対ヘビースモーカー自律式稼働兵器“ノスモーキング”
「所長!いかがされましたか?!」
「進捗のほうを見に来た」
突然の所長の来訪に新型対ヘビースモーカー兵器開発区画のリーダー研究員は多少驚きつつも対応し、所長を新型兵器の前に連れて行く
「どうだ新型は」
「順調です。明日には稼働実験を行えるかと思います。新しく入ったエミリアさんの創り出した戦闘用AIがうまいこと嵌りましたよ!本当に彼女はすごいですね!着任初日とは思えないですよ!まさに完璧と言って差し支えないできですよ!」
そう言って嬉々として新型兵器の説明を始める研究員。その説明を聞き流しながらパッチ所長は目の前に鎮座している新型兵器を眺める。
まだ光が灯ったことのない単眼のカメラ。そして人の背丈の3倍はある体躯と、それを支える重厚な2対の脚部。そして一際目を引く背部に装備されている二門の35ミリのアンチニコチンパッチ砲と機体の各部に装備されている計4門のアンチニコチンパッチ機関砲。全身を覆う装甲にはヘビースモーカーからの攻撃にもびくともしないアンチニコチンが合成された金属、ヘイターニコチウムが使用されている。
そして動力部に搭載された半永久的に稼働する最新鋭のエネルギー機関であるアンチニコチンリアクターと、機体を制御するために搭載されている戦闘を重ねるごとに自らを最適化し、戦闘プログラムを強化、そして進化する最新鋭の自律可動式AI。
攻守、及び戦略にも長けており、最早無敵といっても差し支えないほどの武装と防御力を誇っている新型兵器、対ヘビースモーカー自律式稼働兵器“ノスモーキング”はそこに鎮座していた
「完成度は」
「もうほぼ完成しております。すぐにでも実働実験を開始できます!」
パッチに対して鼻息荒く力説する研究員。パッチが研究員からの説明を聞き流しながらノスモーキングの観察を続けていると、研究区画の端にノスモーキングに似ている兵器が5機鎮座していた。ノスモーキングと姿形はよく似ているが、ノスモーキングよりも二回りほど小さい。
「これは?」
すぐさま研究員に尋ねるパッチ。すると研究員は事も無げにこう答えた。
「ああ、そちらはノスモーキングの子機であるクイーンズ・サーヴァントです。エミリア研究員のアイディアで作成した物で、つい先程完成致しました。ノスモーキングに比べ性能はかなり落ちますが、それでもかなりの物です」
「……報告はなかったようだが?」
「え?い、いや…しかし…許可は取ったと……」
パッチに睨まれ、しどろもどろとなる研究員。そんな研究員に対してパッチはさらに問い詰める。
「一体何処の誰が私に許可を取りに来たのか言ってみたまえ」
「え……エミリア研究員が……」
滝のような冷や汗を流しながら答える研究員
その時だった
新型壁を開発している区画内に警報が鳴り響き、研究員達は何事かと辺りを見渡す。すると、区画内にある所狭しと並べられているディスプレイに次々と“EMERGENCY”の文字が浮かび上がり、辺りは騒然となる。
「大変です!ノスモーキングの内部エネルギーが上昇!起動シークエンスに入っています!アンチニコチンリアクター臨界!」
「自律式AI起動!停止信号受け付けません!」
ディスプレイに映し出されていく数々の異常事態に研究員達は必死にキーボードを走らせながらなんとか停止してみようと停止信号プログラムをノスモーキングへと向かって発信する。
しかし
「駄目です!AIがプロテクトをかけました!進入できません!……!大変です!こちらのシステムに何者かが侵入しております!発信源は……ノスモーキングです!」
「なんとかして食い止めろ!」
「駄目です!研究所のシステムが完全に乗っ取られました!」
その言葉を最後に、区画の非常用シャッターが閉まり、ノスモーキング子機達が次々と動き出した。次々と設備を破壊し、研究員達を襲い始めるクイーンズ・サーヴァント達の姿を見て区画内は途端にパニックに陥る。
「どうにかせんか!」
「む、無理です!ノスモーキングの自律式AIは起動してしまったら最後。こちらで制御は……」
半泣きになりながら答える研究員に舌打ちをしながらパッチは手近にあったディスプレイを睨むそこには闇夜を優雅に舞う1匹の蝶の映像が
次の瞬間ノスモーキングの単眼の瞳に凶悪な赤色の光が灯る
獣の呻き声のような金属音を轟かせ、自身に繋がれている配線を引きちぎりながらノスモーキングはゆっくりと、しかし力強くその剛脚を一歩、踏み出した
数秒後、新型対ヘビースモーカー兵器開発研究区画は悲鳴と爆炎に包まれた。
・・・
研究所内に新型兵器ノスモーキングの暴走を知らせる警報が響き渡り、研究員達が我先にと研究所から逃げ出そうとする中、アピスは新型アンチニコチンを開発している区画へと足早に向かう
(くっ…思ったよりも早かったわね……研究員達が新型アンチニコチンの成分表を運び出す前にデータを破壊しないと!)
逃げ出す研究員達を尻目に急いで研究区画へと向かうアピス。
そして、偽装したIDカードで新型アンチニコチン成分開発区画へと入るアピスだったが
「っ……!」
「ふぅーー……ふふ♪一足遅かったですね」
誰もいないはずの薄暗い研究区画、そこで意気揚々と加熱式煙草を吸うエミリア・アレクシーがそこにいた。すかさず変装を解き、臨戦態勢となるアピスに対してエミリアはにこやかに笑みを浮かべる。
「初めまして……ではないわね。先程ぶりですね“煙幻自在”のアピスさん♪」
「“幻影の煙”……」
アピスは目の前でにこやかに微笑むエミリアを憎々しげな目で見つめながら腰の拳銃ホルダーに手をかけた。
アピスは腰のホルダーから素早くガットグリルガンを抜き、エミリアに向けて構えた。
設定:ガットグリルガン
ガットグリルガンとは超高温の煙草を発射する拳銃型の武器で、相手に重度の火傷を負わせる武器である。潜入能力は秀でてはいるが、戦闘能力は余り高くないピアニスはこれをいつも常備している。