田舎電車での出来事。
☘☘☘☘プロローグ☘☘☘☘
今日は朝から快晴だったので、俺と雅広は電車での小旅行を楽しむ日にしようと決めた。
定期的に電車に揺られながら気が向いた駅に下車して町を散策する日を持つよう二人で決めたんだ。
この電車での小旅行の案は、雅広だったんだがな。
雅広となら何をしようとどこへ行こうと楽しめるんだが、電車に揺られながらのちょっとした旅を俺は特に好んだ。
ただ、雅広とのたまにの電車移動での旅は本当に楽しいのだが……………こやつは、俺と一緒に電車に乗ると決まって思い出に浸ってしまうのだ。
あの日の事をな………。
俺と雅広の田舎電車での出来事の思い出を巡らせてしまうんだよな。
今、俺の隣に座る雅広はあの出来事の日の思い出に浸っている状態になってしまった。
つい先程までマシンガンのようにベラベラと俺に他愛も無い話をしていたのに、いつの間にか静かになったと思ったら案の定これだ…………何時ものことなんだがな。
俺は雅広の横顔をじっと見つめた。美しい横顔だ……。
あの日から何十年も時が経ち、世の中も変化して俺達二人も年老いて姿も変化した。
ずっと変わらないのは…………お互い愛し合う気持ちだな。
雅広の横顔を見ながら決まって俺もあの日の田舎電車での出来事を回想してしまうんだよな。
一緒に浸ってしまうんだ………。
何時ものことなんだかな…………。
❁一話❁「稲妻に打たれたような衝撃。」
俺の名前は矢沢信義。43歳。素材会社を経営する男だ。
三十代で立ち上げた会社は徐々に大きく成長し世間からも注目されるようになってきた。
念願だった国内での自社素材工場を最近、ようやく建てらることにもなった。
工場を建てた場所は、工場誘致をしていたとある有名観光地だった。
山と海に囲まれた有名観光地を俺はとても気に入った。
緑も多くのどかで過ごしやすい所だ。
工場の従業員は全員、地元の人のみにした。
会社の業績も伸びに伸びていたため工場もフル稼働状態だ。
工場の見直しやら工場の社員達と今後の事業展開の説明会議のため本社のある東京から数日前に俺一人でこの観光地に訪れていた。
今日は会議が長引いてしまったため宿泊しているホテルに戻る頃にはすっかり夜になってしまっていた。
まだ工場に残っていた社員達に労いの挨拶をし工場を後にした。
宿泊しているホテルの場所から工場のある場所まで電車で通っているのだが俺はこの利用する電車もいたく気に入ったのだ。
古びたレトロ感のあるトイレ付の田舎電車。
都会には無い、昔風で懐かしさを味わえる田舎電車に乗るのも楽しみの1つだ。
明日の午後からは、オフにしたからこの町をゆっくり観光しようかな。
ホテルに戻ったら直ぐにひとっ風呂浴びて上手いメシを食いながら地酒でものもうかな。
など、など、ホテルに戻った後の事や翌日の観光の事を考えながら、田舎電車に乗る駅までウキウキしながら軽い足どりで歩いた。
駅に到着し、ホームで電車が来るのを待っていた。
駅のホームで待つ客は、俺一人だけだった。
心地良い風が吹いていて、鈴虫が鳴いていた。
静かで落ち着く駅のホームだとしみじみ感じた。
昨日は、一番前の車両に乗って帰ったので今日は一番後ろの車両に乗ることにしよう。
乗る車両を変えていくのも楽しみの一つなのだ。
ホームの最後尾で電車が来るのを待つことにした。
ガタン、ガタン、と音をたてながら俺が乗る電車が駅を目指して走らせていた。
東京の電車と違ってゆっくり走る田舎電車だな~と思いながら電車が何両か俺の目の前を通りすぎたその時!!
何両目かの中の座席に座っていた一人の男を目にした瞬間、俺は稲妻に打たれたような衝撃をうけたんだっ!!
稲妻に打たれたような衝撃…………正に一目惚れだったのだ。
一目見た瞬間のまさかの一目惚れ…………な、なんてことだ………。
❀一話❀「稲妻に打たれたような衝撃。」終わり。❀二話❀に続く。