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おねーちゃんが好き  作者: ヤケ酒あずき
第四章 わたしの選んだ真実
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瑞木恵里佳 20歳 秋

「だからわたしは、おねーちゃんを愛してる!!」


 ずっと前から知っていたから、そう言われても戸惑いはなかった。やっぱりそうなんだねって受け入れて、おしまい。……だから、もう戻れないんだって悲しみが、ゆっくりと胸の中で広がっていくだけ。


 由花。どうしてここにきちゃったの? 温泉旅館で話した時、理解してくれたんじゃなかったの?


 舞台袖を横目で窺うと、キヨにいが早桜さんを押し留めていた。由花が逃げたって聞いたから、もしも会場に来たら絶対ワタシに近づけさせないでって頼んでおいたのに。逆に説得されちゃったんだ。


 由花はすごいなあ。


「だからわたしは、おねーちゃんを利用するやつらを許さない!!」


 観客席から暴言と物が飛び、ドリンクのペットボトルが由花の服を汚す。見ているワタシの心が痛くなる光景。なのに、由花は視線すら動かさない。


 ……眩しいな。


 ふとそう思う。きっとそれは、由花は輝いていて、ワタシはそうではないから。


 由花だってわかってるはず。ワタシへの愛は世間から許されないことも、わたしがアセクシュアルで、恋愛感情や性的欲求を持たないことも。どころか、想いを伝えた瞬間に、姉妹という関係すら終わってしまうことを。


 それでも、由花は受け入れたんだ。自分の気持ちを、愛を、偽らなかったんだ。


 ……眩しいなあ。


 悩んだんだろうな。苦しんだんだろうな。それでも向き合って、あえて困難な道を選んだんだ。自分のために。自分らしく生きるために。すごいよ由花。とっても強い。この告白をするのに、どれだけ勇気がいるのか想像もつかないや。


 ……眩しい、なあ……っ。


 ワタシにはできなかった。逃げて、思考を停止して、望まれるままに振る舞うだけの人形になっちゃった。


 昔からそうだったね。由花はものすごいエネルギーを持っていた。ワタシの小さな世界を簡単に壊して、どこまでも引っ張って行ってくれた。ワタシはただ、ついて行っただけ。


 ワタシは、自分らしくいたいから、自分の居場所が欲しいから、歌うことにした。メジャーデビューして、テレビに出て、ライブまでできるようになった。


 けど、背中を押してくれたのはいつも由花だった。押すっていうより突き飛ばすって感じかな。ワタシはワタシなりに頑張っているつもりだったけど、あなたがとんでもない力で振り回してくれなければ、何一つできなかった。


 そう。ワタシはワタシらしくなんて言いながら、結局あなたに頼ってばかりだった。


 ごめんね、由花。苦労させたよね。


 ワタシのせいで、自分らしくが口癖みたいになっちゃったし。


 告白をこんなふうにしてくれたのも、ワタシに勇気をくれるためなんだよね。

 受け取ったよ。


 だから、もう大丈夫。もう迷わない。


 そう。ワタシはワタシらしく生きていたい。


 今度は、今度こそは、自分の力で自分らしく生きる道を手に入れたい。


 こんな体になってしまって、もう遅いかもしれないけれど。


 ワタシはワタシらしく。


 ここにいるのは誰かの望む偶像じゃない。ワタシだ。瑞木恵里佳だ。


 ……………………。


 ……でもね、由花。


 ワタシはあなたに、恋心を自覚しないでいて欲しかった。


 あなたとは、ずっと家族でいたかった。


 だって、大好きだから。元気いっぱいに笑うあなたが、ボクシングを頑張るあなたが、おねーちゃんって呼んでくれるあなたが、大好きだから。


 ねえ、由花。あなたが壊してしまったものを、ワタシは本当に愛おしく思っていたんだよ。


 だから今、すごく、すごく悲しいな。


 ……あれ?


 どうして、なんだろう。


 熱い。


 体が、熱い。燃えてるみたい。


 嘘、なに、どうして? 体の芯から、まるで、熱そのものに変わるみたいに――――!!

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