第50話「双子主人公デビュー」
主人公役合格から二週間後。
ついに。
アニメ収録初日。
真優
「眠れなかった」
美優
「私も」
真優
「三時間」
美優
「二時間」
真優
「負けた」
美優
「勝負じゃない」
いつものやり取り。
しかし。
今日は特別だった。
人生初の主人公収録。
そして。
双子での主演作品。
アフレコスタジオ前。
真優
「ここか……」
美優
「緊張するね」
深呼吸。
ドアを開ける。
中には。
ベテラン声優。
人気声優。
若手実力派。
たくさんの出演者たち。
真優
「ひぃ……」
美優
「落ち着いて」
真優
「無理」
その時。
「おはよう」
聞き覚えのある声。
振り返る。
そこには。
一ノ瀬葵
真優
「葵さん!」
美優
「久しぶり」
葵
「二人とも主人公おめでとう」
真優
「ありがとう!」
美優
「ありがとう」
葵
「ちなみに私も受かった」
真優
「え?」
美優
「本当に?」
葵
「ライバルキャラ役」
真優
「すごい!」
美優
「おめでとう」
葵
「負けないよ」
真優
「こっちも!」
収録前から火花が散る。
そして。
監督が入ってくる。
監督
「皆さんおはようございます」
全員
「おはようございます!」
監督
「本日から収録開始です」
スタジオの空気が引き締まる。
真優
(始まる……)
美優
(いよいよ)
台本を開く。
そこには。
主人公。
天城ひかり。
真優の名前。
そして。
天城あかり。
美優の名前。
真優
「本当に主人公だ」
美優
「うん」
少しだけ目が潤む。
夢だった。
何年も。
ずっと。
目指してきた場所。
そして。
収録開始。
第一話。
主人公の登場シーン。
監督
「お願いします」
真優
「はい!」
マイクの前に立つ。
緊張。
不安。
期待。
全部を抱えながら。
真優
「今日から高校生活スタート!」
スタジオに声が響く。
続いて。
美優
「張り切りすぎ」
自然な掛け合い。
姉妹の距離感。
二人にしか出せない空気。
収録は順調に進んでいく。
監督
「いいですね」
音響監督
「さすが双子」
真優
「!」
美優
「!」
褒められた。
それだけで嬉しかった。
数時間後。
収録終了。
監督
「お疲れ様でした」
全員
「お疲れ様でした!」
真優
「終わった……」
美優
「無事に」
葵
「主人公らしかったよ」
真優
「ありがとう!」
美優
「葵さんも良かった」
スタジオを出る。
夕焼け。
東京の街。
真優
「主人公になれたね」
美優
「なれた」
真優
「まだ信じられない」
美優
「私も」
だけど。
確かに。
今日。
二人は主人公としてマイクの前に立った。
夢は叶った。
しかし。
ここはゴールじゃない。
ここから先が本番。
もっと上へ。
もっと多くの人へ。
双子の物語は。
まだ始まったばかりだった。
第50話 完




