物語の始まり
物語の始まり
私の名前は此木輝来。普通の中学三年生。(十四)
もうすぐ年明けなので、高校受験も遠くはなく、それに向けての勉強で忙しい……。
はずであった。
今自分は何故か、真っ暗闇な空間にいる。
何故かって? 私もよくわかってないんだけどね……。
ことはたぶん、少し前のことである。
自分は前に、昼ごはんを食べたあと家出をし、家の近くにある公園でキノコをつついていたのだが……。
え? 一文だけでもツッコミどころが多い?
まあ落ち着いてほしい。これは別に重要ではない。この後が大事なのだ。
それでキノコをつついていたら、いつの間にか真っ暗闇な空間にいたのである!
それで今に至る。
……わけがわからないという気持ちも分かる。
悪かったな、私の語彙力は消しカスにも及ばないのである。それに自分だって今の状況が理解できていない。一つだけ分かるのが、多分、何かの乗り物に乗せられているいうことだけだ。少しだが揺れている感覚がある。
あれからどれだけの時間が経ったのだろうか。いつの間にか眠って夢まで見てしまっていたし。
目覚めて今の状況に気づいたのはついさっきのことだが、眠っている間にずいぶんの時間が経ってしまっているかもしれない。
もしそうであれば私は遠い場所に来てしまっているのだろう。
正直、今すぐ泣き叫びたい気分だ。もしかしたらもう、あの公園には、自分の家には戻れないのかもしれない。家出をした自分も悪いのだけど。
私は良くも悪くもない頭を回転させ、あちこち歩き回って脱出方法を考えた。
乗り物にいるのであればどこかに非常出口や窓があったり、窓から太陽の光が入ってくるはず……。
色々考えてみたが、やはり何も思いつかない。
ああ、せっかく良い高校に入るために、勉強を頑張っていたのに。きのこを撲滅させてもいないのに。
まだ十五歳の誕生日も迎えられていない。
短い人生だった――――。そう思うと涙が出てきた。
――――その瞬間。
すっぽん!
……え?
今何が起こったんだ?
なんかすごい大きな音がしましたが……。すっぽん!って。
冷静になろう。まずは状況確認だ。
さっきまで暗闇にいたが、明るい場所に来たみたいだ。そのせいで目がチカチカする。ということは、違う場所に着いたという認識で合っているのだろうか?無理やり明るい場所に出された気がするが……。
どうやらここは部屋のようだ。それにしては、フラスコやビーカー、薬品のようなものなど、様々なものが置かれていた。見たことのないものもたくさんあった。
見た感じ研究所だろうか。
気がつくと、目の前には、知らない女の人が立っていて、座り込んでいる私を見下ろしていた。
これから私は、どうなってしまうのだろうか……。
to be continued……