超緊急事態ー焦るアザレアさん
けたたましいアラート音が私の頭を揺らす。
視界が赤色に点滅しチカチカとする。
(ユニス!何があった!)
私は、電脳を管理しているAIのユニスに、この異常事態について問うた。
こんなことは初めてだ、焦燥感で頭がどうにかなってしまうそうだ。
ウェルステミア大銀河帝国は電脳を持ち、電脳へのアクセスは堅牢なセキュリティで守られている。
ましてや、帝選10将である私が不正アクセスをされるなんて普通ではありえない。
電脳の能力は、個人の能力に左右される。
私は宇宙全体の中で超常の力を持つ。
そんな私が不正アクセスの予兆も感じずに、一瞬で不正アクセスをされるなどあり得ない。
そうあり得ないのだ。
しかし、今目の前に見えるのは、何者からか送られてきたふざけた言葉だった。
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1:おてぃんてぃん侍
こんちゃ!
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(アザレア様、このユニスも何も感知することができませんでした。1つ言えるのは、不正アクセスではない可能性が極めて高いということです。今のところ形跡が見当たりません)
(では、一体これは何だと言うのだ?)
(突然、出現した。最初からそこにあった。もしくはアザレア様の潜在意識が顕在化しそれが不正アクセスと見做されたということかもしれません)
(このふざけた言葉を私が潜在意識として持っているとでも言いたいのか?ユニスよ)
(いっいえ、可能性の話をしたまでで……)
(そもそもおてぃんてぃん侍とはどういう意味だ!?)
(私にもおてぃんてぃんも侍もどのような意味か把握できておりません)
なんなのだこいつは。
一体何者なのだ?
最近私が滅ぼしたのは、「グーストゥフヌノス、「アーゼン」、「ワドアイヤー」、「ゼロムゴ」……。
他にも心当たりがあるが、こいつらの仕業か?
いや、そこまでの強者はいなかったはず。
まさか……。
界外超位体、神滅(ゴッズ・ホムルノメス)が再びこの世界に?
彼奴らは、遥か昔にこの世界から追い出したはずだ。
たとえ、彼奴とて何も感知できないのは不自然すぎる。
この世界の者だとして、アザレアを知らぬ者はいないだろう。
私を怒らせたらどうなるかは知っているはず。
まずは警告を兼ねて様子を見るか。
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1:おてぃんてぃん侍
こんちゃ!
2:アザレア
貴様は何者だ?私がアザレアと知っての狼藉か?
私の電脳に私の許可なく直接データを送り込むのは通常不可能なはずだが、何をした?
どこのどいつで、何が目的かを答えろ。
さもなくば、ウェルステミア大銀河帝国-帝選10将が1人、アザレアが第10艦隊総司令官として万の艦隊を率いて惑星諸共貴様を滅してやる。
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……………
…………
………
…
返信が来ない。
無視とはいい度胸だ。
それとも、今さら恐怖のあまり宇宙を逃げまどっているのではないか?
まぁいい。
ユニスが解析すれば全てが分かる。
これまで分からなかったことはない。
アザレアはニヤリと笑うとさらに脅しの意味を込めてメッセージを送った。
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3:アザレア
返信がないなぁ?
この私相手に無視をするとはいい度胸だ。
現在貴様からの不正アクセスは解析中だ。
震えて待つがいい。
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(アザレア様)
(ユニス、不届き者が何者か分かったのだな?)
(……。)
(どうしたのだ黙って)
(何も分かりませんでした)
(ん?聞き間違いかもしれない。もう一度言ってくれ)
(何も分かりませんでした!)
(ふむ。もう一度聞くが、本当に何も分からなかったのだな?)
(はい)
(これってどのくらいヤバイこと?)
(えーっと、私にも理解不能なのですが、今この瞬間に帝国民が全員死ぬとか、アザレア様が1兆人に分裂するとか、とにかく理解不能なことが起きています)
えっ!こっわ!なにそれこっわー!
そんなこと初めてだよね?
え?なんで急にこんなこと起きるの?
ユニスが分からないことってなに!?
今まで自分は最強だと思ってきたのに急に得体の知れないこの状況何!?
電脳に不正アクセスってなに?
私の脳みそ焼かれるのなにされるのーっ!!
『アザレア様が荒ぶっておられる。普段は完璧すぎて不測の事態が起きることがない。だから不測の事態が起きると取り乱してしまう。最後に起きたのは1036年前でしょうか』
(アザレア様聞いてください)
(ゥムー)
(今回の件ですが、負のエネルギーは感知しておりません。つまり何かをされる可能性は極めて低いと思います。堂々と構えていいかと思います)
なーんだ!そうなのかー!
心配して損しちゃーったっ!
(ふむ。ご苦労。それならばひとまず安心だな!堂々とするぞ堂々と!)
『心の声筒抜けなんですけどね……』
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1:おてぃんてぃん侍
こんちゃ!
2:おてぃんてぃん侍
アザレアたん、おら寂しいんだポン
3:アザレア
また貴様か?私をおちょくっているのか?
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こいつとの関係が長くなるとはこの時思いもしなかったのだ……。