤にして照れながら言ってくれる姿を見て、

聞いているこちらもまた、随分と照れ臭くなってしまった。


「実は、その為にここに来た。

 少し長い期間、この村にて生きてみたいと思う」

「そうか、それは嬉しい」


とはいえ……だ。


「しかし、村の人々が許してくれねば難しいと思っている」

「その点は心配要らぬ。

 そなたの優しさを籠めた気は、この村に必要な物」

「随分と……買ってくれているんだな」


褒められるのは慣れていないので、あまり素直に喜べないのは仕方ない。

だが、嬉しいとは思っている。


「実は、この村に入ってきた瞬間から溢れて伝わっていて……

 人々はそれに惹かれていたのだ」

「そうなのか?」

「だからこそ私はここで待っていた。

 村人が居る所で話すと人が集まりすぎるかもしれない」


その気遣いに感謝しないといけないな。



「もう一度、そなたの心の音が聞いてみたい」


唐突に、狐耳の神はそう言った。


だが、こちらとしては少し複雑な気分だった。

こちらが見聞を広げた結果、

前のような優しい心を失っているかもしれない……


「変化が大きすぎて、嫌われてしまうかもしれないな。

 それでも、その判断はお前に任せる」

「大丈夫、心配しないで良い。

 近付くだけで感じ取れるくらい強い……」


そう言って、彼女は笑顔でどんどん近付いてくる。

そしてそのまま、その手をこちらの胸元に置いてきた。


「うん……」

「どうした?」

「色々と、変わっているな……」

「そう……か」


やはり、色々と変わってしまうのだ。

二年の時が流れたのだ。当たり前だろう……


「深く、広く、優しくなっているではないか」


蕩けた笑顔で、狐耳の神様は言う。

事実だけを受け取れば、嬉しいと思っていたのだが……


「もっと知りたいから、抱きつかせてくれぬか?」

「唐突に何を言っているんだ」


上目遣いで、そんな事を求めてきた。

つまり、以前よりも惹かれている事になる。


「傍に居てほしい。もしそれが叶わなくとも……

 この村に居てくれるだけでも、嬉しい」

「先程も言ったが、この村にて過ごすつもりで来た。

 だが、傍には居れそうにない」

「それでも……良い」


彼女の誘惑は、本当に素直で一番心に響いた。

しかし、その手を取るわけにはいかない。


書いて、知らさねばなるまい。

読んで、聞かせねばなるまい。


都会という自ら作り出した殻に引き篭もった者達に、

田舎という広く素晴らしい世界があるのだという事を。


「それに、神と人では釣り合わない。

 現実を捨ててまで求めるのならば、愚かな神と呼ばれても仕方なかろう」

「私が愚かと呼ばれるのは構わない。

 しかし、好いた者の傍に居たいと……」

「止せ、それ以上は言っては……」


好いた者……か。

それでも、交わる事は許されないのだろう。


「好いた者の傍に居たいと思う心を神が持ってはいけないのか!」


そんな思いを知らず、彼女は、ただ思いのまま叫んだ。


「恋は人を狂わせる。神までも狂わせる。

 この地を治める神ならば、何が最善か知っているのだろう?」


長き旅の中で、幾つもの村を巡って知った事。

神と人とはまず、結ばれなどしないもの。


「それでも、結ばれた者は数多く要るはず!」

「ぐっ……」


いや、基本的には結ばれない物だろう。


「たとえ惹かれたとしても、悲恋に終わるはずだ」

「そんな……嘘では、無いのか?」


狐耳の神は悲しげな顔をする。しかしこれは必然……

幸せに結ばれている結末が混じっていたが、

そんな物はごく一部の例外……


「妙に自信が無くなったのだが、どうしてだろうか」


思えば、思い出せる限りの伝え聞いた話の中に悲恋は無く、

半分以上が幸せな結末へ辿り着いた話になっている。

悲恋になるのは、ただの言い伝えなのかもしれない。



「しかし、代償が如何程になるか見当が……」


一応それでも、無条件に結ばれるなんて事は無く、

その代わりに代償として色々な何かを失うのだが……


「無い、そんな物は必要ない」

「そんな馬鹿な話があるか!」


絶対に、無いはずだ。

そう思ったのに、嫌な予感が先程からするのは何故だろうか。


「私を一度受け入れて、この地にまで運んで貰った。

 ただそれだけでも、返せないほどの恩義を感じているのだ。

 そなたと結ばれるのに何を犠牲にしなければならない?」

「そういえば……」


言われて、納得した。

そもそもこの場合、自分は器になる事を本人から頼まれた身であり、

更に助けた恩がある相手になるのか。


「そなたへの礼として、

 そなたから私を求めた上で結ばれてしまえば何の問題も無かろう」


非の打ち所が無い程の完璧な答えだった。

礼として自分を捧げるなんて、発想からしてとんでもない。


「それでも多分何かを犠牲にしなければ……」

「受け入れればそこで犠牲になる物がある」


笑顔で答えられる。

何かとんでもない根拠を叩きつけられそうだ。

恐る恐る、聞いてみるしかない。


「何が犠牲になる……」

「そなたの、旅人という立場。

 これを失うのだからそなたにとっては相当大きな事であろう?」

「それは……」


旅人としての立場から、田舎の世界を知らせようと思った。

つまりその計画全てが打ち砕かれることになる。

確かにそれは、決して小さくない犠牲となるであろう。

人生全てを、彼女の物として捧げるのだから。


「そなたの心も、お守りを通して少しだけ伝わっている。

 だからこそ……」


ここまで言われてしまえば、もう後には引けないだろう。

と、そこに一人の女の子がやってくる。


「そこの旅人……」

「ん、どうした?」

「一つだけ忠告するよ。

 既に自分が神様の領域に足を踏み入れている自覚、ある?」

「唐突に何を言ってるんだ……

 しかも子供が……」


それを聞いた狐耳の神様が笑う。


「この娘が、この御堂に宿る神様。

 力もついてきたので、形になった」

「そこの旅人のお陰」


こちらを指差して、そう答える。

本当に、どういう意味だと問い詰めたい所だが……


「こんなとんでもない人、外に出させたら駄目。

 下手に火をつけて暴走なんかさせたら大混乱になる」

「それなら余計に私の傍に居た方が安全。

 でも、半分は私の責任?」

「うん」


女の子がそう答えると、猫耳の神様は反省していた。

その様子から、何となく嫌な予感がしていた。


「なるほど……

 結構不味い状態なのか」

「多分、旅人の自覚している以上」


冗談じゃない……とは思うが……


「恐らく、旅をして磨かれて開花した……

 私の選択は間違っていなかった」

「素質は非常に高い物を持っていたから、

 今でも十分神様を名乗れる」

「そこまで凄いのか……」


聞いてみるとかなりとんでもない状態になっていた。

神様を運ぶ器になって、いつの間にか神様の領域に足を踏み込んでいたわけだ。


「それに、私を見つけ出した時から既に力は持っていた……」

「具現化か……」

「そういうこと」


確かに、もし最初にそれを言われたら絶対に信じなかったが、

ここまで話を聞いて現実を見た今ならば信じられる。


「これ以上我を張るのも無理そうだ」


観念した。素直に運命を受け入れる事にしよう。


「これでようやく、一緒になれる……」

「おめでとう、念願が叶ったね」

「仕方ないな、共に一緒に居る事を誓おう」


彼女を抱きしめて、思う。

果たして、どれだけの時間……

彼女と共に生き続けることになるのだろうか。

まあ……それでも、良いか。幸せだからそれ以上を求める必要は無さそうだ。




それから三百年の月日が過ぎて尚、

この村は大いなる田舎として賑わっている。


何処かの村では戦乱が起き、

何処かの都市は崩壊したと伝えられているが、

この村はいつまでも平穏無事な場所として栄えていた。


それもこれも、ここは神々の集まる地として有名となり、

その中でも特に力が強いとされる”恋する狐耳の神様”と、

”旅人を見守る神様”と呼ばれる二人の神様が、

飽きることなく延々と愛し合い、

仲睦まじくこの地を治めているからであると伝えられている。


また、彼らが交わり生まれた神々がこの地より巣立った結果、

神々にとっての聖なる地として崇められているとも言われている。


相変わらず、当面は世の中は変わらないままだろう。

田舎と都会の世界に分裂した後も、

どちらかが生き残るわけでもなく、どちらかが消えることも無いままで共存している。


それはまだ、神々がこの世界をそれなりに楽しんでいるから……

きっと、そういう事である。


2013/10/18 誤字修正

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― 新着の感想 ―
[一言] とても良い話でした。 あと、恋する狐の神様が終始可愛かったです。
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