20th LAP 踏み出した一歩
エピローグ その2
前回の書き忘れ分の追加の為、短いです
「イヤッハァ~~~!初戦4位入着なんて去年の事を考えたら最高の結果デェ~ス!!」
およそ組織のトップとしてはあまり出してはいけないような嬉声を上げた瑪瑙が、戻ってきた颯太に向けて両手を大きく広げてダイブする。
しかし颯太も彼女の扱いが分かってきたのか、広げられた腕をスルリと掻い潜ると、抱き締める対象を失った瑪瑙が強かに床とキスをする。
常人なら脳震盪を起こしたり、鼻血が出たりするものだが、普段から黄玉の激しいツッコミで耐性が出来ているのか、鼻先が赤くなった程度ですぐに立ち上がる。
「折角の美少女の抱擁を無碍にするとはツレナイデス。けれど今日の結果にワタクシは満足なので、ヨシとするのデース!」
めげない彼女のメンタルはある意味、驚嘆に値する。
そんな彼女とまともに付き合っていては疲れるだけと知っている他の面々は、喜び続ける彼女を無視して、颯太に駆け寄る。
「やったじゃねぇか!ボウズ!」
「お疲れ様でした、速水さん。素晴らしい走りでしたね」
弾吾が颯太の頭をガシガシと力強く撫で、黄玉が嬉しそうな笑顔で迎える。
「ありがとうございます。でも表彰台には届かなかったし……それに……」
4位入着は確かに誇らしい成績だ。しかし颯太の顔に笑顔はなく、バックストレート側に設置された電光掲示板に視線を向ける。
そこには今回のレースで獲得したポイント累計の順位が表示されていた。
ガンフォーミュラはゴールした順位だけで最終順位が決まるわけではない。
途中のチェックポイントを通過した順位や道中での戦闘結果が加味されて、初めて最終順位が確定する。
そして颯太の最終順位は16ポイントで14位。
最後方スタートという事もあって、先頭に追い付く為に戦闘を最小限に控え、各チェックポイントの順位ポイントも獲得出来なかった事が大きく響いていた。
リオネスは着順ポイントを順調に重ねて、32ポイントの3位なので、大きく差をつけられた格好だ。
「開幕戦ですし、気にするポイント差ではありませんよ。スタートの遅れの分が無ければ1着も狙えたタイムでしたからね」
ケインが慰めの言葉を掛けてくれるが、それも含めてレースなのだ。
頂点を目指す為にはそれすらも覆すほどの強さを身に付けなければならない。
「まだ初戦ですので、煽て過ぎないで下さい。まだまだ改善点は多いですから」
一人冷静なレイジがそう言いながら端末のディスプレイを皆に見せるように向ける。
そこには何本もの折れ線グラフが表示されていた。
「これは今日のレースの機体損耗率とエネルギー消費率を表示したものです。うちのチームは去年の成績の事もあって、マークもされず、戦闘も極力避けていたので、中盤まではどちらもかなり低く抑えられていました。ですがそれ以降はどちらも急激に上昇しています。こちらの調整不足もありますが、訓練校を卒業したばかりという事もあって動きに無駄が多いのが原因の1つです。そしてその後ですが……」
次にレイジが指し示した箇所から折れ線グラフは直角に近いほど損耗率と消費率が急上昇している。
「これがビーストシステムを使用した直後のデータです。序盤に損耗率が低かったおかげでゴールまで耐えましたが、ゴール直後の損耗率は90%を越えています。外装からは分かりませんがフレームは相当にボロボロとなっているはずです。やはり量産機のパーツでは耐久力に難があるようですね」
「そうですね。今後はもっと厳しいレースが増えてくるでしょうから、フレームの耐久性も改善しなくちゃいけませんね。選考レースの時のようにゴール前でクラッシュしたら元も子もありませんからね」
データを覗き込む為に近付いた黄玉に、ドギマギして耳を赤くしたレイジがコクコクと頷く。
「んじゃ、浮かれるのもここまでだ。撤収と次のレースに向けての準備だ!」
弾吾の掛け声で浮かれていた空気が引き締まる。
1つのレースは終わった。
だがそれはスタート地点に立っただけに過ぎない。
目指すべき頂点は遥か先。
そこに向けた最初の一歩を、チームメノーインは踏み出したのだった。
GⅡトータルランキングポイント
1位 ミハエル=イエーガー 44ポイント
2位 カルマン=カイオス 38ポイント
3位 リオネス=レオハーツ 32ポイント
4位 レンデン=マクレーン 31ポイント
・
・
・
・
・
14位 ソウタ=ハヤミ 16ポイント