羞恥プレイはほどほどに
チップちゃんのお願いにより、私が丹精込めて作った黒籠手武器がクランに大量にばら蒔かれました。
丹精込めてと言っても、修行の成果により私の耐久力とスタミナは格段に上昇していましたので、一時間程度で作成は終了したのです。流石私、仕事が速い。
ちなみに、自分の使いたい武器を作るときはお金をもらって作りましたので、懐があったかいです。このくらいは当然の対価でしょう。
そういうことで。
私も100%善意でやったつもりはありません。
ちょっとした見返りを要求してもいいと思いませんか? 私は貴女のお願いを聞いてあげたんですから、私のお願いを聞いてくれても……いいですよねぇ?
「そ、それはわかる……それはわかるけど!? それは、わ……アタシの、イメージが、壊れるからっ!」
ここはクランの空き部屋。
鍵がかかった部屋には、私とチップちゃんしかおりません。
そこで私はチップちゃんにとある洋服に着替えるようお願いをしていたのでした。……まさか、こんなところで使うことになるとは思いませんでしたがね。
「い、嫌だからな! そんなのを着た姿を誰かに見られたら、アタシは終わりだ! もう人前に出れない!」
大丈夫ですって。
後で個人的に眺めて楽しむだけですから。チップちゃんの恥ずかしい格好をいつでも見れるとか、考えただけでもゾクゾクしますからね。
「ぞくっ……!? どうしたの、ケルティのとこに行って何かあった!?」
チップちゃんはそう言いながら部屋の隅に逃げていきます。……いえ、何も?
ちょっと自分の中に、女王様が住んでいた事に気が付いただけです。別に痛いことはしませんから、早くこの衣装に着替てください……きっと可愛いですから……。
そう言いながら私が持っていた物は、アイテムボックスの奥深くに封印されたはずの例の衣装……。
アイドル衣装・白 (獣人用) でした。
……中々可愛いでしょう?
フリルやレース、リボンが沢山付けられた逸品ですよ。これを是非チップちゃんに着て欲しいのです。
いつも軍服なんて堅苦しい服を着ているんですから、たまには可愛い服も着てみましょう?
覚悟を決めてください。
私が微笑みながらそう言うと、チップちゃんはいやいやと首を全力で横に振りました。
「なんでそんなの持ってるの!? ……あ、わかった! タビの奴の仕業だ! ちょっと鉛弾ぶちこんで……!? 嘘、移動できない!?」
逃がしませんよ?
既に私の『プレゼント』をチップちゃんに仕込んであります。ちっちゃい針をね。こうこっそりと。
ダメージは受けないと思いますが、『プレゼント』の効果は発動できないんじゃないですか?
「な、いつの間に……」
逃げなれないということを悟ったチップちゃんの顔は、一気に青ざめてしまいました。……さぁ、お着替えの時間です。
諦めて、私のオモチャになりましょうね~。
「ちょっ!? ま、やめっ……」
あ、ちなみに私の筋力ステータスなのですが、もうチップちゃんよりは高くなっております。
銃火器をメインで使う人は筋力が育ちにくいらしいですからね。……という事で。
大人しくしろ~!
うりゃうりゃ~!
かくして私は、真っ白なミニスカ衣装を身に纏い、顔を真っ赤にしたチップちゃんを堪能することができたのでした……。
……。
これは男性には見せられない写真ですねぇ……ふふふ……。
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いやー、満足満足。
私は恥ずかしがるチップちゃんの手を引きながら、空き部屋を後にしました。
服装は元に戻してあげています。顔は真っ赤なままですけれどね。
「死ぬ……恥ずかしくて死んじゃう……」
俯きながらチップちゃんはボソリとそう言いました。……大丈夫ですよ~、誰にも見られてないから安心してくださいな~。
途中混乱してクルクル回ったり、嬉しそうに跳ねたりしたことは誰にも言いませんから~、はしゃいでいた姿も忘れましたから~。
「ホントに忘れて……あの時はどうかしてたの……」
こゃ~ん。
恥ずかしがっている姿を見れて私は大満足です。実のところ、私にこうやって手を引かれている姿も客観的に見れば恥ずかしいはずなんですけれどね?
どうやらまだ頭の中は混乱しているみたいです。可愛い。
さぁ、このまま大講堂に行って修行を致しましょう。きっと皆さんも元気に修行中ですよ。ずっと黒籠手を発動させてますから、武器も消えていないはずですからね。
チップちゃんも修行しますよね?
「うん……修行する……」
あらまぁ素直。
コクりと頷くチップちゃんを見て、私はそう思いました。
ふふふ……自分より立場が上の人間の手綱を握っているこの感覚、たまりませんねぇ。
別にチップちゃんに反逆するつもりは微塵もありませんが、こうやって可愛がるくらいは許して欲しいものです。
しかし、やりすぎはいけませんね。そろそろ大講堂に着きますし、手を離してあげましょう……。
「おっ、居た居た。探したぜ……って、チップなにしたんだ? 顔真っ赤だけど」
「 」
おや、ツキトさんではないですか。
ちょうど廊下の曲がり角で、死角から歩いてきたツキトさんとエンカウントしました。
その瞬間にチップちゃんは声にならない叫びを上げていましたが、気にしないでおきましょ……おやおや?
「 」
よく見ると、ツキトさんは子猫先輩の手を引いて歩いていたようです。人間モードの姿……なのですが。
その服装はいつもとは違いました。
ドレス様な服の代わりに、着ぐるみを着ております。いわゆる着ぐるみパジャマみたいやつですね。
黒猫を模したものの様でフードには猫耳が付いておりました。……これは?
「先輩がなにをしてもいいって言ったからね。この格好で一緒に建物を一周してたんだ。皆修行しているみたいで、たまたま誰とも会わなかったんだけど……出会っちゃいましたね、先輩」
ツキトさんは意地悪な笑顔を浮かべて振り返りました。どうやら羞恥プレイをしていたようです。
「うあああああ……」
子猫先輩は顔から火がでるのではないかと思うほど、顔を真っ赤にしておりました。普段と違う姿を見られて恥ずかしいのでしょう。
「それと、ポロラさんを探してたんだよ。ちょっと用事があってね」
私ですか?
何かしましたかね? クランに帰って着てからは特に問題を起こした記憶はありませんけど?
あ、もしかしてツキトさんも私が作った武器が欲しい感じですかね? 悪いですけどクランメンバー以外の方からはお金をいただきますが……。
私はふふふ……と笑いながら人差し指と親指で丸を作りました。
「いや違うけど?」
どうやら違うそうです。ボッタクリは失敗しました、残念。
「まぁ武器ってところはあってるかな。……ちょっと知り合いにこれを見に行かせようと思ってさ」
ツキトさんはウィンドウを操作し、とあるアイテムを取り出します。
彼の手に現れたのは、大きな翼でした。淡く光を放っています。……それって、ディリヴァの翼ですか?
「そ。使用用途が不明だったからさ、知り合いに片っ端から連絡して聞いてみたんだ。そしたら鍛冶士をやっている人が一度見てみたいってさ。武器にできるかもだってよ」
武器に? これを?
どうすればそんな発想が出てくるのか疑問でしたが……確かにゲーム的に考えればできなくも無さそうですね。
しかも、よく考えなくてもこれはラスボスから取れた素材。希少価値が高く、確実に最上位の素材であることは間違いないでしょう。
……実のところ、そろそろちゃんとした武器を用意しようと思っていたのです。
黒籠手で作ることができる武器よりも優秀な武器というものは少なく、威力だけをみても店売りの武器では不充分でした。
中途半端なものでは、これからの戦場で役にたちそうにありませんからね。
ですので、使うとしたらアーティファクト以上の物をと考えていたのですが……。
「素材として使えたら武器にしてくれるって言うからさ、一緒に行かないかなと思って。何か用事とかある?」
これは思わぬ機会が巡って来ましたね……!
そう考えて私は、ツキトさんのお誘いにニコリと笑顔を作って答えたのでした……。
ところで、その鍛治士さんは何処にいらっしゃるのですかね? 結構遠い場所なんです?
「あー、少し遠いね。ザガードの首都だから」
……は?
「さっきの会議見てた? さっき宣戦布告してきたキーレスさんわかるだろ? あの人のクランで働いている人だからさ。……あ、大丈夫、大丈夫。その鍛治士さん、元はペットショップの人だから」
い、いえ、そうではなくてですね。
なんで宣戦布告してきたクランに遊びに行こうとしてるんですか? たしかもう私達は敵対関係になっているはずでは……。
「そうだったっけ? 確かこっちの話を聞かないで、襲って来るやつも居るかもしんないけど……その時は皆殺しにすれば良いだけだから、なんとかなるんじゃない?」
そう言うと、ツキトさんはニヤリと口元を歪めたのでした……。
あ、わかっちゃいました。
カチコミだする気だ、これ。
・クラン『ノラ』に聞きました!~あなたのクランリーダーのイメージは?~
5位 頼れるリーダー 0.5%
4位 猟犬 1.5%
3位 慌てると素が出る 3%
2位 結構ポンコツ 6%
1位 腹ペコ 89%
……イメージが崩れるとは?
※先日は沢山の評価本当にありがとうございました。ジャンル別日間にも乗れて、とても感謝しております。




