主人公という不運
少女、小田川綾子は今日も部屋の片隅で震えていた。
彼女と来たら最近ずっとそうなのだ。
――ずっと、何かに怯えている。
「誰かが見ているの。ずっと、ずっと!」
綾子はそう必死に訴えたが両親も友達もまともに取り合わなかった。
何せ、綾子が「そこにいる!」と言って指差した方向に誰も居ないのだ。
遂には父親が一週間ほど一緒に寝たほどだ。
もう綾子は中学二年生だというのに。
「なんで……なんで私がこんな目に……」
綾子は今も泣いている。
体育座りをして顔を膝に押し付けて。
しくしく。
しくしくと。
――あっ。
こっちを見た。
身体をビクつかせ息を飲んだ。
これは叫ぶな。
よく見ていてね。
「いい加減どこかへ行ってよ! お願いだから!!」
――ほらね?