第4話~彼と遊び~
まぶたの裏に、カーテン越しに差し込む暖かな日差しを感じる。
どうやら朝になったみたい。
「アカリ、アカリ起きて」
そう言われ、体が揺すられる。
「ん……あと5分……」
「起きないと、いたずらするよ?」
「だめ、おきる……」
目をこすりながら、ゆっくりと起き上がる。
「んー……いま、なんじ……?」
「もうお昼だよ」
「えぇっ!?」
飛び起き、慌てて枕元に置いてあるスマホを探した。
……ない。
(あぁそういえば彼が預かってるんだった。)
「昼かぁ……そんなに寝てたんだ」
ここ最近、というか、
社会人になってからは、休みの日でも昼まで寝るなんてことなかったのに。
「寝顔がかわいくて、しばらく放っておいたんだけど」
「さすがに心配だったからね、体はどう?変な感じはしない?」
「あ、うん……平気」
(うーん、まだぼーっとするなぁ……)
寝起きで頭が働かないけど、
熟睡したおかげか、いつも感じていた頭にかすみがかかるような感覚はない。
(聡のおかげ……か)
昨日の夜の、彼の腕の温もりを思い出して、顔が熱くなった。
(何を思い出してるんだ!私はっ!)
頭を振って、思い浮かんだものを散らす。
「ふわぁ……」
背伸びをしながら、大きく欠伸をする。
――その時
――パシャっと音がした。
「……なにしてんの?」
「あまりにかわいくて、写真をね」
「今すぐ消せ!」
聡に飛びかかったが、身長差で奪えない。
(くっ!体の小ささをこんな所で呪う日が来るとは!)
「もうクラウド保存しちゃったから、スマホを取っても意味はないよ」
「やめろぉ!」
そんなやりとりをしばらくしていた――
「昼食、軽いものだけど作っておいたからね」
リビングのテーブルの上には、大きな一皿にまとめたハムエッグとソーセージ、サラダとトーストが盛りつけられており――
「いい匂い!コーヒーもある!」
テーブルに置いてあったコーヒーを取ろうとしたら
聡にマグカップを取り上げられた。
「これはだめ、医者に止められてただろ?」
「もう治ったって!」
「君のはこっち」
「ココアっ!?まぁ、これはこれで好きだからいいけど……」
手渡されたマグカップは、丁度いい温かさをしていた。
「コーヒー飲みたいなぁ」
そう言いながら、お互いに席に着いた。
「体が良くなったらね」
「カフェイン中毒なんて、初めて聞いたよ」
「どれだけ無茶をしたんだ?」
「あはは…」
目をそらし、当時飲んでた量を思い出したが、言うと怒られそうだったので止めた。
コーヒー。
栄養ドリンク。
モカ……。
みんな大好きエナドリ。
まぁ、そんな感じ。
「まったく……微量なら与えていいって言われてるから、しばらくはココアで我慢してね」
「私はペットかなんかか?」
「ペットじゃなくて、僕の大切な人だよ」
「この先ずっと一緒にいるんだから、体には気をつけてもらわないと」
タブレットを見ながら、爽やかな顔でしれっと言われた。
「はぁ……私はまだ付き合うって言ってないのに……」
「そうだっけ?」
「そうだよ!?」
そもそも、付き合おう、とすら言われてない。
気付いたら一緒に住んでる。
……改めて考えると、押しに弱いのか?私は?
「ははっ、だったら、好きになってもらえるよう頑張るよ」
「僕の事がきらいではないんだろ?」
私の心を見透かすような目で言われ、
「……ふんっ」
正直に答えるのもなんかいやだったので、目を逸らした。
聡はうれしそうに笑いながら、私達は遅めの昼食を食べた――
聡に食事を用意してもらったので、私は食器を洗っていた。
ふと、視線が気になって振り向くと、彼がじっとこちらを見ていた。
「なに?ヒマなの?」
「僕の仕事は、君の観察だからね」
「ずいぶん、簡単な仕事ですこと」
そう言って、軽く洗い流した食器を洗浄機に入れ終える。
「今日はせっかくの休みだし、どう?ゲームでもやらない?」
「いいねぇ、やろっか」
「ただ普通にやるだけじゃつまらないから」
聡はニヤリと笑い
「負けたら罰ゲームをしよう」
「お?やんのか?私相手に?」
自慢じゃないが、ゲームは相当自信がある。
「お互いに得意ジャンルが違うから」
「ここは公平に、僕が開発したアプリを使って、勝負するゲームを決めよう」
「ふーん、まぁそれでもいいけど」
「何本勝負にする?」
「3本先取でどうだい?」
「おっけ、BO5ね」
肩をぐるぐると回し、やる気を出した。
「あぁそうだ、罰ゲームは負けた方が勝った方の言う事を、なんでも聞くってのはどう?」
「定番で、わかりやすいだろ?」
「そうね、いいよ」
ドヤ顔をし
「どうせ負けないし」
と自信満々に言い切った。
それを聞いて、聡は笑いながら
「じゃあ、始めようか」
と言い、闘いが始まった。
――最初は私の得意なジャンル「FPS」の有名なゲームだった。
ガガガガガッ!バキンッ!ガガッ!
シールドが割れる音が響き、キャラクターの肉体にダメージが入る。
デデーン!という音と共に聡の画面が真っ赤になる。
「さすがに、敵わないね」
「そりゃあね、これでも"マスター"ですから」
腰に手をあて、圧倒的ドヤ顔をする。
聡は苦笑しながら
「まぁまだ1本目だ、次に行こう」
――GAME SET!――
「うぎぎ……」
ファミリー向け格闘ゲーム、ス〇ブラでぼこぼこにされた。
3ストで聡のキャラは2スト残しなのでボロ負けである。
「僕の勝ちだね」
「次っ!」
――GAME SET!――
「なんでっ!同じタイトルが続くのよ!?」
(一応VIP入りしてるからそこまで下手じゃないのに!)
聡があまりにも強すぎて、手も足も出なかった。
「まぁ10種類ちょっとしかないからね、運だよ」
「次!私がそれ押す!」
そう言ってタブレットを奪い、アプリのボタンを押した。
「げっ……マ〇オカート……」
レースゲーム、ほとんどやったことがない。
「レースか……これはほとんどやったことないな」
しめたっ!なら勝ち筋はあるっ!
「次は負けないんだから!」
――――――――――
ピロリロ♪ピロリロ♪テンテン♪
「おっ」
聡が隣で嬉しそうな声を出す。
「きゃあ!?」
私の操作しているキャラが吹き飛んだ。
「赤甲羅やめろー!」
「僕の前を走ってるのが悪い」
そう言いながら、彼は隣でくすっと笑って肩を寄せてくる。
甲羅攻撃は一度だけでなく、さらに飛んできた。
「あー!追撃しないでよぉ!」
「勝負なんだ、好きな人相手でも手は抜かないよ」
「うぎぎ……」
その後、健闘したものの、僅差で負けてしまった。
「もーっ!なんでぇー!?」
私はふてくされ、床でのたうち回った。
「ふふっ、かわいくて許したくなるけど」
「約束は約束だからね、ほら、立って」
「はぁ……わかったよ……」
聡の手を握ると、そのままぐいっと引き寄せられ、抱き締められながら頭を撫でられた。
「なっ!」
反射的に突き飛ばしそうになったが
勝負に負けた手前、さすがにかっこ悪いと思い
おとなしく好きなようにさせた。
……胸が痛くなるほどドキドキする。
「君の嫌がる事はしたくないけど、罰ゲームだからね。」
そう言うと、聡はニヤリと笑い
「さて、なにをしようか?」
……この時、初めて浅はかな自分を呪った。
短編版から来て頂いてる読者様、ありがとうございます。
ここからは連載版のお話になります。
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