表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原作開始前にフラグを全部折ったら、世界が平和になりました  作者: あめとおと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/11

第3話


孤児院の応接室には、静かな午後の光が差し込んでいた。


テーブルの上には紅茶と焼き菓子。


そして――。


「つまり」


フィアナが真剣な顔で言った。


「ここ、乙女ゲーム世界で」


「ええ」


「私たち、転生者で」


「そうね」


「しかも敵対予定」


「その通り」


沈黙。


数秒後。


「詰んでません?」


「だから対策会議をしているのよ」


リシェリアは優雅に紅茶を口へ運んだ。


だが内心は少しだけ高揚していた。


未来を共有できる相手がいる。


それだけで、状況は劇的に変わる。


フィアナが身を乗り出す。


「じゃあ確認しますね。原作ルートだと――」


指を折りながら数える。


「学園入学」

「私、聖女認定」

「人気集中」

「リシェリア様が誤解され」

「婚約破棄」

「断罪」


「完璧ね」


「全然完璧じゃないです!」


思わず二人で笑った。


だが次第に表情は真剣になる。


リシェリアは用意していたノートを開いた。


「未来は予測できる。なら管理できるわ」


そこには既に、整った文字で項目が並んでいる。


【破滅要因】


・聖女との不仲

・社交界での悪評

・情報不足による誤解

・第二王子の暴走

・イベント強制力


フィアナの目が丸くなる。


「仕事が早い……!」


「昨日、一晩で整理したの」


さらりと言うが、睡眠時間はほぼなかった。


それでも不思議と疲れはない。


未来を変えられるという確信があるから。


「で、どうします?」


フィアナが尋ねる。


リシェリアは迷わず答えた。


「全部、先に潰す」


「おお……」


「順番が重要よ。まず最優先は――」


ペン先が最初の項目を指す。


【聖女との対立】


二人は顔を見合わせた。


そして同時に笑う。


「もう解決してますね」


「ええ、完璧に」


友人になった時点で、最大の破滅要因は消えている。


それに気づいた瞬間、空気が軽くなった。


「じゃあ次は?」


「情報」


リシェリアは言う。


「誤解は、知らないことから生まれるわ」


原作では誰も本音を話さなかった。


だから破滅した。


ならば答えは単純。


「隠さない」


フィアナが目を瞬く。


「え?」


「話すの。必要な人には、きちんと」


それは貴族社会では異例の考え方だった。


けれど。


未来を知っているなら、常識に従う必要はない。


フィアナはしばらく考え――。


ぱっと笑った。


「なんか、勝てそうな気がしてきました」


「勝つというより」


リシェリアは微笑む。


「平和にするのよ」


争わず。


奪わず。


誰も悪役にならない未来へ。


そのとき、窓の外で子どもたちの笑い声が響いた。


穏やかな日常。


守りたい世界。


フィアナが小さく呟く。


「……私、この世界好きなんです」


「私もよ」


だから。


壊れる結末など、選ばない。


リシェリアはノートの最後のページを開いた。


そこに新しく書き加える。


【作戦名】


少し考えてから、ペンを走らせた。


――未来改変計画。


「よし」


フィアナが拳を握る。


「乙女ゲーム、攻略開始ですね!」


リシェリアは首を横に振った。


そして静かに笑う。


「いいえ」


その瞳は穏やかで、強かった。


「これは攻略じゃないわ」


ページを閉じる。


「幸せを作る計画よ」


こうして。


悪役令嬢と聖女による、原作崩壊の会議は。


とても平和に、幕を開けたのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ