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『妖狐の黒籠手』

 第一容疑者の証言。


『え~『憤怒』の能力は増加と増幅でござるが……プレイヤーが一定のレベルを越えると、『拡大』の能力も使えるようになる……と思うで候う。詳しい取得条件はわからないでござる。』


『能力はスキルの効果範囲が、単体が複数に、複数が全体に……みたいな感じで変化するでござ。もちろん、この効果は『プレゼント』にも作用するで候う』


 第二容疑者の証言。


『チッ、『傲慢』の一般的な能力ってのは、味方が死ぬ度に自身が強化される事と、リーダーになったとき限定で、部下に自殺を強要させるスキルさぁ』


『でだ、私に追加されたスキルはクランメンバーの強制召喚だねぇ。コイツはワカバを殺して、クランのリーダーになったときに手に入れた』


『多分だけど、所属クランへの反逆が取得条件じゃないかい?』


 第三容疑者の証言。


『んっと、『嫉妬』の能力はHPとMPのエナジードレインなんだけど、吸収しすぎるとオーバーフローで死んじゃうのは知っているかな?』


『実は、何十回かオーバーフローで死んでたら、オーバーした分のステータスで命のストックを作れるようになったんだよ』


『簡単に言えば残機を作る事ができる、一つだけだけど』


『ま、普段の僕には不要のスキルさ』


 第四容疑者の証言。


『『色欲』なんだけど……女の子百人位幸せにしてあげたら新しいスキルが出た……。『ソウル・オーバー』ってやつ……。10人相手にする毎に1発撃てるみたい……うねうね』


 第五容疑者の証言。


『容疑者ってなに!? ……え、と、『強欲』の追加スキルは見つけて無いけど、『強欲』持ちのプレイヤーの特徴を見つけたんだ』


『多分、全員『プレゼント』を他のプレイヤーに使ってもらう事ができるんだと思う。むしろ、『強欲』持ちのプレイヤーは、他人に使って貰うのが『プレゼント』の使い方なのかも知れない』


『……分母が少ないから何とも言えないけど』




 と、以上がそれぞれの証言です。


 皆さんの説明を聞いていましたけど……、結構ヤバい事言っていますね。


 タビノスケさんの『憤怒』の能力の『拡大』については、ギフトカードを使っていたチップちゃんも使えたそうです。


 彼女の能力である『イヌワシ』と併用したところ、敵の情報を知ることのできる範囲が格段に広くなり、半径数キロの範囲の状況が手に取るようにわかったのだとか。


 普段は、見通しの良い草原で最高1キロ程度、という事を聞いたことがあったので、拡大の効果は絶大なものだということがわかります。


 ちなみに、取得したのはレベル上げをしている途中だったとか。……何が条件なんですかね?



 次にメレーナさんの『傲慢』について。


 彼女の言った通り、『傲慢』は味方が死ぬ事により発動する能力です。クランやパーティーのリーダーになることで真の能力を発揮できるギフトですが……。


 クランのリーダーが強制自殺の能力を使った時点で、その人の信用は地に落ちるでしょう。皆そんなの使われる前に逃げ出しますよ。


 しかし、新しい能力である強制召喚をすれば何も問題はありません。


 逃げ出した者も、クランで待機している者も、自分のステータスを底上げするための肥料として利用することができるでしょう。


 正に独裁者のギフト。全ての命は自分の為にあるとでも言いたいようです。



 そして、子猫先輩。


 周囲から吸い取った余分なHPとMPを保管しておき、死亡した際にはそれを使って蘇生することができる復活スキルの存在を発表しました。


 それと一緒に子猫先輩は自らの『プレゼント』も公表したのです。


 名前は『ロータス・キャット』。


 イベント中を除き、死亡したら即時復活する事のできる不死身の『プレゼント』だそうです。


 逆にイベント中は『プレゼント』の能力を使えないということがデメリットだそうですね。……しかし、このタイミングで自信の能力を公表したのは何か裏があるように感じます。


 いったい何を考えているのですか……?



 さて、問題のケルティさんです。


 彼女が言った『ソウル・オーバー』というスキル、これ聞き覚えがありますね。


 そう、『色欲』の邪神が使って街を吹き飛ばしたあの攻撃と同じスキルです。


 ケルティさんは多くを語らなかったので詳しくはわかりませんが、相当強力なスキルであることは予想できるでしょう。


 使用条件が倫理的にどうかしていますが、ケルティさんの事ですから何回か使えるのではないでしょうか? 無理矢理乱入して、私を気持ち良くしてくる位ですからね。


 被害者は私だけでは無いはずですから。


 ……怒らせないようにしましょう、ええ。



 最後に師匠の証言。……これなんですけどねぇ。


 完全に、私に関係ある話じゃないですか。


 確かに師匠が作った爆弾とかトラップとかは私でも使えるアイテムですよ?


 けれど、私の『妖狐の黒籠手』で作ったものを同じものと見られては困ります。

 私は質量保存の法則を大きく無視してニョキニョキさせていますが、師匠のは壊してできるもん!って感じですからね。


 全くの別物です。


 それに誰と比べてそう感じたのかもわかりませんしね。根拠が弱すぎるんですよ。


 そんな事を口走ったらどうなるかわかりますか?


 私の所に検証させてほしいという面倒臭い輩が集まるのです。試させろ試させろと絡んで来るに決まっています。……けれど。


 私もそれなりに強くなりましたし?


 ま、そんな奴等は全員返り討ちです。その身を持って検証させてあげましょう。


 びょおおおおおおおおおおお(威嚇)……!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「それじゃあ! ポロラの『プレゼント』の検証をしてみよう! 『プレゼント』無効の能力を皆が使えたら、こんなに便利な物はないからね!」


 びょ、びょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…………(悲壮)。


 会議が終了したあと、私は子猫先輩から会議室に呼び出されていました。チップちゃんと師匠も一緒です。悲しい。


「いつの間に開封したんだ? ポロラも強くなったし、うちのクランは安泰だなぁ。どれくらいレベル上がった?」


「ポロポロ、前に私に武器貸してくれたよね? 怪しいと思ってたんだよ、絶対その能力は他人に貸すためにあるって……」


 くっ……! 逃げられない……!


 どうやら皆さん師匠の証言のせいで、おかしくなってしまったみたいです。これは大人しくいうことを聞いた方がいいでしょう。


 ……それで、私は何をすればいいのですかね? 強いものに巻かれるタイプなので、余程の事がない限りいうことは聞きますが……。


 私は不安そうにそう聞くと、子猫先輩先輩はチップちゃんの肩の上でにゃーっと鳴きました。


「そんなおかしな事はさせないよ! チップに武器を作ってあげて、ちゃんと作動するかどうかを試すだけさ! 君が使っていて気付かない事もあるだろうしね!」


 あ、なんだ。そんな事ですか。


 思った以上に簡単で拍子抜けしてしまいました。それなら早めに終わりそうです。


 それじゃあ、パパっと作ってみますか。……うーん、とりあえず機関銃でも作ってみますかね。


 私は黒籠手を発動し、こねこねと機関銃を作り上げました。私のイメージした通りに出来上がったそれは、既に銃弾が装填されており、すぐにでも射撃が可能です。


「おっ、そんなにすぐ作れるんだな。武器が壊れたらポロラに頼るやつ出てきそう」


 止めてチップちゃん、ホントにそうなるから。


 私はそう懇願しながらチップちゃんに機関銃を手渡しました。


「作成スピードは良いね。重さもそれほどじゃないかな。……これ、アイテム化してアイテムボックスにしまえる?」


 子猫先輩は検証に余念がありません。目がマジになっております。獣の目だぁ……子猫だけど。


「手袋の時は使わせて貰ったけど、何もおかしい事は無かったんだよね。私のドリルは素手扱いだから、武器を使っても対してダメージでないし……」


 そうなんですか? それならチップちゃんが使った時に、どうなるのかは気になりますが……。


 誰に対して撃ち込むんですか? 攻撃判定が無いと検証にならないと思うんですけれど?


 そう私が質問すると、ちょうど良く誰かが会議室に入ってきました。


「やっと着いた……。って、会議おわってんじゃん!? やっぱり道に迷ったのが不味かったか……」


 あー…………。


 きましたね。ツキトさんです。


「はい、チップ。射撃よーい……」


「射撃よーい……」


 子猫先輩は迷い無くツキトさんに照準を定める指示を出しました。チップちゃんもその通りに銃口を移動させます。


「え、なにこの状況? ま、まて、チップ。セクハラ紛いな事をしたのは謝る、だから落ち着いて銃をさげよう? な?」


「……撃てぇ!!」


「死ねぇ……」


 チップちゃんは迷い無く引き金を引き、銃弾をばら蒔きました。


 ツキトさんは襲い来る弾丸を何とか回避しつつ、涙目になりながら部屋のなかを逃げ惑っております。うける。


 そのあまりの惨めさに、師匠も呆れているようでし




 ガシャン。




 ?




 私がツキトさんの様子を眺めていると、チップちゃんの方から何かを落とすような音が聞こえました。


 何が起きたのかわからずに振り向くと、そこには私が作った銃を足元に落とし、驚愕の表情をしたチップちゃんの姿があったのです。


 ど、どうしたんですか!?


 私の作った物に何か不都合が……。


 慌ててそう聞くと、チップちゃんは震えながら口を開きます。


「す、スキルが、全部上がった……。どういうことだ……ポロラ。銃で攻撃してたのに、剣や盾のスキルも成長している……。こんなの……おかしい……」


 え。


 私はチップちゃんが驚いている意味がわかりませんでした。……い、いや。攻撃したら全部の武器スキルとステータスが上がるんじゃ無いんですか?


 それに合わせてレベルも上がるものだと思ってたんですけど……。


「ポロラ。普通は攻撃して上がるスキルは多くても4つか5つだよ。このゲームはそんなに多く経験値は手に入らない。……きみは何の話をしているんだい?」


 子猫先輩でさえ、驚いた表情をしておりました。


 ……私は、このとき初めて知ったのです。


 私の能力は、『どんな武器でも作れる』という事が強みではなく、『作った武器で戦うと、全ての武器スキルに経験が入る』という仕様が……。


 本当のメリットだったということに。

・武器の使用と経験値

 剣を使えば長剣スキルに、大鎌を使えば鎌スキルに経験値が入り、一定の経験値貯まるとスキルレベルが上がる。逆に使わない武器には一切の経験値が入らない。また、武器は種類によって影響するステータスが変わっており、長剣は筋力、こん棒は耐久、ナイフは速さ、杖は魔力、本は知力、感覚は弓矢、の様にそれぞれであり、武器を使うことによりステータスも徐々に上がっていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 特に恨みはないけど、ちょうどいいところに的(浮気者)がやってきたw [気になる点] ああポロラちゃんが後入りのわりに強いのは、このバグみたいなプレゼントの仕様で高効率で修行できてるからかー…
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