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現代訳童話 赤ずきん

作者: 仮定

初投稿です。色々雑なので気楽にお読みください。

 あるところに赤須金治(あかずきんじ)という高校生の男の子がいました。

 同年代の男子達より背が10センチほど低くそのうえ童顔の赤須君はたまにクラスメイトに容姿をからかわれることもありましたが持ち前のそのおおらかな性格から怒ることなく波風ない穏やかな高校生活を送っていました。

 

 ある休日の午後に赤須君が自室でゲームをしていると母親に用事を頼まれました。その用事というのは近所で1人暮らしをしているおばさんに食料を届けるというものでした。

 おばさんは赤須君からすると母親の妹にあたる人で昔からよくかわいがってもらっていました。おばさんはおこずかいをあげる代わりに酒瓶や缶が散乱した自分の部屋を掃除させたりするちょっとダメな大人でしたが赤須君はおばさんによくなついていました。

 なんでもそのおばさんが今朝から体調を崩していて家から出られないらしいのです。


 赤須君は1人で日本酒の瓶を3本開けても次の日には何事もなかったように朝から友達とのサバゲーに出かけるおばさんが体調を崩す姿が想像出来ませんでした。

 しかし、万が一のこともあると思いおばさんの家に行くことにしました。

 

 そして赤須君は母親からおばさんの好物のモンブラン1ホールとワイン数本が入ったクーラーボックスを渡されました。

 病人への見舞い品に消化に良くなさそうなケーキとアルコールを持たせる母親の感性を一瞬疑いましたがおばさんなら多少胃が弱っていても喜んで食べるだろうだと思いクーラーボックスを受け取りました。

 

 外出する前に春先に部屋着の薄手のTシャツ1枚だけでは寒いと考え赤須君はお気に入りの赤いパーカーを羽織り家から出ました。


 家からおばさんの家までは自転車で10分、徒歩で30分ほどです。 

 いつもは自転車で行くのですが今日はモンブランの入ったクーラーボックスを持っていくので徒歩で向かうことにしました。






「おーい」


 家から出発し10分ほど歩いたころ後ろから声をかけられました。後ろに振り向くとそこには赤須君のよく知る艶のあるロングヘアの美少女が立っていました。


「あぁ大神さんか」


「良かった。その赤いパーカーやっぱり赤須君だ」


 そう言って笑みを浮かべた長身の彼女は大神凛(おおかみりん)といい赤須君と幼稚園から現在に至るまでずっと同じクラスの幼なじみなのでした。


 小さいときはお互いの家でよく遅くなるまで遊ぶほど仲が良い2人でした。親同士も親交があり一緒にお風呂に入ることもありました。

 大神さんはその頃から可愛い女の子でしたが当時赤須君はあまり異性として大神さんを見ていませんでした。


 時がたち中学生になると大神さんは元からどんどん女性らしい体つきになっていき元から可愛いとよく言われていた顔も更に綺麗になっていきました。

 そんな大神さんですが赤須君に接する態度は変わることはなくそれどころか昔よりスキンシップは激しくなりました。

 大神さんの体の豊満な箇所を毎日のように体に押し付けられ周囲の男子からは恨みがましい視線を浴びていました。

 

 ですが思春期真っ只中のピュアボーイ赤須君にとっては刺激が強すぎいつからか大神さんのことを避けるようになっていきました。同じクラスなので多少話をする機会はあるものの2人の仲は前よりも疎遠になっていきました。


 大神さんは当時から頭が良かったので自分よりも1つ2つレベルの高い高校を受験し別々の高校に行くと赤須君は思っていました。

 しかし、高校に進学し自分のクラスに入りそれとなく周りを見てみるとある席に大神さんが座っていたのです。そのとき初めて赤須君は大神さんが同じ高校を受けていたことを知りました。

 高校生になってからも2人の距離が縮まることはなくただただ日々が過ぎていきました。


 そんなわけで赤須君は久々に大神さんと2人きりで話していたのでした。

 大神さんは高校生になってからもその美しさが損なわれることなくそれどころか更に磨きがかかっていて会話の最中でも赤須君は内心とてもドキドキしていました。

 しばらくお互いの近況について話していると大神さんが赤須君の肩にかけているクーラーボックスに気が付きました。


「そういえばそんな大きなクーラーボックス持ってどこ行くの?」


 そう聞かれた赤須君はおばさんが体調を崩しそのお見舞いに向かう途中であることを伝えました。

 昔よく赤須君と一緒に遊んでもらっていたので大神さんもおばさんとは面識がありました。


「えっ? おばさんさっきサバゲーに行くって言っ……」

 

 大神さんはおもわず小さな声でつぶやきました。

 というのもおばさんが体調を崩していたのは嘘ではありませんでしたが昼までの仮眠により既に完全回復していました。おばさんの回復力は化け物でした。

 そしておばさんは赤須君のお母さんにした連絡も忘れ意気揚々とサバゲーに向かう途中に大神さんと偶然会っていたのでした。

 もちろん赤須君はおばさんが回復し呑気に遊びに出かけていることなんて知りません。


 大神さんはそのことを伝える直前ある妙案が頭によぎりました。

 その計画は多少道徳観を疑われるような悪魔的発想でしたがコンマ数秒の思考の後、大神さんは実行に移す決意をしました。


「そっそうなんだ。時間取らせちゃってゴメンね。私もちょっと用事思い出したから行くね」


 大神さんはちょっと二ヤケながら畳みかけるように話すと赤須君が返事をする前に走り去ってしまいました。

 急におかしな挙動を示した大神さんを不思議に思いましたが改めておばさんの家に向けて歩き出しました。歩みを進めながら赤須君はまた学校でも今日みたいに大神さんと話せたらいいなと思いました。






 その後は特に何事もなく赤須君は無事おばさんの家に到着しました。ドアの横のチャイムを何度か押し声をかけてみましたが何も反応がありません。

 赤須君はどうしようか少し考えましたがお見舞いに持ってきたものだけでも置いていこうと思い母親から預かった合鍵を使って家の中に入ることにしました。


 キッチンにある冷蔵庫に持ってきた見舞い品を入れおばさんがいるかもしれないと思い寝室に向かいました。

 ノックして部屋に入る直前、赤須君は何故か背中に悪寒が走り何か嫌な予感がしました。得体のしれない恐怖を紛らわすために深くフードを被り意を決して部屋に入りました。

 

 寝室はカーテンが閉められ照明も消されているため薄暗くまた部屋のあちこちに空の酒瓶や缶が転がっていました。

 部屋に入ると奥にあるベットの上の掛け布団がちょうど人1人分ほど膨みをもっていました。赤須君はどうやらおばさんは寝ているのだろうと思いましたが一応確認のため声をかけてみました。


「おばさん起きてますか金治です。お見舞いに来ました」


「おお金治か。よくきたね」


 布団にくるまった人物は起きていました。赤須君は声が返ってきたことに少し驚きましたが元気な声を聞き安心しました。そして今の会話で生じた疑問を聞いてみました。


「起きていたんですねおばさん。声がいつもとなんか違いますけど大丈夫ですか」


「えっ。ちょっちょっと風邪で喉をやられてちゃってねぇ。ごほっごほっ」


 なぜか一瞬挙動不審になりながらも布団の中から回答が返ってきました。


「そうだったんですね。体を大事にしてくださいね」


「ああ気を付けるよ。そうだ金治、もう少し近くに来てその鈴のような声を聞かせておくれ」


 赤須君は部屋に入る前に感じた悪寒をまた感じました。少し動くのを躊躇しましたがおばさんも風邪で心細いのだと思いドアの側からベットの横に移動しました。

 近づいてベットにいる人物を改めて見ると布団で体の大部分が隠れていますが一部がはみ出ていました。赤須君はある事に気づきました。ベットの膨らみが明らかにおばさんよりも大きいのです。おばさんは遺伝か赤須君と同様に小柄なので布団の両端から手足が同時にはみ出るわけがないのです。

 赤須君は今すぐ逃げ出したい衝動に駆られましたが混乱してつい思ったことが口からそのまま出てしまいました。


「おばさんなんで今日はそんなに手足が大きいんですか?」


 無茶苦茶な質問でしたが少しの沈黙の後ベット上の人物は話だしました。 


「それはね」


 赤須君は小さな声を聞きとるために恐怖に震えながらベットに近づきました。


「金治くんをたべちゃうためだよ」


 そう聞こえたのと同時に赤須君は布団の中から伸びてきた2本の手に両肩を掴まれあっという間にベットに押し倒されてしまいました。

 赤須君はこのときはじめて布団の中にいた女性が大神さんだったことに気づきました。なんとかベットから脱出しようと試みましたが身長は大神さんの方が高く、単純な筋力も運動部の大神さんに分があり赤須君は全く身動きできませんでした。

 赤須君は非常に混乱しました。なぜ大神さんがおばさんの家にいるのかとかおばさんはどこに行ったのかとかなぜ押し倒されているのかとか食べるって何だとか大神さんめっちゃいい匂いするなとか名前呼びなんて中学生の時以来だなとか疑問が山積みでした。

 なにがなんだか分かっていない赤須君に大神さんは丁寧に現状に至るまでの過程を1つ1つ説明し始めました。


「金治くんは知らないみたいだけどおばさんもう元気そうだったよサバゲーに行くの見たし。おばさんの家には玄関前にある植木鉢の下にある鍵を使って入ったの。昔遊びに来たときと置き場所が変わってなくて良かったよ」


 いい大人なんだから風邪が治って遊びに行くなら連絡くらいしろとか家のセキュリティガバガバすぎでしょとかおばさんに言ってやりたいことは山ほどありましたが当の本人がここにいないのでどうしようもありませんでした。

 それにまだ疑問も残っているため赤須君は大神さんに馬乗りになられたまま話の続きを聞くことにしました。


「ああそうだよね。そもそもなんで押し倒されているのか金治くんは分かってないよね。金治くんが悪いんだよ? 昔から大好きだったのに私のこと避けたりするから。金治くんのために頑張っておしゃれ覚えて綺麗になったのに」


 あの大神さんが自分のことをずっと好きだったなんて思っていなかったので赤須君は驚きを隠せませんでした。


「知らないと思うけど金治くんいいなって思ってる女の子結構いるんだよ。同じ学年の佐々木さんとか沙希ちゃんとか。だからねこのままだと他の狼さん(おんなのこ)に金治くんとられちゃうから……」

「金治くんのことたべちゃうことにしたの」


 大神さんは妖艶な笑みを浮かべました。


「こんなことになっちゃったけど金治くんがいやならこれ以上は何もしないよ」


 大神さんのこの言葉は本心でした。現状理性がかなりグラグラして怪しい状態でしたが赤須君が嫌だと言えば今すぐ解放して家に帰すつもりでした。

 赤須君は少しの間悩むそぶりを見せたあと恥ずかしそうにこう呟きました。


「は、はじめてなのでやさしくしてください……」


 顔を真っ赤にしてプルプル小刻みに震える赤須君に大神さんの我慢は限界を超えました。

 こうして赤ずきんは狼さんに余すところなく美味しくいただかれてしまったのでした。

 

 その後、夜になって帰ってきたおばさんが不審者がいると思い部屋にエアガンを構えて突入しとても気まずい雰囲気になるなどのトラブルもありましたがなんとか刑事事件になることなく今回の一連の出来事は終わりを告げました。


 後日赤須君から改めて大神さんに告白し2人は晴れて正式に恋人となりました。

 こうして結ばれたいつまでも幸せに幸せにくらしましたとさ。めでたしめでたし。

























 


 

 

 

 

 


 





 

本作を最後まで読んでいただきありがとうございます。蛇足ですが登場人物の設定置いときます。

赤須君…本作の主人公。原作の赤ずきん担当。れっきとした男子高校生だがとてもいい匂いがして顔も中性的なので数多くのクラスメイトの男子の性癖を歪めてきた。恋愛ごとには消極的。

大神さん…本作のヒロイン。原作の狼担当。出会った時からずっと赤須君が好き。勉強も運動でき学校ではアイドルのような存在。隠れ肉食女子。

おばさん…本作の被害者。アラサー独身。原作のおばあちゃん兼猟師担当。趣味は1人酒とサバゲー。男勝りな性格が災いし中々良縁に恵まれない。高校生になった甥とその女友達が家に来なくなって少し寂しいと思っていたらとんでもない形で再会した。

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