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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第61話 「隣の席より近い距離」

三年B組になって一週間。

クラスの空気も、 少しずつ固まってきていた。

最初は武田雷斗を遠巻きに見ていたクラスメイトたちも、 最近は少し慣れてきている。

理由は単純だった。

篠田玲緒菜がいるから。

篠田玲緒菜武田雷斗

玲緒菜が普通に話す。

笑う。 ツッコむ。 怒る。

それを見ているうちに、 周囲も気づき始めた。

――武田って、思ったより普通なんだ。

もちろん怖い時は怖い。

目つきは悪いし、 態度もぶっきらぼう。

でも。

玲緒菜相手の時だけ、 空気が少し違う。

それがクラス全体に、 なんとなく伝わり始めていた。

昼休み。

玲緒菜は自分の席で、 購買のパンを開けていた。

「……クリーム潰れてる」

小さく落ち込む。

後ろから声。

「雑に鞄入れるからだろ」

「うるさい」

雷斗は椅子を後ろ向きにして、 頬杖をついていた。

その距離が近い。

玲緒菜は未だに慣れない。

前の席の女子、 結衣がニヤニヤしながら言う。

結衣

「ねえ篠田さん」

「なに?」

「もう付き合ってる?」

玲緒菜がパンを落としかける。

「っ!!?」

雷斗は無反応。

玲緒菜だけ大混乱。

「な、なんでそうなるの!?」

結衣は笑う。

「いやだって距離感」

隣の女子も頷く。

「武田くん、篠田さんといる時だけ喋るし」

「あと普通に名前呼び」

「それ!」

玲緒菜は顔を真っ赤にする。

「ち、違うって!」

後ろから低い声。

「別に否定しなくてもよくね」

玲緒菜が固まる。

数秒遅れて振り返る。

「……え?」

雷斗は眠そうな顔のまま。

「噂されるくらいどうでもいいだろ」

「いやいやいや!」 「どうでもよくないから!」

結衣たちは完全に盛り上がる。

「うわー!」 「その返し強い!」

玲緒菜は頭を抱えた。

「なんで雷斗くん平然としてるの……!」

雷斗はパンを一口食べる。

「お前が騒ぎすぎ」

「騒ぐよ普通!」

「そうか?」

「そうだよ!!」

教室の数人が笑う。

もう最近、 このやり取りが日常になっていた。

その時。

教室のドアが開く。

「玲緒菜ー!」

聞き慣れた声。

茉優だった。

茉優

その後ろには兼次郎もいる。

兼次郎

玲緒菜が手を振る。

「どうしたの?」

茉優は教室へ入ってくるなり、 ニヤニヤした。

「特進で噂になってるよ」

玲緒菜の嫌な予感がする。

「……何の」

茉優は楽しそうに言った。

「“普通科にほぼ付き合ってる二人いる”って」

玲緒菜が机に突っ伏した。

「もうやだぁぁ……!」

兼次郎が苦笑する。

「かなり有名」

「なんで!?」

「武田が目立つから」

確かに。

雷斗は良くも悪くも目立つ。

しかも最近、 玲緒菜といることが増えた。

噂になるには十分だった。

玲緒菜が顔を隠していると、 茉優がふと真顔になる。

「でもさ」

「……なに」

「前よりすごい自然だよね、二人」

玲緒菜が少し止まる。

茉優は優しく笑った。

「無理してる感じがない」

兼次郎も静かに頷く。

「見てて普通に安心する」

玲緒菜は少しだけ視線を落とす。

そんなふうに見えているんだ。

雷斗は相変わらず無言。

でも。

机に頬杖をついたまま、 少しだけ目を細めていた。

茉優がそれを見逃さない。

「武田くん」

「ん」

「玲緒菜のこと好きでしょ」

教室が止まった。

玲緒菜の思考も止まった。

「っっっ!!!?」

雷斗は数秒黙る。

茉優はニヤニヤ。

兼次郎は苦笑。

クラスメイトたちは息を呑む。

そして。

雷斗は玲緒菜をちらっと見た。

玲緒菜は真っ赤になって固まっている。

その顔を見たあと。

雷斗は小さく笑って言った。

「……どうだろうな」

その瞬間。

教室が爆発した。

「うわぁぁぁ!!」 「それもう答えじゃん!」 「武田くんズル!!」

玲緒菜は完全に限界だった。

「む、無理!!」

立ち上がって教室を飛び出す。

廊下へ逃げる。

後ろから笑い声。

そして数秒後。

教室のドアが開く音。

「おい」

追いかけてきたのは、 当然のように雷斗だった。

玲緒菜は顔を真っ赤にしたまま振り返る。

「なんであんなこと言うの!?」

「何が」

「“どうだろうな”って!!」

雷斗は少し考える。

それから。

「否定したら嫌だったか」

玲緒菜の息が止まる。

廊下が静かになる。

心臓だけがうるさい。

雷斗は玲緒菜を見る。

真っ直ぐ。

逃がさないみたいに。

玲緒菜は何も言えなくなる。

その反応を見て、 雷斗は小さく息を吐いた。

「……やっぱ分かりやすい」

「っ……!」

玲緒菜は顔を隠した。

もう。

隣の席より、 ずっと近い場所まで来てしまっていた。

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