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ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制的に保護しました【連載版】  作者: 紅 与一


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第8話~初めてのお仕事~

―――ピンポンパンポーン―――


どこかで聞いた事のあるSEが流れて来た。


『かわいい、かわいい僕のアカリちゃん、休憩の時間だよ』


部屋の角に設置されたスピーカーから聡の声が聞こえてくる。


「どっかの魔女みたいだから、ソレやめて」


そうツッコみを入れながら私は伊達メガネを外して、作業用デスクから立ち上がる。


「んーっ!ふあぁ……もう2時間経ったのかぁ、やっぱり仕事してると時の流れは速いね」


背伸びをしながら欠伸をして、ココアを作り始める。


ついでにおやつの棚から、一日1本は食べるように言われている鉄分が多めのエナジーバーを取った。


(ここに来て初めて食べたけど、案外おいしいんだよねコレ)


入院したときに発覚したが、私は重度の低血圧らしい。


最高血圧が70ちょっとしかないってお医者さんが言ってた。


高血圧に比べれば、血圧低いのはそこまで重視されないらしいけど、さすがに低すぎるから改善しようって彼に言われた。


私が「サプリでよくない?」って聡に言ったら


「きみ、サプリ飲んだから平気だと思って、そのままご飯食べないだろ?」


と、核心を突かれ、呆れた彼にそのまま怒られた……


そんな事を思い出しながら休憩用のベッドに座り


ココアを飲みながらおやつをもしゃもしゃと食べて、聡が"見守り用"と言って設置したカメラを見つめる。


(パナのネットワークカメラだな)


(外そうと思えば、私なら1分かからないけど)


そんな事を考えながらカメラを眺めていると、ふと思い出し


(そういえば……今も見てるのかな?)


カメラに近寄って手を振りながら、とびっきりの笑顔をプレゼントしてみた。


すると――



ドンッ!



「きゃあっ!?な、なに!?」


スピーカーから台パンのような音が聞こえ、驚いて体が跳ねた。


(もしかして、休憩中にふざけるな、って怒られた?)


反応がないので、私がオロオロしていると、遅れて彼の声がスピーカーから聞こえてきた。


『すまない……机の上に、虫がいてね……』


「な、なるほど……」


なんか苦しそうな声してたけど……大丈夫かな?


(まぁ暖かいし虫ぐらい湧くか……)


『やはり、録画機能をつけるべきか……』


「ぜったいにやめろよ?」


彼が犯罪を犯さないよう、強めに言っておいた。







15分ほどまったり休憩し、再びデスクに向かう。


外していた伊達メガネを、再度掛けなおしモニターを見る。


普段はコンタクトだけど、メガネを着けてる人は仕事ができそう!


という安易な考えで集中するときは伊達メガネを着けてる。


クラウド経由で共有フォルダを開く。


追加のタスクがもう振られていた。


……仕事が早いな、あの人。


「どれどれ……この仕様を3Dデータにすればいいわけか」


早速"SolidWorks"を立ち上げ、PDFに書かれた仕様通りに3Dモデルを作り上げていく。


マウスを動かし、数値を打ち込む。


線を引き、寸法を入れ、押し出す。


同じ動作の繰り返し。


それなのに、不思議と飽きない。


余計なことを考えなくて済むから。




ふと前の職場を思い出した……



私が入社すると同時に、元々居た幹部が辞めたらしい。


その人はとても有能だったらしく、残った社員の中で誰もその人の代わりを務められなかったとか。


そして、若くてPCが触れる――


それだけの理由で私に回って来た。


使えるようにならなければクビだと言われ


頼れる人も居ない中、使い方の分からない"こいつ"と向き合った。


調べても、答えなんて出ない。


聞ける人も居ない。


それでも、私は必死に食らいついた。


機能をひとつずつ使えるようになって、耐えて、耐えた。


新人達をまとめて押し込まれたデスク群には、私の席だけが残っていた。


今思うと、去っていった彼らの方が利口だったのかもしれない。


嫌な思い出しかない"こいつ"との付き合いだが


彼の為に役に立てるのなら――


今は少しだけ、誇らしい。



「ふぅ、できた」


サクっと作り終え、最終チェックを済まし、クラウドに保存する。


そのまま次の仕事に取り掛かろうと思い、鼻歌交じりに聡のフォルダを開いた。


「あれ?もう仕事ないじゃん」


ちらっと時計を見ると、まだ1時間以上余っていた。


「さとるー?お仕事終わったよー?」


(今は見てないのかな?)


そう思い、カメラに向かって手を振っていると


『ごめんごめん、ちょっと来客があってね、どうかしたかい?』


「クラウドにあった奴、全部終わったよー」


『え、もう終わったの?』


首を縦にブンブン振る。


『ちょっと待ってね、今確認するから。』


そう言うと、スピーカーからマイクが切れるような、ブツっという音が聞こえた。


暇なのでココアを淹れなおし、デスクの椅子をグルグルと回しながら待ち続けた。


(よく回るなコレ、なんか楽しい)


そんなことをして遊んでいると、スピーカーからまたブツッという音が聞こえる。


『ごめんごめん、待たせたね、確認できたよ。』


『今日の作業は終わったから、もう休んでてもいいよ』


「えっ!?」


時計を見ると、まだ1時間ほど勤務時間が残っている。


「まだ時間あるけど?」


『君が優秀だから、早く終わったんだよ』


『普通は与えられた仕事が終わったら、喜んでさっさと帰るものだよ』


「そうなの?」


『そうだよ』


「そっかぁ……」


(なんかこの流れ、前にやったな)


「まぁいいや、じゃあ、あがっちゃうよ?」


『さみしかったら、ここで僕とおしゃべりしててもいいんだよ?』


イラッとしたので、何も言わずに入口近くのタイムカードを切って、そのまま部屋を出た。


扉を閉めてから、ドアに寄りかかって


「べつに、さみしくなんかないし……」


そう、呟いた。



リビングに向かいながら歩いていると、妙に疲れを感じた


「ふあぁ……なんか体がだるいなぁ……」


仕事を辞めてから1か月は立ってるから、体が鈍ったのかなぁ……


以前は3徹ぐらい余裕だったのに。


「いかんなぁ、もっと鍛えないと」


腕を上げてむんっ!と力こぶしを作り、リビングのソファに座る。


「ん……だめだ……体が、重い……」


座った瞬間に体が動かなくなり、そのまま意識がなくなった――










ポーン、と音が鳴りエレベーターが開く。


「おや、今日はお出迎えなしか」


アカリの退院後、初めての勤務終了祝いに、彼女の好きなショートケーキを買ってきたんだけど。


「アカリー?……おかしいな」


フロアを歩きながら声をかけたが反応がない。


「いつもなら、『きこえてるよ!』とかって言ってくるのに。」


呼びかけながら彼女の部屋をノックし、声をかける。


「アカリ?いるかい?」


部屋を開ける。


中を覗くが、居ない。


「っ!アカリッ!?」


胸騒ぎがし、急いでフロアの中を探し始める。


リビングのドアを勢いよく開けると、そこには――






「すぅ……すぅ……」


ソファで、お腹を出しながら寝ている彼女が居た。


「はぁ……よかった……」


安堵のため息を吐きながら、テーブルにケーキを置く。


退院後、初めての仕事をさせたせいで嫌な想像をしたが、杞憂だったらしい。


「んう……」


無防備に寝ながら寝返りを打つ彼女、服がさらに捲れる。


「まったく……僕がいるというのに、無防備だなぁ」


それとも、彼女の中で、僕は異性として認識されていないのだろうか……


「そんなに肌を見せてると、襲っちゃうよ?」


そう言いながら、服を直し、タオルケットをかける。


彼女の顔に近付き、少し悩んだ後、頬にキスをした。


「次は、唇にするからね」


そう言って、スマホを取り出し出前を頼む。


「お仕事おつかれさま、頑張ったね。」


彼女の頭を撫でながら、起きるまで寝顔を見守り続けた。

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