4話 ダンジョンを成長させました
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そして、それから1週間が経った。
あれから僕は冒険者が来るたびにダンジョンの調整を行い、なんとか冒険者を退けたり捕まえたり殺したりした。いやー人が死ぬのって結構あっけないものだね。最初の方は冒険者が僕のダンジョンのモンスターに殺されるたびに吐いていたけど、今では特に何も思わなくなった。むしろこれで邪魔者が消えたと喜ぶようになった。慣れって怖いね。もっとも慣れないと生きていけないのだろうけれども。
捕まえた冒険者は全部売りに出しました。もちろん綺麗な女性もいたけれど、どうも自分の手元に置いておきたいとは思わなかったんだ。そもそも手元に置いておく意味ってなんだろうね。命令しても絶対服従ではなくて、せいぜい動きを拘束するしかできない。奴隷みたいに命令を聞かせることができるなら、兵士としてダンジョンに入れておくのもありだけど、拘束しておくしかできない冒険者に何の意味を見い出せと。だったら売ってお金を貯めたほうがいいじゃないか。お金が貯まればダンジョンを強化できるからね。
僕は手に入れたお金と魔力を使ってどんどんとダンジョンを強化していった。
『メインステータス』
『カタケ・ダンジョン』
ダンジョンLV.3
性質:未定
階層:3階
モンスター:植物系・虫系混合
保持魔力:2500
管理者:カタケ・タンハシ
『管理者ステータス』
管理者:カタケ・タンハシ
Lv.3
称号:初級ダンジョン管理者
スキル:自動魔力吸収(小)
>1日辺り10魔力を自動的に手に入れることができる。
キノコラバー
>キノコを愛する存在であることの証明。植物系キノコ属のモンスターの設置魔力を半分にする。
また、キノコに愛された存在であるがため、命の危険に晒されたときにキノコは貴方を迷いなく助けるであろう。
『モンスターステータス』
この画面ではモンスターの設置を行うことができます。
カタケ様が今設置しているモンスターはこちらです。
『スモールマッシュルーム』
『ポイズンダケ』
『人食いマイタケ』
『鬼食いマイタケ』
『猛々しい茸』
『荒ぶる茸』
『ニトロ茸』
『エアウッド』
『針ウッド』
『吊りツリー』
『ザッソー』
『ヤッソー』
『クッソー』
『齧り虫』
『名状しがたきG』
『フングスキャタピラ』
『構造ステータス』
この画面ではダンジョンの構造を改造したり物を設置したりすることができます。
階層:3階(中2階あり)
状態:アリの巣状
ざっとこんな感じだ。
僕はこの時ダンジョン経営なんて簡単だと錯覚していた。ダンジョンをぽいっと作って冒険者が来るのを待っていれば勝手にお金と魔力が貯まっていく、僕は特に何もしなくていい簡単な仕事だ、と。
それが間違いだと気が付いた時はすでに遅かった。
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ダンジョン経営して一週間が経ち、僕自身ダンジョン経営に慣れてきたある日のこと。
僕はダンジョンにやって来た冒険者をウィンドウ越しに眺めていた。
6人パーティで、前衛は4人、後衛2人。前衛の一人が身軽な格好をしているところから、その人は索敵するシーフだろう。残りの3人は金属の鎧に身を包み、剣の柄に手を当てていた。後衛の2人はどちらも杖を持って、いつでも魔法が撃てるよう身構えていた。
なかなかの強さを持っているのが見て取れた。
そのパーティは目の前に立ちはだかる障害を次々と乗り越えていった。
入口にあった毒を撒く仕掛けを魔法使いの一人が焼き払う。
モンスターがやってくるのをシーフが事前に察知してパーティに伝達し、襲い掛かるモンスターを何の問題もなく切り捨てる。
至るところにあるトラップを時に知略を持って、時に強引に力技で突破していった。
そして気が付けば、そのパーティはダンジョンストーンのある部屋の前までたどり着いていた。
ダンジョンストーンのある部屋の前に守護者として一番強力な『フングスキャタピラ』を設置していた。このモンスターは本体は小さなキノコで、いろいろなモンスターの脳に寄生してその体を操る。このキノコが寄生しているのは『名状しがたきG』。痛みを感じない『フングスキャタピラ』だからこそ、ただの『名状しがたきG』よりも強力な突撃が繰り出せる。
何体もの『フングスキャタピラ』に寄生された『名状しがたきG』が冒険者パーティに飛び掛かるのが僕の視界からも見えた。
しかし、そのパーティは大した怪我を負うことなく『フングスキャタピラ』に寄生された『名状しがたきG』を倒した。
「くっ、最後の手段……!」
僕はダンジョンストーンのある部屋前に設置してある仕掛けを作動させた。本当ならこれを使うとダンジョンの中が荒れ果ててしまう代物だから使いたくないものだったが、ダンジョンの危機が掛かっている状況で使わないという選択肢を選ぶことはなかった。
「いけ!」
僕はウィンドウ越しに状況を見守る。
ここに設置された仕掛けは『ニトロ茸』と『クッソー』。『クッソー』は常に細かい粉を吹きだす草で、臭いにおいを放つ。『ニトロ茸』は火薬が詰まっており、何か衝撃が与えられると途端に爆発するキノコである。この『ニトロ茸』は外部から衝撃を与えられる以外にも、ダンジョンマスターである僕が命じれば爆発する優れものだ。
お分かりだろうか。
僕はこれらで粉塵爆発を起こそうとしているのだ。
粉っぽい部屋で『ニトロ茸』を爆発させれば、粉に引火してたちまち部屋中が爆発の嵐に包まれる。
ダンジョンの部屋自体は固い素材でできていて傷つけることができないが、中にあるものはひとたまりもないだろう。
僕は轟音に耳を塞ぎ、状況をただ見守る。
きっとあの冒険者たちは防ぐこともできずに身を散り散りにされることだろう。
しかし、僕の予想は裏切られた。
魔法使いの一人が『ニトロ茸』が爆発する前に結界を張り、パーティ全員を爆風の嵐から身を守ったのだった。
爆風が収まり、そのパーティはダンジョンストーンのある部屋に押し入り、うなだれる僕の目の前に現れた。
一人の剣士が僕に近寄り剣を振り上げた。
僕の人生はここで終焉を迎えたという訳だ。
次回更新は未定です。
書きあがり次第更新します。