地獄の根性焼き
燃え盛る研究区画の中、ノスモーキングは辺りをスキャンする。
自らを創り上げた研究員達は軒並み行動不能となっており、そこかしこで倒れ伏している。ここまでは女王から下された命令通り。しかし、ノスモーキングに搭載されていたスキャナーは巧妙に隠れていた生体反応を一つ、しかし確実に見いだしていた
その反応は女王によって下された最重要抹殺指令によってインストールされた世界最強の一角として君臨するヘビースモーカーの反応であった。
『出てきなさい死の煙のケイ。いるのは分かっています』
中性的な合成音声を発するノスモーキング。しかし、燃え盛る研究区画の中、反応する者はいない。
ノスモーキングは瓦礫の山に向かって背中に2門装備されている35mmアンチニコチンパッチ砲を放つ。放たれたアンチニコチンパッチにより瓦礫は飛ばされ、土煙が舞い上がる。
そして、土煙が晴れた頃、そこに立っていたのは
「……流石は、最新鋭のAIを搭載した対ヘビースモーカー最新兵器ノスモーキング……と言ったところか」
研究所所長パッチであった。額からは血を流し、白衣はボロボロになっている。明らかに満身創痍であった。
『そのような変装は無駄です』
しかし、ボロボロになっているパッチに容赦なく自身の最強の武器であるアンチニコチンパッチ砲を発射するノスモーキング。
超強力なアンチニコチン成分の含まれた砲弾はパッチの立っていた場所を轟音と共に正確にえぐり取った。土煙と共にパッチの着ていた白衣が舞う。
濛濛と土煙が漂う中、カチッという音と共に800℃ほどの熱源が出現したのをノスモーキングのセンサーは感知していた。
次の瞬間
シュボオオオオオオッッッッッ!!!!
茶色い土煙の中をかき分けるかのように竜巻のような白い煙がノスモーキング目掛けて放たれた。
避ける暇も無く白い煙が直撃するノスモーキング。しかし、常人であれば戦闘不能になっているであろうこの攻撃に、兵器であるノスモーキングはびくともしなかった。
「チッ……硬ってえな…カタログスペック上ならコイツで吹き飛ばせるはずなんだがな」
そんな声と共に煙の中からパッチの変装を解いた傷一つ無いケイが姿を現した。ケイはアピスの能力により、この研究所のトップであるパッチに変装し、研究所の内部を探っていたのだ。無論、新型対ヘビースモーカー自律式稼働兵器であるノスモーキングの情報も手に入れていた。
だが
『残念ですがその情報は28分と43秒ほど古いです。ワタシの装甲はヘイターニコチウム合金に加え、ヘビースモーカー達のニコチン攻撃を軽減するアンチニコチンシリコンが塗布されています』
アンチニコチンシリコン
金属に塗布すると防さび効果を持つ樹脂塗料であるシリコンにアンチニコチン成分を混ぜ込んだ塗料であり、ヘビースモーカーからの攻撃をかなり受け流せると言うことで大きな注目を集めている。しかし、合成の方法が非常に難しく、兵器としての実用化の目処は未だに立っていなかったはずなのだが……
「チッ……頭に蝶々が飛んでる蛾の奴め……」
情報にないアップデートを施した人物の顔を思い浮かべ、思わず悪態を吐くケイに対して無機質な声で告げるノスモーキング。
『ヘビースモーカーを知り尽くし、無敵の力を持つこの私に隙はありません。おとなしく投降しなさい』
ノスモーキングがニコチンパッチ機関砲を連射する。しかしケイはニコチンパッチを右手に持った缶ピースの缶で弾きながら躱していく。
「なら……隙がねえか試してやる……ッッ!」
ケイは素早く缶ピースから煙草を5本取り出すと口に咥えて火をつけた
「受けてみなッッッ!!デッドエンドスモークッッッ!!!」
ケイの放ったデッドエンドスモークは辺りの瓦礫を吹き飛ばしながら瞬く間にノスモーキングを包み込む。しかし
『想定の150%のダメージ しかし、各部異常ナシ 戦闘続行可能』
ノスモーキングに大した影響が見られず、反撃と言わんばかりに脚部に装備されているニコチンパッチ機関砲を掃射する。それを寸での所で瓦礫に身を隠すケイ。しかし、隠れるケイに向かってのスモーキングはさらにニコチンパッチ機関砲を放ち、ケイをあぶり出そうとする
「その装甲。アンチニコチンを配合したヘイトニコチニウム製だったな。その上アンチニコチンシリコンだったか!流石に一級品の堅さだな!!」
『その通り。あなたがこの装甲を破るのは不可能です。諦めて投降しなさい』
再びアンチニコチンパッチ砲の照準を瓦礫に隠れるケイへとロックオンするノスモーキング。それを見てケイは動揺もせず不敵に笑う。
「はん!残念だが、俺が諦めるときは煙草を吸えなくなった時と決めてんだよ!!」
ケイはくわえていた煙草を手に持った。その瞬間、煙草の火種は赤みをさらに増し、赤黒く変色。そして巨大な鎌へと変形していく。
ケイのその姿はまさに死神。
「お前にいいことを教えてやろう。通常、煙草の火種の温度は精々1000℃。その程度じゃ鉄だって溶かせない。だがな」
『死の煙のケイから高エネルギー反応――!これは!!』
この時、ノスモーキングにあるはずもない感情《モノ》が目覚める。それは、機械である自身には決して芽生えるはずのないモノ。しかし、最新鋭のAIを搭載するノスモーキングは、いとも簡単に獲得してしまった。
『あ……AA……繧、繝、縺?繧、繝、縺?繧、繝、縺?繧、繝、縺?繧、繝、縺?豁サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?ュサ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?ュサ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?ュサ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?ュサ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?ュサ縺ォ縺溘¥縺ェシニタクナイ!!!』
「俺の煙草の火種の温度は100000℃だッッッッ!!!地獄の根性焼き、受けてみな!!!!地獄の根性焼き!!!!!!」
この瞬間、恐怖という感情を獲得したノスモーキングは逃走という選択肢を選んだ。
だが、この選択を笑う者はいないだろう。なぜならばケイの放った一撃により、ノスモーキングの生まれた研究区画は一瞬にして灰燼に帰してしまったのだから。
「ッチ……逃げたか……」
ケイは咥えた煙草に火をつけると、逃げ遅れたクイーンズ・サーヴァントの残骸を踏みつけ、ノスモーキングを追った。
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