女神様はお供と一緒に諸国漫遊の旅に出ます
2025/02/11 ちょっとだけ、加筆修正
女神様は、お供を連れて諸国漫遊の旅に出ることにしました。
せっかく地上の人間界に生まれたのです。天界に帰る前に、人間界を観光したいじゃないですか。帰るのは天界ではなく魔界かも知れませんし、いつか帰るかどうかも分かりませんけど。
女神の名前は、リーザと言います。この世界の人類を作った女神リーザの二代目です。初代リーザは、引退してニンゲンに帰化し、今はミラと名乗っています。
リーザは、見た目は6歳の幼女ですが、中身は0歳の生まれたての女神です。生まれた時から、6歳幼女の姿でした。生まれて7日目に3つの国を支配し、今は、三国の中心にあるリーザ山に、リーザ帝国という国を作り王様をやっています。
彼女の頭の中には異世界の記憶がプリインストールされています。令和の日本でシステムエンジニアをやっているおっさんの記憶です。異世界おやじの記憶をデータベースとして持っています。この世界の常識はまだ良く分かっていません。
彼女をキッティングしたのは天使の連中です。間違った手順書で作業してませんかね?でも、この世界では堕天使も魔女もみんな同じデータベースを持って生まれてきます。何の役に立つのかさっぱり分かりませんね。天使はいつもいい加減です。
オリジナルのおっさんは、今も日本でどこかのネットワークを切ったり繋いだりしています。この世界の事は知りもしないでしょう。
国のことは女王と宰相が勝手にやってしまいます。リーザは国王としてやることが何もありません。悪魔の湯という温泉に浸かって、熊の丸焼きや、虎のシチューを食べて遊んで暮らしていましたが、さすがに飽きて来ました。なので、国外に遊び行こうかと思ったのですがー。
「は?現役の国王が好き勝手に国外うろついていいと思ってんの?」
リーザ帝国の女王クリーム・カステーラが、予想通り小言を言ってきました。王様が居なくとも女王が居れば良い気がします。女王は王妃ではありません。彼女も6歳の幼女なので。6歳幼女同士がツガイになってもいいですけどね。むしろ、なって欲しいです。
女王はニンゲンですが、1万6歳です。悪魔の実を食べたので不老不死なのです。悪魔の湯の効能も不老不死なので、究極にして完璧な不老不死です。
「海外視察って名目でどうだい?どうせ止めても、勝手に抜け出して行くぞこいつ」
リーザ帝国の宰相、ハナちゃんも6歳の幼女です。中身は17歳の天使見習いです。天使なので、やることがいい加減です。宰相になる前は、銀行の頭取をやっていました。元銀行員のクセに数字に弱く、金勘定も苦手です。
「まあ、そうね。管理下に置いておく方が、いいわね。人類滅ぼされても困るし」
「旅の路銀は、先代ドラゴンが溜め込んでいた金貨を適当に持って行けばいいよ」
「国家の財政をいい加減にやらないでちょうだい…」
リーザ山にはドラゴンが住んでいました。先日代替わりしたばかりなので、今のドラゴンは、まだ幼体です。ドラゴンはピカピカしたものを集める習性があるので、リーザ山には先代ドラゴンが収集したドラゴンセレクション金貨が沢山あります。6000年前に滅んだ国や、1万年前に滅んだ古代文明のレア金貨です。
「ダモン金貨を持ち出すよりはマシかしらね?」
リーザ帝国にはダモン王国の発行した金貨が300万枚あります。発行済ダモン金貨のほぼ全てです。1枚3000万円の超貴重金貨が総額90兆円あります。ダモン王国の年間国家予算が300億円なので途方もない額ですね。このダモン金貨は外に出せないので、ドラゴンの巣があった場所の地下に金庫を作って厳重に保管されています。ダモン王国は亡国なので新しい金貨はもう出てきません。超レア金貨をリーザ帝国で独占しています。
リーザ帝国の資金は、この金貨を担保に国債を発行して調達されています。ダモン金貨を市場に流してしまうと、ハイパーインフレが起きてしまうので。
「ほいじゃあ、行ってくるのじゃ」
「待ちなさい」
「なんじゃ?」
旅立とうとするリーザを、クリーム女王が引き止めます。
「ツインテールの悪魔が持って行ったダモン金貨が150枚あったでしょ?」
「それが、どうかしたんじゃろうか…」
リーザは嫌な予感がしました。
「それを全部集めて来なさい。諸国漫遊のついでに。集め終わるまで帰って来なくてもいいわよ」
「のじゃー!分かったのじゃ」
ははっ、知るかばーか!とリーザは内心思っていますが、大人しく従いますよ。女王に逆らうと2時間正座の上、お説教を食らってしまうので。
「ほいじゃあ、お供のスケサンカクサンの人選を、せんとのう」
「拙者は当然ですよね?マスター」
近衛騎士のヤキトリです。王様直属の唯一の騎士なので、これは当然置いていけません。彼女は17歳です。幼女ではありません。通称ロックンロール・クレジーナイトです。本人曰く永遠の27歳です。メイド服を着て日本刀を帯刀しています。元はダモン王国の影武者王女の近衛騎士でした。ダモン王国はリーザが滅ぼして、今は神聖ダモン共和国になっているので、ダモンの近衛騎士は全員失業しました。ニート女騎士達は、リーザ帝国に拾われました。近衛騎士は全員女騎士です。14歳から20歳の女騎士ですが、中身は14歳から9000歳くらいまで幅広いです。ミラクルファンタジーな動物達です。見た目は人間ですけどね。
「巫女デスルーレットの結果、巫女代表は私でーす!」
巫女のファズです。エターナル神社で巫女をやっていたのですが、ここもリーザが滅ぼしてしまったので、ニートになった巫女達が命がけでリーザ帝国に亡命して来ました。彼女達は初代リーザを崇める狂信者なので。見た目は全員14歳のチュウニですが、こいつらも中身は4歳から9000歳くらいまで幅広いです。
ちなみに、巫女デスルーレットという死亡遊戯は、ルーレットに10人の巫女共を放射状にくくりつけて、そこに矢を撃ち込むゲームです。死んだ奴の勝ちです。狂信者なのでろくな事をしませんね。
「なのよー」
スケサンカクサンのポジションは埋まってしまったのでお風呂に入る係には、コルサ王女様が立候補です。彼女も見た目6歳の1万歳児です。大天使という種族です。元はダモン王国の王女でしたが、リーザに滅ぼされてしまったので、今はリーザの奴隷です。拒否したところで強制連行されます。メイド服を着てリーザのお世話もしています。まともに喋らないので、あんぽんたんだと思われていますが、地上最強の知能と知識を持っています。ドラゴンとも素手で喧嘩出来るほどの戦闘力もあります。
「殿下が行かれるのであれば私も」
ダモン王女直属の近衛騎士キナコ・オモッチです。戦力的にも性格的にも彼女こそがカクサンポジションにふさわいしかも知れません。彼女はコルサ王女の奴隷でもあったので、奴隷の奴隷はリーザの奴隷でもあります。もとより強制連行確定です。彼女もメイド服です。メイド服に武装するのがダモン近衛騎士の正装なので。ヤキトリもそうですね。お供の大半がメイドです。もしくは幼女。かなりイカれたパーティですね。
「くくっ…諸国漫遊には…たまに出てくる助っ人が不可欠…ヤハトヴィントミューレの我も行こう…くくっ」
まだ居ました。こいつは堕天使のムーンライトです。
「くくっ…我は月の光の堕天使…ムーンライトにかわって成敗しよう…」
とか言っている真正のチュウニです。見た目は14歳で、中身は2000歳くらい。リーザ帝国は不思議動物ばっかりですね。世間一般では、神や悪魔は神話や聖書に出てくる空想上の存在だと思われています。信心深い人もまさか地上にうじゃうじゃ居るとは思ってません。リーザ帝国は世にも稀なファンタジー動物ランドなのです。
「お前は、うっかりさんの役じゃろ?ムーンライトアハトじゃ」
「ムーンライトをうっかりの代名詞みたいに言うのやめて…」
この6名に、猫2匹を加えて旅に出る事が決まりました。
このパーティで最強なのは、騎士でも巫女でもありません。猫です。黒猫のマオウ様と、銀ネコのドラちゃんです。その名の通り、魔王とドラゴンなので。二頭ともまだ幼体ですが、リーザに付きまとっていたツインテールの悪魔と、そのお供のメイドを、一瞬で滅ぼしました。何度でも転生するはずの悪魔を、事象の地平線の彼方へと吹き飛ばしてしまったのです。
「ダモン金貨を150枚集めるぞー!知らんけど」
女神様と、そのお供達の旅が始まりました。宿題はダモン金貨150枚を探し出すことです。ちょっと多過ぎませんかねー?