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おかえりと迎えるために

作者: 小池ともか

 本編を読んでいない方はネタバレになりますので、ご了承くださいね。


「響!!」


 神社に駆け込んだ俺に、椿が血相を変えて駆け寄ってきた。

 講義中、椿の慌てた声が聞こえて。何があったかはその時聞いたけど、心配だから終わってすぐ飛んできた。

 たんぽぽがひとりで迷子の子猫を送りに行ったらしいけど。


「来る途中に会わなかったか?」


 いつにない様子ってだけじゃない。普段は抑えてる椿の気持ちがめちゃくちゃ聞こえてきてる。

 まだひとりで外には行ったことのないたんぽぽ。

 椿も心配なんだよな。


「落ち着け、椿。神様が大丈夫って判断して送り出したんだろ?」

「そうだが……」


 たんぽぽが神使になってから、椿、嬉しそうだったもんな。

 今日もすぐ追いかけようとしたらしいけど、神様に止められたって。

 たんぽぽだってもう昔の非常口……じゃなくて人形(ひとがた)の頃とは違うんだから。


「任せてやれって言われたんだろ? だったら椿は信じて待ってるしかねぇよな」


 椿だってわかってはいるんだろう。じっと俺を見てから、そうだなと呟いた。

 それでもまだ心配そうに瞳を伏せる椿。

 いつも堂々と、背筋を伸ばして立ってる印象の椿だけど。こんな一面もあるんだな。

 椿が視線を上げて、少し拗ねたように睨んでくる。

 こんな時になんだけどかわいいって思ったの、間違いなくバレてるよな。

 それならと開き直って、椿の手をぎゅっと握る。


「……戻ってくるまで一緒にいるから。おかえりって迎えてやれ。な?」

「……ん」


 握り返される手から伝わる温もり。

 椿も落ち着いてくれたのか、心の声が聞こえなくなった。




 はっと椿が顔を上げた。


「戻ってきたのか?」

「ああ、すぐそこまで……」


 迎えに行こうとする椿の手を引っ張る。


「ちゃんとここまで、たんぽぽひとりでやり遂げさせてやれって」


 俺を振り返った椿は何か言いたそうにしてたけど、結局わかったと頷いてくれた。


「……響、手を……」

「ん? あぁ、そうだな」


 こんな姿、たんぽぽに見られるのは恥ずかしいんだよな。

 俺は平気だけどさ。

 そう思った途端に腕をつねられる。

 なんだよ全く。

 手を放そうとした瞬間、くっと引かれて。何がと思う間もなく椿にキスされた。


〈来てくれてありがとう〉


 至近距離の椿の極上の笑み。

 破壊力抜群のそれに、硬直してから目を逸らした。




 黒い着物姿に戻ったたんぽぽが参道を嬉しそうに駆けてくる。

 椿が笑って両手を広げた。


「おかえり」

「ねぇさま、ただいま!」


 飛び込んできたたんぽぽ。頑張ったな、と椿に頭を撫でられて、もう本当に嬉しそうな顔をしてる。

 それからひょこっと顔を上げて、俺を見て笑った。


「ただいま、にぃさま」

「ああ。おかえり、たんぽぽ」


 満面の笑みからは、やり遂げた喜びと誇らしさが見て取れて。


「頑張った話、聞かせてくれるか?」

「うん!」


 こうやって成長していくんだな、なんて。すっかり親目線で考えながら。

 たんぽぽの冒険話をたくさん聞いたあとは、頑張ったたんぽぽに何か甘いモノでも買ってきてやるか、と思った。



挿絵(By みてみん)

イラスト作 コロン様

https://mypage.syosetu.com/2124503/




 こちらまでお読みくださりありがとうございます!


『ただいまの場所』では説明がややこしくなるので端折られた響(笑)。ちゃんとあの場にいました。


 響と椿も少し進展したような。

 甘えも見せつつ、きっちりとマウントを取り返す椿(笑)。


 たんぽぽの元の姿についてはあまり書けませんでしたが、帯の色は茶色になりそうです。

 久し振りの三人、楽しく書けました!


 追記です。

 たんぽぽの帯の色は、たんぽぽの色の黄色と黄緑です。

 茶色は「もし非常口になる前(生前)の姿に依って神使になったら」ということで……。

 紛らわしい書き方をしてすみません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 椿と響の関係にニヤニヤしちゃいました♡ たんぽぽの帯は茶色……元の姿は、あれかこれかなあなんて想像して楽しませていただきました! たんぽぽのお話から先に読んで、椿はどうしているんだろう…
[良い点] めっちゃ良かったよ! 続きを書いてくれてありがとう! (((o(*゜▽゜*)o))) あっりがとうございます!だ。 たんぽぽーっ! ╰(*´︶`*)╯♡
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