金貨クエスト(4)女神の首に鈴はつけられないのデス!
「金貨は拙者が護送するでござる」
時の輪と接するような壮大なストーリーなど欠片もなく、あっさり集め終わってしまったダモン金貨150枚。
それを帝国の地下金庫まで運ぶ役を、ロックンロール・クレイジーナイトが自主的にやると言い出しましたよ。彼女は、陛下直属の唯一の近衛騎士なんだよ?陛下の側を離れるなんて有り得ないよね?
「何を企んでいるのか知りませんが。あなたは先刻ビールを飲んでいますし、運転は私がします」
「えー、この国には道路交通法とか無いでござるしー。ポリスメーンも居ないですぞー」
確かにね。この国にはオートモービルに適用される道路交通法はないよ。自警団は居るけど、国家の犬も居ないよ?近衛騎士隊長の言う通り、何か企んでいるんだね?いいぞー、がんがんやれー。
「あほう。飲酒運転は死刑じゃー。ころしあげちゃうよ?」
陛下は、異世界のおっさんの記憶があるせいで、とても柄が悪いんだよ。まだ0歳児だから、本来の自我がまだ確立していないんだね。女神らしいといえば、そうだけどね。見た目は6歳幼女だからね、周囲の愚かなニンゲン共がドン引きだよ。
我ら堕天使は地上に生まれてから2000年経ってるからね。ちゃんと自我があるよ。くくっ、なんぴとたりとも我らの自我に干渉することなど…不可能…!くくっ…。永遠に14歳女児のボディに入っているから、チュウニ病に汚染された自我もエターナルなんだよ…。くくっ。
フォーエバーチュウニ…、それが我ら堕天使ファイブさ…。くくっ…げふっ、おはぎのつぶあんでむせちゃったよ。
ノンアルコールの赤ワインをごくごくとやるよ。ただのブドウジュースな気がするけどね。くくっ我は暁のムーンライト…。血の代わりに赤ワインを飲むよ。血は飲まないけどね。ヴァンパイヤごっこしてるだけで、堕天使だし。
「さあ、行きますよ。陛下、このあほは護衛としてお借りして行きますよ。こんなのでも元はダモン王国の近衛騎士ですから。最弱ですけど。ほら、殿下もぼけっとしてないで、支度しなさい」
「なんでなのよ」
近衛騎士隊長は、クレイジーナイトだけでなく王女殿下まで引っ張って痛車に乗り込むと、150枚のダモン金貨を抱えて、帝国へと帰って行きました。殿下にとって、近衛騎士隊長は乳母でもあるから、逆らえないらしいよ。
生まれてから1000年の間は、凶暴凶悪な生物として手のつけられなかった殿下を、見た目だけはニンゲンらしく育てたのが近衛騎士隊長だからね。躾と称してクビを刎ねるような過激なおしおきをしたとか。いくら大天使でもトラウマだろうね。逆らえるわけないよね。
「ヤキトリが尊い犠牲になってくれたお陰で、うるさいカクサンがおらんこなったわ。ははっ、シナリオどおりなのじゃ」
「あのー、スケサンも居なくなっちゃいましたけどー?」
「んー?武力なら圧倒的なのがおるじゃろ」
「いやー、マオウとドラちゃんだと戦力としてはオーバーキルにも程がありますよー?」
「くくっ、ちょっとこらしめてやるだけで…人類が滅ぶ…」
不埒な悪事に勝手にクビを突っ込んで、圧倒的武力と権力で殲滅するのが、ゴロウコウの役目だけどね?人類を滅ぼすのはやり過ぎだと思うよ。堕天使である我は、ニンゲン共の観察が業務なので、観察対象が滅ぶと失業しちゃうよ…。
でも、女神のサポートの方が、堕天使の業務としては最優先で最重要だからね。まあ、いいのかな?人類は3周目をやればいいよ。
「むー、わしは人類は滅ぼすよりも、飼い殺す派じゃけー。それは困るのう。うっかりと入浴シーン担当しかおらんわ」
「えー?私、14歳女児なんでー。特殊なニーズにしか応えられませんよ?」
入浴シーン担当が居ても居なくても、陛下はお風呂大好きだから絶対入るけどね。さっきも入ってたし。
「まー、いざとなったら不死鳥である巫女の私が自爆攻撃を決めますよ!おまかせあれー」
「わし、そういうの求めてないから。諸国漫遊記をR指定にすんな」
「で?どこ行くの?ヨコヤマ帝国?それともオタマ川越えちゃうの?」
チュウニ的なおしゃべりはもう疲れたんだよ。素でいいでしょ?
「んー?今夜はここに泊まっていくんでしょー?おでんパーティの準備してますよー」
巫女は区別つかないけど、これは団子屋の店長の方だね。お供の巫女とは違うよ。
「おでんパーティは、熱々のちくわで攻め立てる死亡遊戯なんじゃろ?わし、猫舌なんじゃけど」
「はあ?だからやるんですけどー?」
「おまえらほんとに、わしを女神として崇めとるの?」
「はあああ!?命がけで悪魔の山を踏破した忠誠心をお分かりでない!?」
巫女共は狂信的に女神を崇めているんだよ。武装した兵士が大隊で挑んでも10分もかからずに全滅する悪魔の山。凶暴な熊や虎がうじゃうじゃ棲んでいるからね。
その山を踏破して、頂上の女神のところまで辿り着いたのは、ダモン王国の近衛騎士と、この巫女共だけ。
近衛騎士は圧倒的な武力で踏破したけど。巫女は、一人づつ自爆攻撃をかまして、20人がかりで最後の一人が頂上まで辿り着いた。おしりの穴からは、まるで尻尾のように腸が垂れ下がり、猫耳なのってくらいに頭蓋骨がめくれてたんだよ。死んでも蘇るとけど、当時の巫女の復活場所である神社の総本社はカワサキにあったからね。死ぬとスタート地点からやり直し。20人全員、気合と根性で意識を保ったままだったんだよ。堕天使でも真似するのは不可能だね。
そんな彼女達は、リーザ教原理主義者なので、二代目リーザの陛下に対しても平気で意見することがあるよ。二代目は初代とは考え方や価値観が違うからね。それでも、女神に仕えない巫女は、おしりを拭く紙にもならないからね。女神である陛下につきまとっているんだよ。
カクサンは居ないけど、巫女がお目付け役にはなるんじゃないかな?いや、ならないね?巫女は何事もリーザ教の教義が絶対だし、スグ死んじゃうからね。
「ディレイ決死隊長、落ち着いて下さい。明日の夕方に迎えに来ると言っていたのは、キナコ近衛騎士隊長の策ですよ。明日の朝には戻って来る気がします」
「ふむうーん。コーラスの言う通りかもねー。おやびんを旅に行かせるためには、おでん食ってる場合じゃねーわね。分かりやしたっ!このディレイが自爆攻撃でキナコ隊長を足止めしやしょう!」
「え?あ、そう?わし、そういうの好かんのじゃけど。まあ、頼むわそれで」
「がってんしょうちのすけー!」
「ほいじゃー、スグに旅立つのじゃー。神社の神馬を借りるのじゃー」
で?どこ行くのー?