表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
461/472

第61話『二丁の静寂』

映画の撮影が一段落した数日後。

M&M COMPANY本社は、いつもより少し落ち着いていた。

結衣が次の台本を整理している横で、真優がスマホを見て固まる。

「……え、これ本気?」

結衣が顔を上げる。

「どうしたんですか?」

真優はそのまま画面を差し出す。

そこには一行だけニュースがあった。

『美優、アクション映画主演決定』

結衣は一瞬止まる。

「……美優さんが?」

その時。

ドアが開く。

本人登場。

美優はいつも通り無表情だった。

真優がすぐ聞く。

「これ、何」

美優は短く言う。

「決まった」

結衣は目を丸くする。

「アクション映画……?」

美優は頷く。

「そう」

さらに一言。

「二丁拳銃」

部屋が静かになる。

真優がゆっくり言う。

「……え、急に派手じゃない?」

美優は淡々と返す。

「役だから」

結衣は少し想像する。

(美優さんが……拳銃……)

想像した瞬間、現実味がなさすぎて逆に怖い。

数週間後。

撮影スタジオ。

そこは映画現場とは違う空気だった。

鉄骨セット。 煙。 破壊された壁。

完全に“戦場”だった。

美優は黒い衣装に身を包んで立っていた。

手には二丁の拳銃。

無駄がない立ち姿。

監督が言う。

「じゃあリハいくよ」

カメラが回る。

——開始。

敵役が突っ込んでくる。

その瞬間。

美優は動く。

速い。

無駄がない。

一歩も下がらない。

二丁拳銃が同時に火を吹く。

ドン、ドン。

間。

もう一発。

ドン。

動きが“音楽”のように正確だった。

結衣は別室モニターで見ていた。

「……え?」

真優が横で笑う。

「人間じゃなくない?」

画面の中の美優は、静かだった。

走らない。 叫ばない。 表情もほぼ変わらない。

それなのに——全部を支配していた。

カット。

監督が思わず言う。

「今の、一発OKでいこう」

スタッフがざわつく。

その後も同じだった。

ジャンプ。 回避。 射撃。

すべてが一発で決まる。

ミスがない。

感情すらノイズにならない芝居。

結衣は小さく呟く。

「強すぎませんか……?」

真優が頷く。

「これは別ジャンル」

撮影の合間。

麗華が現場に顔を出す。

「やば」

それだけ言って笑う。

「美優ちゃん、それ反則だよ」

美優は銃を下ろしながら言う。

「まだ終わってない」

麗華が首を傾げる。

「何が?」

美優は視線を上げる。

「完成してない」

その言葉に、麗華は少しだけ目を細める。

「ストイックすぎ」

美優は短く返す。

「普通」

その“普通”が一番怖い。

結衣はモニター越しに見ながら思う。

(この人たち、レベル違う)

凛は“圧”。

麗華は“支配”。

美優は“無音の強さ”。

じゃあ自分は——?

その答えはまだ出ない。

夜。

撮影終了後。

美優は銃のチェックをしていた。

真優が横に立つ。

「楽しい?」

美優は少し間を置く。

「楽しいかは分からない」

「でも」

銃を置く。

「正しい」

真優は小さく笑う。

「らしい答え」

その時。

結衣が遠くから見ている。

美優は気づいて言う。

「見てた?」

結衣は頷く。

「かっこよすぎました……」

美優は一言。

「まだ途中」

その言葉が、結衣の胸に残る。

(まただ)

みんな“途中”にいる。

そして誰も、止まっていない。

その夜。

結衣はノートに書く。

『私はまだ何者でもない』

その下にもう一行。

『でも、ここにいる』

ページを閉じる。

外では風が鳴っていた。

それぞれの戦いは、まだ続いている。

第62話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ