俺は幼馴染に復讐する
俺は見てしまった。幼馴染で恋人の藤原二千華が、大学の先輩白神雅生とホテルから出てくるのを。
「二千華、どういうことだよ!」
「明也、ごめん。私、苦しかったの。好きな人に辛い思いさせてるのが耐えられなかったの」
二千華の家は決して裕福ではなかった。都会で一人暮しをするのに二千華がバイトするだけでは足りなかった。
俺は二千華の生活費を稼ぐため、バイトを掛け持ちした。そして稼いだ金を二千華に渡していた。
「ふざけんな! そんな言い訳――」
「今井君、俺に説明させてくれ」
二千華を庇うように白神が割り込んできた。
「彼女追い詰めたのは今井君、君だよ」
「はぁ?」
「彼女は泣いていた。君を楽にしてあげたいってね」
「だったら何でこんなこと!」
「わからないのかい? 彼女は君じゃなくて俺を選んだんだ」
「……何を言ってる?」
「こういうことだよ」
そう言うと、白神は二千華を自分に抱き寄せて――。
「ん……」
二千華とキスをした。
あまりの出来事に、俺は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
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あの後のことは正直覚えていない。でも、二千華が俺を裏切ったのは事実。
二千華には報いを受けてもらう。俺の気持ちを踏みにじったことに対しての。
そして、俺の復讐が幕を開けた。
まず、俺は二千華と白神を別れさせた。これは意外と簡単にできた。
白神に女を紹介したのだ。元々人の彼女に手をだすようなやつだったので、あっさりそっちに靡いた。まあ、紹介した女は性病持ちだがな。
結局二千華は生活が立ち行かなくなり、大学を中退する。その後地元に戻って就職した。
俺は大学卒業後、二千華と同じ会社に就職する。
その会社は全国規模で支社を持っていた。俺達の地元にも支社が存在する。
そこで俺は実績を積み上げ、人事を担当できるまでに昇進した。準備は万全、後は復讐を完遂するのみ。
「藤原君、君には四国に行ってもらう」
「あき……今井さん、無理です。ここには両親がいるので転勤はできません」
「そうか、なら君は解雇だ」
「そんな! それって不当解雇じゃないんですか?」
「就業規則を読んでいないのかい? 会社は転勤を命ずることがあると書いてある。それに応じられないのであればこの解雇は正当だ」
「うぅ……」
こうして俺は二千華をクビにし、路頭に迷わせた。
二千華は職場の男と婚約していたが、これがきっかけで破談となった。二千華はショックで引きこもりになったそうだ。
その後のことは何も知らない。
最後まで読んで頂きありがとうございました。