思いでぽろり2 千葉
(東京と会ったのは、そう……)
中学生の頃に思いを馳せる千葉、彼女の心に浮かんだそれは、三年生の時の夏コミ。
「いやー、第八東小隊の新刊も全部買えたし、満足満足」
お目当てのグッズを全て入手した千葉はご満悦の様子で駅へと向う。
しかし、幸せの時間はそう長くは続かない。
パンパンに膨らんだ紙袋が裂けたのは、丁度駅の目の前で、そこは多くの人が出入りする場である。
「~~~~ッッ!!?」
一応は彼女も女子である。
公衆の面前で同人誌をバラ撒くなど恥以外のなにものでもない。
千葉はしゃがむと慌てて拾い集めようとする。
しかし仮に拾い集めてもソレをまた収納する袋は無い、千葉が内心泣きそうな思いになると、スッと一人の少年が一緒に拾い集めてくれた。
手際よく、表紙が大衆受けしない物を優先的に拾い集めていく。
「ほらよ」
最後にそれを千葉に渡すと少年は鞄から大きな紙袋を取り出す。
「これうちのサークルので悪いけど、これに入れとけよ」
少年ががばっと開いた紙袋の中に、千葉は腕の中の同人誌達を入れてから受け取った。
「それじゃ、漫画の詰め込みすぎには注意しろよ」
何のお礼も求めず、少年はその場から歩き去ると小柄な少女の元へと行った。
お礼を言うのも忘れてしばしぼーっとしていた千葉が、ふと紙袋と見ると、そこには大きく《第八東小隊》の文字が……
「確か『うちのサークルの』って……ヒガシックスー!!?」
重大な事実に気付いた千葉は慌ててその少年東京と、その横に並んで歩く少女埼玉の後を追いかけた。




