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狐さんの修行旅!~その力、果てるまで~

 修行を初めて数時間……。


 オークさんと金髪ちゃんは初めて出会った時とは比べ物にならないほどにレベルを上げていたようで、素晴らしいコンビネーションを見せてくれました。


 私が単槍を手に金髪ちゃんへと強襲を仕掛けると、彼女を庇うようにオークさんが立ちふさがります。


「ぐぅ……おおおおおおぉ!!」


 単槍を受け止めつつ、彼は両手に持った手斧を振り下ろしました。


 私はその攻撃に対し黒籠手を盾の形に変型させ立ち向かいます。……武器はダメと書いてありましたけど、防具を使っちゃいけないなんて書いてませんでしたからね。


 攻撃を弾くと、オークさんの体勢が崩れました。


 しかし、それをフォローするかの様に、金髪ちゃんが剣を手にして、横から私に切りかかってきます。


「隙アリっ、ですよ!」


 いえ、無いんですよね。これが。


 私は尻尾をふるって彼女の足を払いました。もふもふは武器にもなるのです。


 体勢を崩した金髪ちゃんにも、容赦無く単槍で攻撃を加えました。えりゃえりゃえりゃ~。


「あわわわわわわわ!? シードン助けて!?」


 ちなみに、攻撃してもダメージが入らない特殊な武器ですので、金髪ちゃんには傷一つありません。


 しかしながら、なんとも言えない不快感が攻撃された場所に広がるので、悲鳴が漏れてしまってもしょうがないですし、助けを求めるのも普通です。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 獣の如き叫びを上げて、オークさんが私の頭目掛けて手斧を投げました。……悪くないですが、直線的ですね。


 私は余裕を持って盾でその攻撃を弾きます。


「がぁあああああああああ!」


 その瞬間。


 オークさんは私との距離を一気に詰めてきました。


 その体は先程弾き飛ばした時よりも数倍大きくなっているように見えました……いえ、実際に巨大化しています。


 まるで太い木の幹の様な腕で叩き潰すように斧を振り下ろしたのです。……これでは斧で攻撃しているというよりも、普通に殴っているのと変わりませんね。


 まともに受け止めると痛い目見そうです。


 私は地面を蹴って真横に飛びました。続けて空を蹴ってオークさんの上に飛び上がります。


「ブモゥ!?」


 人語を忘れたオークさんさんが驚きの声を上げました。……『憤怒』のギフトですか。


 能力は増加と倍増。


 デメリットは正気を失ったようになるということですが、使いなれるとそれも些細な物になるのだとか。


 自然回復も早くなるという話なので、オークさんにはピッタリのギフトです。私の動きに付いてこれないのは……問題ですけどね!


 私は単槍を構え、オークさんの眉間に突き出しました。


 槍が突き刺さることはありませんでしたが、脳天に不快感が広がったのか、彼が大きく身震いして動きを止めてしまいます。


 ……さて、コンビネーションが取れているのは素晴らしいですが、まだ動きが悪いですね。


 先輩として、ちゃんと指導して差し上げましょう……。



 足腰立てなくなるまで、イジメてあげますよぉ!!




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 つ、疲れた……。


「も、もう無理です……。ポロラさん、見逃してください~……」


 私の視界の端には『疲労』の文字が浮かんでおりました。金髪ちゃんは『過労』状態になっているみたいで床に伏しております。プルプルしております。


 対してオークさんは……。


「ブモモ。ブモモモ? ブモモ……」


 ピンピンしております。巨大化した身体で疲れている私達を心配したように見下ろしています。……人語が出てませんよ?


「モ!? ……あ、あー。大丈夫ですか? これ以上訓練を続けるのは厳しいのと思うのですが?」


 ギフトを解除して、元のサイズに戻すと、オークさんが人語を取り戻しました。


 オークさんの能力を忘れてましたよ。


 自己再生能力が高いということは、スタミナの回復も早いということ。つまり疲れづらいということですね。


 疲労が貯まらないとか、いい能力しているじゃないですか……。今日はこのくらいにしておきましょう。他の組も疲れが来ている見たいですし……。


 私はチラリと他の方々を見ます。


 ワッペさんは最早死に体です。地面に倒れ付して、止まるんじゃねぇぞ的なポーズで倒れていました。なにしてんだか。


 シバルさんは、師匠とヒビキさんの方に混ざって修行を続けている見たいですけど、全員動きが遅いですね。疲れていることは明白です。


 ……師匠達は置いておいて、早めに戻りますか。お二人はマッサージに行くと良いですよ。一気に疲れがとれますから。


 私はワッペさんを連れていきますよ。あそこに放置していると他の方の迷惑になりますので。


「わかりました。それでは自分はシーラを連れていきます。……シーラ、悪いが少し我慢してくれ」


 そう言いながら、オークさんは軽々と金髪ちゃんをひょいっとお姫様抱っこしました。あらイケメン。


「ちょ!? そいうのは私にするんじゃなくて……いや、して欲しくない訳じゃないんだけど……」


 あら青春。


 顔を真っ赤にしている彼女の想いを知らないまま、オークさんはこちらにペコリ頭を下げて去って行きました。……じゃ、私も邪魔物を起こしますか。


 おーい、ワッペさん。


 疲れをとりに行きますよ? こんな所で寝てちゃ駄目ですから、ほら立って。


 私がフラフラしながら倒れているウジ虫に近付くと、彼は消え入りそうな声で返事をしました。


「むり……。一回殺してくれ……」


 どうやら一度死んで疲労度をリセットしたいみたいです。


 この人の能力無駄に便利なんですよね。死んでも即時復活とか死亡のデメリット回避とか。

 全く、そういうとこは妬ましく思えちゃうんですよね。ですので、殺すことにはなんの戸惑いもありません。


 ということで、私は黒籠手を剣に変えてワッペさんの首に振り下ろしました。ザックンコー。


 首を切断すると、ワッペさんは一度ミンチになって飛び散ります。その後、五体満足なワッペさんが現れて背伸びをする様子を見せられました。


「いやー、助かったぜ。あの状態じゃ満足に動けねーからなぁ。それにあの二人もどっか行っちまうし、都合がいいぜ」


 は? 何言ってるんです? わかるように話してくださいよ。私の後輩達がいたら何か都合が悪いことがあるというのですか?


「そんなこと言うなって。決まってんだろ? こんなに人が多いかの原因究明だよ。特に、ソールドアウトがこんなに集まっているのはおかしい。ちょっと調べに行こうぜ?」


 それまだ言ってるんですか?


 私はうんざりした感じにそういいました。


 例え貴方が言った通りに、誰かが悪意を持ってこの場所に皆さんを集めているとしても、その目的はなんなのですか?


 何かをしようとしても、そこには必ず目的があるはずです。それがわかっていないのなら、ただただ予想を並べるだけになってしまいます。


 何が目的なのか、それがわかっていれば貴方の杞憂は問題になるはずです。それがわかっていますか?


「あ? わかるわけないだろうが! けどおかしいだろ! シーデーさんとヒビキさんが揃っているとか信じられねぇぞ! あの人達、滅多に表舞台に顔出さねぇからな!」


 つまり考える役を私にして欲しいということですか。貴方って人は真面目になったかとおもったらそれですもんね。仕方のない人ですよ。


 自分の予想を確認するために私の時間を使うとは……失礼な方です。まぁ、一応顔は知っていますからね。少しは協力してあげましょう。感謝しなさい。


「おう! するする! ……まずはこのクランに修行に来ているプレイヤーの数を調べる。次はそんな数になった理由を調査する予定だ。俺達二人で、この状況を把握するぞ」


 ハイハイ。


 わかりました、わかりました。


 何もないとは思いますけど、そう言われると面倒臭いですからね。付いていってあげますよ。


 たまには修行の息抜きもしなくては行けませんからね。




 暇潰しに付き合ってあげましょう。




 私はワッペさんと共に、階段を上がっていきました。


 皆さんの疑惑を解消するために……。






 ところで、犯人が見つかったらどうするんです? なんかエゲツナイ刑務所にでも再就職するんですか?


「あん? そこまで考えてなかったわ。どうにでもなるだろ! 楽しく行こうぜ!」


 そう言いながら、ワッペさんは明るく道路を歩いていくのでした……。


 もう不安しかない……。

・『憤怒』

 自分にかかっている装備の効果にもバフかけることができる。街中でむやみやたらに巨大化して一般人に迷惑をかけてはいけない。

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